60.その少女、「かわいい」につき
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「なんのつもりだ?」
俺は声を凄ませて言う。
「……? なんのことですか?」
しかし、グランツェは思い当たる節はないと言うように首を傾げた。
「とぼけるなよ。ケーナちゃんに関わって何が目的だ?」
先程優等クラスの奴らがあんなことを起こしていたんだ。
ハーキン君は関係ないにしても優等クラスがどんなことを考えているかわからない以上迂闊に近寄るのは避けるべきだと考えていたんだが、まさか向こうから接触してくるとは。
「あの……、何か勘違いしていらっしゃるようですが、私はただケーナ嬢とお話させていただきたいだけなのですけど……?」
……え? 本当にこいつ話すだけなの?
……いや、まだ信用するべきではない。
とにかく、今はこいつをどこかに追い払うべきだろう。
「ケーナちゃんは今はいない。同じ女子寮なんだから夜の間にでも部屋に来れば会えるだろうさ。じゃあな」
俺は早口でそう言い切ると、振り返って入口まで猛ダッシュする。
「……あ」
……しようとしたのだが、振り返った瞬間目の前にはケーナちゃんが立っていた。
「サイエンさん遅いです。何してるんですか?」
ケーナちゃんは俺より身長が低いせいか、俺の後ろに立っているグランツェが見えていないようだった。
「いや、ケーナちゃんには関係のないことだよ。ささ、行こうか」
俺は後ろの少女を隠しながらケーナちゃんを入口に行くように促す。
「ケーナ嬢……!」
しかし、後ろの女はそんなこと知らないと顔を出した。
「おい、出てくるんじゃないよ。ややこしくなるだろ」
俺は背中越しに声をかける。
「誰ですか、この人」
しかし、俺の行動など関係ないようにケーナちゃんは俺に冷ややかな視線を送ってくる。
え? 俺何もしとらんやんけ。
こいつが勝手に関わってきたんやぞ、ワイは被害者やろ。
「噂はかねてよりうががっております、ケーナ嬢」
「は、はぁ」
あっ、こいつケーナちゃんに話し始めやがった!
おのれぇ、許さんぞ!
「はい、はい〜。ケーナちゃんは関係ないからねぇ〜。ささ、剣戦祭見ようか」
俺は無理やりケーナちゃんをグランツェから引き剥がす。
「あっ、待ってください……!」
俺を呼び止める声が聞こえるが、無視だ、無視。
「あの人ほっといていいんですか?」
「いいんだよ、触らぬ神に祟りなしって言うだろ?」
俺はケーナちゃんを押しながらそう言う。
少しして、背後からすすり泣くような声が聞こえた。
「私は……、ただケーナ嬢と仲良くなりたかっただけなのに……!」
えぇ……? なんで泣いてるんすかねぇ、この人は……?




