59.剣戦祭会場前にて
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──剣戦祭初日──
俺たちは、しばらく歩いた末に会場にたどり着いた。
「これが剣戦祭の会場です!」
「……でかい」
そりゃぁ確かに世界レベルの闘技祭とは聞いていたが、まさかこれほどのサイズ感とは。
大きさだけで言ったらコロッセオに匹敵するレベルだぞ、これ。
「どうですか、この圧倒的威圧感! これですよ、これ! この中で指折りの精鋭たちが戦うんですよ!」
ケーナちゃんはまるで自分のことのように得意げに言う。
だが確かに会場がこれだけの大きさなのだ、剣戦祭の規模がどれほどのものなのかわかるな、これは。
「ささ、入りましょう! この日のために予約していたチケットが火を噴きますよー!」
そのままハイテンションで会場の入り口に消えていくケーナちゃん。
その姿は一瞬で見えなくなった。
「しっかりした子に見えても、やっぱり子供っぽいところはあるんだな」
安心した。
本当に根がいつものしっかりした感じなら、あの子はいつか壊れてしまう気がする。
ああやってはしゃいで見せているうちはそれほど心配する必要はない気がする。
しかし同時に、それでも親に会えないという辛さはあるのではないか、とも思う。
子供にとって愛情を持って育ててもらえないというのは非行に走る原因になり得る。
そして、その辺りのデリケートな問題も考えつつケアしてあげられるような立場にいるのは、学園にいる間は教師の方々と俺くらいしかいないのでは? と思った。
……今までの俺の行動は軽率すぎたな。
精神が身体年齢に影響されているのか、はたまたただ単に俺が異世界に来て浮かれているだけなのか。
どちらにしても、今後は彼女の心に出来るだけ寄り添って行動するようにしないとな。
「行くか」
入り口前では一度中に入っていたケーナちゃんが出てきて俺に手を振っている。
今のこの生活は十分幸せなんだ。
神様、これ以上面倒ごとは起こしてくれるなよ……?
「あなた、ケーナ嬢の使い魔よね?」
そう思った矢先、俺の後ろから声をかけられる。
いや、フラグ回収早すぎだろ。何秒だよ。
振り返ると、そこには黒髪ロングでつり目の美少女が立っていた。
「ケーナ嬢は今どちらにいらっしゃるのかしら?」
その少女はニヤリとその表情を凶悪に歪め、優雅に会釈して見せた。
「申し遅れました、私はヴァラン国立魔道学園優等クラス所属、グランツェと申します」




