58.事態の収拾
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ハーキン君は少女たちが見えないところまで撤退したことを確認すると、そのまま何事もなかったかのようにハーキン君も踵を返した。
「お、おい! ちょっと待てよ!」
慌てて俺は声をあげて呼び止める。
「……なんだよ」
ハーキン君は不機嫌そうに答える。
「どうして俺たちのことを助けたんだよ? あいつら、多分お前のクラスメートだろ?」
「……、運だったとしても、一度は俺を倒した奴がバカにされるのは苛々するんだ。別に、それ以上の理由なんてない」
俺の質問にバツが悪そうに答える。
それだけ言ったハーキン君は、そのまま歩いて人混みの中に消えてしまった。
何あのイケメン……! 濡れる!
「なんだか、今までのハーキンさんだと考えられないですね」
隣ではケーナちゃんがハーキン君に対する評価を密かに上げた。
「あぁ、確かにな。何か思うことがあったんだろう」
それにしてもツンデレさんめ。素直になればいいのにな。
「それじゃあ、一息ついたところだしそろそろ剣戦祭の会場に向かいますか」
「ええ、そうしましょう!」
さぁ、この世界の猛者たちが集まるらしい祭り。
いったいどの程度のレベルなのか、見せてもらうとするか。
◇◆◇
一般的な二階建ての家、その屋根の上に少女は立っていた。
横には、彼女の使い魔と思しきぬいぐるみのような生き物もふわふわと漂っている。
装いからして優等クラスの少女だろう。
「あれほどいとも簡単に優等クラスの少女たちを追い払うとは」
確かに、あの場所で一般人にたかっていた少年少女たちはカースト上位ではあっても実力は対してあるわけではない。
対するハーキンは優等クラスでも上位クラスの力を有していると言ってもいいだろう。
そして、そのハーキンを一度は降し、噂では北の魔女さえも討伐したと言われるケーナ嬢の使い魔。
その二人に正面切って挑めば無傷で帰ることは私でも難しいだろう。
「ケーナ嬢、興味深いわね。一度彼女に接触してみようかしら」
そして、できることなら彼女と直接……。
少女はそんなことを考えながらそのつり目をさらに釣り上げて不気味に笑う。
「そんな怖い顔してるとダメぴょん?」
「……、いけない、昔からのクセが出てしまったわ」
少女は慌てたようにその表情を和らげる。
「友達になりたいならもっと笑顔で、優しい言い方をしなきゃぴょん」
となりの使い魔が少女に言う。
「……頑張る」
少女はしおらしく返事すると、その場からさっと立ち去りすぐに姿は見えなくなった。




