57.見知った顔
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衝撃に備える。
雷撃は轟音を轟かせながら音速に迫る勢いでこちらへと飛翔する。
うねりながら巨大な雷が近づく様はさながら龍のようであった。
俺はケーナちゃんを守るために、そして男を逃がすために結界を張る。
「『守護結界』」
そして雷が俺の結界にぶつかる直前に、雷は轟音を立てて霧散した。
……結界はまだ残っている。しかし、あの威力で結界が壊れないとは到底思えない。
ケーナちゃんは俺が防いだと思っているようだが、俺は疑問を覚えながら視線で少女たちをけん制した。
「なかなかやるじゃない。でも、所詮は中等の使い魔ってところね」
お互いにけん制し合い場がこう着状態に陥った時、声は俺の背後から聞こえた。
「おい、お前らその辺にしとけよ」
それは、何を隠そうハーキン君だった。
「こいつは仮にも俺を負かした奴だ。侮辱はしてくれるなよ?」
「ハッ、私たちより格下の魔法使いが召喚した使い魔、それに負けた奴が何を言っているのか! ……笑わせないで頂戴」
少女はハーキン君の言葉を一笑に付すと、魔法を発動した。
「『千乃落雷』!」
何もない空間から雷が突如出現し、それは俺とハーキン君に向かって飛翔してきた。
「『守護』────」
思わず俺が防御魔法を張ろうとすると、ハーキン君はそれを止めた。
「『この身に宿りし大地の主よ、魔力を食いて黄金に染まれ』」
以前、俺に発動した大魔法よりも詠唱は短いが、使える魔法が増えていたからわかった。
……この少年が操っている魔力の量は尋常ではない。
ハーキン君の体から飛び出したオーラのようなものは、降り注ぐ雷と停滞している雷雲をまとめて飲み込み金色の光を放つ石のようなものを落として消えた。
「……ハーキンテメェ、上等魔術までしか使えなかっただろ!?」
声が聞こえ少女たちの方に顔を向けると、そこには先程まで勝気だった少女たちの引きつった表情があった。
ハーキン君は少女たちを一瞥すると、不機嫌そうに言う。
「この短期間で特等魔法まで習得したんだ。これ以上うちの学園の名前で恥を晒すと言うなら、容赦はしないぞ」
「……っ! か、帰るわよ!」
彼女たちは若干強がりながらそう言ってその場を後にする。
その後ろ姿を見送りながら、俺は呟く。
「帰った、な……」
隣では、ケーナちゃんがホッとしたようにため息をついた。




