54.剣戦祭
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北の魔女騒動も終わり、俺はやっと純粋にこの街の観光を楽しむことができそうだ。
ということで、街を歩きながらケーナちゃんと散策することにした。
「それで、中継地点が火災になったって話だったけど、ここにはあとどれくらい滞在する予定なんだ?」
俺は隣を歩くケーナちゃんに尋ねる。
「そうですね……。あと四日くらいだったと思います」
すると、すぐさま返事が返ってきた。
それにしても、あと五日かぁ……。
先生たちは一体伸びた三日分をどうやって穴埋めするつもりなんだ?
そうやって一人物思いにふけっていたせいで、正面から近づく男と一瞬ぶつかりそうになってしまった。
「あっ、すいません」
慌てて躱し頭を下げると、男は若干にらみつつも人混みの中へと消えていった。
「それにしても、今日は一段と人が多い気がするんだが、何かあるのか?」
実は、ぶつかりそうになったのは今ので初めてじゃない。
ここ二日間と比べて街の様子はより活気付いたような気がするし、気のせいかお店の客引きもかなり活発な気がする。
「実はですね、今日から街の中心にある闘技場で剣戦祭という大イベントが始まるんですよ」
剣戦祭……。
なるほど、だからこれほどまでに人が集まっているわけだな。
「闘技場の周辺では出店が出たり、小さなパレードのようなものをやったり等、国としてもこれを一大イベントとして売り出しているみたいですね」
「そうなんだな。それで、剣戦祭っていうのはどんな祭なんだ?」
やる場所と名前だけだと、ローマのコロッセオみたいな感じか?
「えっとですね、剣戦祭というのは世界中から集まった剣に自信のある人たちが運営から出される課題をこなし、予選を突破した人だけがこの剣戦祭の舞台に立てるという偉大なお祭りなんですよ! 多くの戦士たちがこの舞台に立つことを夢見て日々剣の腕を磨くくらいには有名で、ここで優勝すれば一家三代にわたっての地位は確約され、その名は世界に轟くんです! 特に一昨年の剣戦祭で優勝したヴァッファエル・ドラゴ卿は剣戦祭史上に名を残すほどの大勝を次々と納めてですね、その剣の捌きはまるで剣聖の名画から抜け出して来た勇者そのものなのではないかと揶揄されるほども美しさで観客を沸かせ────」
あ、俺は放っておくとずっと喋り続けるやつじゃないか?
一旦ヒートアップした思考を止めないと、オタク的になんかやばい気がする……!
「オッケーケーナちゃん、ストップ。剣戦祭についてはわかったから、この後のことについて話そうじゃないか」
俺がそういうとケーナちゃんは頬を染め、慌てたように手で顔を隠した。
「そ、そうですね……! 私、つい熱くなってしまいました……!」
にしても、ケーナちゃんがそこまで熱中するほどのイベントだとは。
これは、少し気になるな。
私、気になります!
「それでは、今回誘った目的でもある闘技場へ向かいませんか?」
「りょーかい」
それじゃあ、このまま街の中心部に向かいますか。




