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52.もう一つの主従

1


 深夜の街を疾走する。

 今の私には影属性の結界系魔法をまとっているので、どれほど高速で移動していようとも誰の視界にも映らない。


「申し訳ない……、私の見当違いがこんなことを引き起こすなんてな……」


 私の耳元で主がささやく。


「滅相もございません、我が主。私ももう少しあの場でカバーできていれば……」


 あまり手出しはするなと主人から注意されていたとはいえ、ここまでの手傷を負うことは想定していなかった。

 主はあの少年を何としても力ずくで手に入れたいようだが、次私が見つけた時にはすぐさま殺してしまおう。

 しばらく走り、この街に滞在するうえで活動拠点としていた宿泊施設に到着した。

 二階の窓から自室へと飛び込み、すぐさまベッドへと寝かせて応急処置を施そうとする。


「少し痛むかもしれません」


 ジャケットの胸の部分をはだけさせ、大きく穿たれたあばらの部分に回復魔術を施す。


「『骨子接合ボーンボンド』、『肉体再生リジェネル』」


 傷口は徐々に塞がっていくが、骨折した部分はまだ安定してはいない。

 これはしばらく安静にしてもらうしかないだろう。


「激しく動くと傷口が開きます。今は魔力で繋げただけなので、自分の肉で定着するまでは安静にしていて下さい」

「助……、かる」

「気にしないでください。私のことより今は眠るほうが大切です」


 その言葉に返事はなかったが、呼吸音が聞こえることから休むことにしたのだろう。

 一人。

 部屋の外に人間の気配を感じた。

 私は、我が主を起こさないように部屋の外にいる男に声をかけた。


「どなたですか、こんな遅くに」


 時刻は深夜を回ったころだろうか。

 こんな安宿で、外と関わらないようにしている客に話しかけようとする人間はろくな奴じゃない。

 話しかけるのは危険だとわかってはいるが、万が一のために声をかける。


「なるほど、あれだけの気配でも君は気づいてしまうのか」


 しかし、扉の裏側から感じた気配は、一瞬にして私の背後へと回っていた。

 警戒のレベルを一気に最高まで上げる。

 こいつの目的を探れ。

 こいつは何がしたくて俺に接触してきた?


「何が目的ですか?」


 まずは聞く。

 これで簡単に答えてくれるとは思っていないが。

 しかし、男は予想に反して実にあっさりと口を割った。


「いや、警戒させて申し訳ないね。別に取って食おうってわけじゃないんだ。ただ、君の主人に少しだけ用があってね」


 その一言に、私は更に不信感を募らせた。


「よい、私が話そう」


 しかし、傷だらけの体をゆっくりと起こし、私を押しのけて主は男と私の間に立った。


「要件を聞こうじゃないか」

「何、たいして難しいことじゃないんだ。実は僕が教祖をやっている宗教が新しい研究者を探していてね。君は頭が切れるし、僕の教団に入会してもらいたいんだが、どうかな?」


 男は静かに語り聞かせてくる。

 一見すると、その要求はこちらにデメリットばかりで、入団する利点を感じられないが、目の前の男性は有無を言わさず我が主を入団させようという殺気の様な、圧のようなものを放っていた。

 ……この状況で戦闘になれば、確実にこちらが負ける。

 ここは時間稼ぎにしかならないとわかっていながら、話を引き延ばすことにした。


「その教団とは……?」


 努めて冷静に私は男に質問した。

 それに対し男は、ただ一言こう言った。


「『数の教団』」


 そして、付け加えるようにもう一度口を開く。


「申し遅れた。僕はハヤト・クレセント。転生者であり、数の教団の教祖であり、覇王へと至る器を求めるものだ」

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