49.隠された真実
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「魅了の影響下で無駄な足掻きを……ッ! 『傀儡操作』ッ!」
マリーさんが俺に向かって魔法をかける。
俺の体に魔法陣が浮かび上がり、直後、なにも起きなかった。
「俺を操ろうとしたのか? だったら無駄だ。魅了はもう残ってない」
「はッ……? 何故だ。そう簡単に解呪できるほど単純な魔法じゃないんだぞ!?」
怒鳴るマリーさんに、俺は言う。
「確かに、俺一人では解呪はできなかった。だけどな、協力者がいたらどうだ?」
そう、魅了は今日の昼の時点で、協力者によって解呪していた。
◇◆◇
──数刻前──
「ちょっと論文が行き詰まっちゃってるんだ。少しだけ話し相手になってくれないかな?」
「……わかりました」
俺としては大して難しい問題でもなかったため、少しだけここに居座ることにした。
「君は今、何か良くない大病にかかっているだろう?」
「どうしてそれを?」
「見ればわかるのさ。魔術的に何か呪いのようなものを受けた人間は見るだけでわかる。君のその呪い、まず解いてあげよう」
男性は一言二言呟くと、魔法陣が俺を包み込んだ。
数秒そのままで待っていると、胸の中心あたりから百足のようなものが這い出てきて空気中に霧散した。
「……魅了系の精神干渉魔法か。これは解呪したとバレるのは不味そうだね。偽装魔法を施しておくよ。……ただ、偽装魔術とは言ってもこれも精神干渉系の魔法だ。意識が魔法側に引っ張られるかもしれないことを知っておいてくれ」
「ありがとうございます。……それにしても、どうしてそんなに医療系の魔法を扱えるんですか?」
「聞きたいかい? ……それを教えるのにはまず一つ質問しなくてはならない。君は、転生者という人間を知っているかい?」
◇◆◇
「ッ、貴様ァ……!」
事の顛末を知ったマリーさんは激昂した。
「許さん、許さん許さん許さん! 簡単に帰れるとは思うなよ!! 『業火蛇鬼』!」
俺に向かって、炎の縄が飛来する。
「『守護結界』!」
盾を生成し、その炎を防ぐ。
しかし、盾に激突して分裂した炎は俺の後ろで合流し、再び俺へと飛んできた。
「ッ……! 『液体凍結』!!」
とっさに俺は全身の血液を凍らせる。
直後、俺の体を炎が包み、身体中に火傷を作る。
数秒身を焼かれ炎の檻から生還した俺は、生きてはいるものの全身は火傷や水ぶくれだらけ、体内は血管の損傷が激しいなど、簡単に勝てるような状況ではなくなってしまった。
全身の血液が沸騰しなかったのが不幸中の幸いか。
「……私も無駄な魔力は使いたくないのよ。今ならその怪我だけで謀反は許してあげましょう」
マリーが言う。
ったく、なんでこんなに強いんだ、魔女様ってのは。
喧嘩ふっかけたのは間違いだったか?
だが、簡単に町を焼ける精神や、何よりケーナちゃんを殺せと言ったのが気にくわない。
「液体凍結』!」
俺は抵抗の意思表示に噴水の水をかけ、飛翔する全てに凍結魔法をかける事で氷のつぶてとする。
「馬鹿ね、甘いのよ!! 『業火必死』!!」
しかし、俺の放った氷は高火力、高範囲の炎魔法によって全て蒸発させられてしまった。
「従う意思がないないらもう、その体は力づくで奪わせてもらうわ、よッ!」
マリーさんが無詠唱で魔法を発動し始める。
その背後には十門ほどの魔法陣が。
そして、一秒ごとにその数が増えていっている。
危険だ、そう察した。本能が警鐘を鳴らしている。
すぐにここから離れたほうがいいのは間違いない。
数瞬前まで野次馬をしていた市民たちでさえ、我先にと広場から離れていっている。
……だがサイエン、お前はまだ秘策をだしてないだろう?
こういう時が来たときのために、ずっと温め続けていた秘策が。
「『秩序逆転』、『液体凍結』!」
俺は先程と同じように水しぶきを氷に変える。
そして、それはマリーさんを貫くつぶてとなる。
「煩わしい!!」
無詠唱のまま、横薙ぎにするようにつぶてが炎に飲み込まれる。
そして、つぶてはマリーさんを貫いた。




