43.ならず者からの情報
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俺は、殴られる前に先制攻撃をと魔法を放った。
「『液体凍結』」
部位は腕、魔法をかけたのは血液。
膀胱に放って機能不全に陥らせてもよかったんだが、無闇に殺生するのも良くない気がするし、こいつが今後俺に有益なものをもたらさないとも限らないしな。
「テメぇ! 卑怯だぞ!?」
男が吠える。
「何を。力ずくで奪えと言ったのはお前だろ?」
「ッチ! 調子に乗るんじゃあ、ねぇ!」
俺の言葉に男は舌打ちすると、テーブルに立てかけてあった巨大な戦斧を持ち上げ、こちらに振りかぶって来た。
「『守護結界』」
正面に大盾を形成する。
今回は機能性より防御力を重視して結界を構成したはずなんだが、その戦斧は質量と速さが相まって莫大なエネルギーを生み出した。
そして、それは俺の十センチは厚みがあろうかという結界をいともたやすく魔力へと変えてしまった。
「アホみたいなパワーじゃねぇか……。こいつぁどうやって倒せばいいんだ?」
俺は思考する。
そして、ある一本の道を得そうになった時、チャームによってそれは霧散した。
「クソッ! ほんとにめんどくせぇな、これッ!」
仕方なく、俺は防御しながら酒場の外へと向かう。
「おいおい、逃げんのかァ? あれほど調子に乗りやがって、ただで帰れると思うなよ?」
いつの間にか男の周辺には仲間と思しき人物たちが集まり始めていた。
何とかその複数人の攻撃を防ぎながら酒場の外に出れたのはいいものの、筋肉もりもりマッチョマンの仲間はマッチョ合わせて五人、そしてその後ろに野次馬が三十人程度。
こいつは、圧倒的に人数不利だな……。しかし逃げ切れる可能性は低いだろう。
そしてそのメンバーは魔術師が二人、バーサーカー、タンク、そして最後にシーフ。
確かにならず者ではあるが、そのパーティ構成はなるほどかなりバランスがいいだろう。
このパーティで多くの強い敵を倒してきたのだと伺うことが容易にできる。
「おらよッ!」
マッチョが戦斧を叩き付けてくる。
それを守護結界で防ぐが、衝撃は俺を数メートル後方まで飛ばした。
「なんて異常な握力なんだよ……!!」
俺が吹っ飛んでいる間も俺への攻撃の手は止まらない。
シーフによる追撃が俺の脇腹をかすめ、血が飛び散った。
幸い致命傷にはなってなさそうだが、ちくりとする痛みは俺の行動を阻害するだろう。
……何とか俺の戦いやすい場所に引き込めればいいんだが。
視界の先には面積の広い噴水が見える。
どうにかしてあそこに引き込めれば勝機が見えそうだな。
俺は逃げる方向の軌道を修正して、そこにこのメンバーを集めるように誘導することにした。




