34.滞在地
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「入都の目的は?」
「修学旅行です」
「滞在予定期間は?」
マドル先生と兵士風の男性が検問所の様なところで地球でいう入国審査みたいなことをやっている。
やっぱりどの時代、どの場所でも自分の自治体の内側に危険因子を持ち込みたくないのは変わらないんだな。この調子だと都内には警官らしい人たちもいそうだ。
「わかりました。……この馬車を通せ!」
数分間停車していた馬車が、兵士風の掛け声によって走り出す。
門をくぐってからしばらくは民家や畑が並んでいたが、奥に進むにつれて徐々に街並みが活気づいていく。
交通量も十秒に一台は馬車とすれ違うくらいに多くなった。
魔道学院の城下町は赤レンガ造りの一軒家がずらっと並んだよく見るファンタジーの街並みって感じだったが、ここは打って変わって並ぶ建物が軒並み硝子を利用している。
こういう時代の場合高いはずの硝子。それを窓全面を覆う程使用したブティックは、なるほど高級そうで如何にもな雰囲気を漂わせている。おそらく儲かっているのだろう。
だが、凄いのはそこじゃない。
儲かっている店がガラスを利用していても何ら不思議はないが、民家でガラスが使われているというのは、少し疑問を感じる。
なぜこの国の首都だけはこれほどまでに生活水準が高いのか。
これはここに滞在している間に解明したい謎だな。
そうやって考えているうちにも景色はどんどん変わっていく。
今まで走っていたのはどちらかというと商店通りの様な場所だったが、現在走っているのは大きく広い通りで、その付近には巨大な施設が多く構えている。
恐らく、ここの施設の中にはファンタジーでよく聞くようなギルドみたいな施設があるのだろう。
「それでは皆さん、もう間もなく宿泊施設の前に到着いたします。荷物をまとめ、すぐにおりられる準備をしていてくださいね」
走り続ける車内でマドル先生が案内し、その合図に生徒たちが水筒などを各々の鞄に詰め始める。
「そろそろヴェルグの生活が始まるんですね……」
ケーナちゃんが楽しそうに、しかし若干不安もこもった声で呟く。
あぁ、確かに、小学生とかのころは近所から少し離れた場所へ行くのも不安だったな。
俺はいつから一人で遠出できるようになったのだろうか。考えてみるとなかなか思い出せないもんなんだな、こういうのって。
「到着です」
マドル先生がそう言うと、馬車が緩やかに停車する。
一人一人がゆっくりと馬車を降りていき、最後に俺とケーナちゃんが降車した。
そして、降りた先で目にしたのは、横にとてつもなく長い二階建ての洋館の様な場所だった。




