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33.沈痛な空気の中で

1


 馬車の中には、重い雰囲気が漂っていた。

 とても談笑できるような状況じゃない。


「あの女の子、なんであんな状況だったんでしょうね……?」


 ケーナちゃんがゆっくりと口を開く。

 確かにそうなんだよな。

 見たところ全身にやけどの跡があり、木片も刺さっていたりした。

 しかし、奇妙なことにその少女が倒れていた周辺は燃えた痕跡すらなかった。

 恐らく、どこか別の場所で襲われてからあの道まで逃げてきて倒れた、ということなんだとは思うが、そうするとこの修学旅行自体が危険な気がする。

 何故なら、この近辺にはあの少女を襲った人間ないし魔物がいる可能性が高いということだからだ。

 そこで、昨日の昼にハーキンから聞いたことを思い出す。


「そういえば、ケーナちゃんは北の魔女について何か知ってることはあるか?」

「北の魔女ですか……。伝承ならいくつか聞いたことがあります」

「ほう、ちょっと教えてくれないか?」


 何か、この一件には北の魔女が関わっている気がするんだ。

 もしかかわっているなら、先に手掛かりを得ておきたい。


「はい。まず、北の魔女というのは四十年ほど前に姿を現したエルフの女性だといわれています」


 エルフか。獣人がいるからもしかしたらとは思ったが、まさか本当にいるとはな。


「その女性は火属性に適性のある魔導士だったらしいですが、水属性の魔法も卓越した腕だったと聞きます」


 なるほど、二属性をメインに操る魔導士か。

 こいつは厄介な相手になりそうだな。


「わかった。それで、その魔女に性格的な特徴は何かないか?」

「そうですね……。聞いた話だと知的好奇心が異常に高く、自分の気になったことに関しては骨までしゃぶる勢いで情報を吸い尽くすらしいです」


 知的好奇心が高い、ねぇ……。

 これはエサに使えるかもしれないな。


「ありがとう。助かったよ」

「いえいえ。でもなぜ北の魔女の話を?」

「いや、少し気になってね」


 ここで下手に北の魔女の封印が解かれたといって混乱させたりしても厄介なだけだ。

 何か事件が起きるまでは隠しておこう。


「……お、あれは?」


 ふと視線を正面に向けると、窓の外には徐々に大きくなっていく城の姿が映った。


「あれです、あれが今回の修学旅行先、『ヴェルグ魔道都市』ですよ!」


 ケーナちゃんの声で、馬車内の雰囲気が少し変わった。

 徐々に談笑する声が聞こえ始めてくる。

 とうとう始まるのか、修学旅行が。

 何も問題が起きないのが最善なんだけど、な。

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