10.初等の魔法書と異界の魔法書
1
特に何事もなく女子寮の帰路に着いた俺とケーナちゃんは、普段から一緒にいるせいか世間話の話題もすぐに底をつき、自然と話題は先ほどの魔法書の話へと変わった。
「それにしても、あんな不可解な本をよく即断即決で購入したね。なんで?」
俺からしてみれば、自分が召喚した使い魔が突然見たことも聞いたこともない文字で書かれた本を読んでいたら、多少なりとも警戒はする。
とはいえケーナちゃんは見た目では中学生程なので、危機管理能力がないのかもしれないな。
……まあ、ただ天然ってだけの可能性もあるけど。
「いえ、特にこれといった理由はないんですが……。強いて言うんでしたら、私の部屋にある魔法書やお伽話にも、あれほどの熱意を向けて読んでいる姿勢は見たことなかったので、それほど面白いのかそれほど重要なことが書かれているのかと思いまして」
うわぁ……、俺、ケーナちゃんから借りた本そんなつまんなそうに読んでたのかぁ……。
まあ、話の内容はシンデレラに近く、展開もありがちだったけどさぁ?
つまんなかったと言うわけではないんだよ?
いや、決して。
「おい、お前、中等のケーナか」
俺がケーナちゃんに対して、申し訳なさと言うか、罪悪感のようなものに苛まれていると突然、ケーナちゃんと同い年くらいの少年三人組がケーナちゃんに対して啖呵を切ってきた。
えぇ……。
ここ、仮にも商店街やぞ?
怖いなぁ。
「えっと……、たしかにそうですけど、どちら様ですか……?」
どうやらケーナちゃんも相手の顔は知らなかったようで、困惑した表情を浮かべている。
「そこの後ろにいる奴、アンタの使い魔だろ。人間を使い魔にするってぇのは史実通りに言うならば、誰もが強大な力を持っている。見たところたいしたことなさそうだが、人間の使い魔を呼び出すのは優等の特権なんだ。時間をやる、一週間以内にその使い魔との契約を切れ」
こいつ、突然現れたと思ったら好き勝手言いやがって。
ここは大人として、ガツンといってやるべきだろう。
だが俺はこいつらより、年上。
まずはじめに諭すように話しかけ、そして何をしたか振り返らせてから、最後に罪を認めさせる。
知的な大人はこうでなくっちゃね。
「ちょっと君たち、初対面なのに挨拶もなしにいきなり物騒なことを言うのは良くないよ。まず名前を言ってから、どうしてそんなこと言うのか教えてくれないかな?」
……決まった。
これでこそ完璧で知的な大人って奴だよな。
「あのー、サイエンさん?」
「ん?」
ちょっとー、いくらケーナちゃんでも知的な大人像を崩すのは許さないよ?
「さっきの人たち帰っちゃいましたよ?」
「……は?」
え?
じゃあ俺一人で喋ってただけ?
やだー、はずかち。……おい恥的とか言うな。
……いや、じゃなくって。
「あの子達、知り合い?」
「いや、今日初めて会いましたけど」
「にしては俺と契約を切れとか物騒なこと言ってなかった?」
「……」
俺は率直な疑問を声に出してしまったが、それに対する返事はすぐに帰ってこなかった。
「この話をしないと、彼らがあんなことを言ってた理由がわからないと思います。ただ、あまり人目につくところは好ましくないので、私のお部屋で」
うーん、なにやらこの異世界転生、不穏な空気が漂い始めてきたな。
お久しぶりです(n回目)




