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異世界チートを期待したはずが【世界崩壊前】  作者: 中一モクハ
第2章(後半):ヨルド公国
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SS1-7話:一難去ってまた一難

「はい、いっちょ上がり! 次は―――」


 目の前の鮫型の魔物『シャークダーツ』(危険度Cランク)を、俺の神具―――(ハンマー)で粉砕する。

 俺は今海竜(リバイアサン)の足元で、一人最前線で数百の魔物達と戦い続けていた。


「この鮫、上手そうだな……後で、食べられないか試してみよう」

『―――そんなこと言うとる場合か!』


 トーマスの通信魔法を通して、クリスからのツッコミの声が聞こえる。

 こんな冗談も、前回一人で戦った時には考えられないことだった。

 これもセリス達の後方支援のおかげだった。


 〝千里眼“で全体の戦況を把握し、的確な指示をセリスが下す。

 クリスはその情報を整理して、各船の艦長に伝える。

 艦長はその指示に従い、魔物達へと攻撃するのだ。

 トーマスそしてグランディール王国の人達は、各船と通信がとれるよう通信魔法の継続を行っている。


 完璧な布陣だった。

 そのおかげで、俺も休憩しつつ安全に戦うことができたのだ。


(本当、大した奴らだよ)


 そんなことを思いつつ、暫く前線で戦い続けていると、突如、海竜(リバイアサン)が雄叫びを上げた。


「――――っ、うるせぇえええ!」


 鼓膜が引き裂かれんばかりに叫ぶ海竜(リバイアサン)に思わず怒鳴り返してしまう。

 うるさい騒音がようやく終わったら、今度は海竜(リバイアサン)がグネグネと動き出した。

 その動きがとても珍妙に見えたので、


「―――背中、かゆいのか? アイツ!?」

『そんなわけないだろう!』


 再びクリスのツッコミが炸裂する。


(うむ。クリスも良い仕事をするようになった)


 そんな軽口を言いつつも、身体は決して休まない。

 絶えず襲い掛かる魔物どもを潰していく。

 砕いていく。

 吹き飛ばしていく。


 俺が休めば後ろにいる皆に大きな負担がかかる。

 それだけは絶対に避けなければいけない。


 ふと、上空を見上げた。

 そこには、巨大な海竜(リバイアサン)の姿が見える。


 今頃、(ココ)達はあんな高い場所を上りながら魔物達と戦っているのだろうか。

 空高く聳える海竜(リバイアサン)の巨体を見ると、(ココ)達のことをつい心配してしまう。


(まあ、今は自分にできることをやらないとな!)


 再び前方に目線を戻し、軒並み現れる有象無象の魔物達を俺は次々と駆逐していく。



 暫くして、

 再び海竜(リバイアサン)の咆哮が周囲に響いた。

 先ほどに比べ、今度はかなりの大きさだった。

 同時に、


『ユウジ! 気をつけろ。海竜(リバイアサン)の様子がおかしい』

「んなこと、見ればわかる! やっぱり、背中痒いのか、アイツ!?」

『それはもう聞いた! そうじゃなくて―――えっ、ユウジ! 海竜(リバイアサン)が怒りで我を忘れているらしい―――〝暴走“しているみたいだ』

「はぁあああ、なんじゃそりゃ!?」


 暴走と言われても何のことか俺にはさっぱりわからん。

 ……クリスめ。俺が異世界から来た事忘れてないか!


「全くわからん。〝暴走“ってなんだ? 危ないのか?」

『はい。魔力を持つ者に起こる現象です。激しい感情の起伏に応じて、自身が持つマナが活性化し、制御しきれない力を生み出すのです。このままでは、海竜(リバイアサン)は自身のマナを制御しきれず爆発する恐れがあります。そうなると、どれだけの被害になるか皆目見当がつきません!』


 クリスに代わってセリスが〝暴走“について説明してくれた。


「なるほど。じゃあ、〝暴走“を止めるためにはどうしたらいい?」

『―――まずは命を奪うというのが一番確実ですが、あの海竜(リバイアサン)となると……』

「無理だな。次」

『―――海竜(リバイアサン)の核となっている魔石。そこに必要以上に溜まっている魔力をどうにか抜け出せば、あるいは―――』

「他の案は?」

『―――後は、〝暴走“に備えて、海竜(リバイアサン)の周囲を土魔法で取り囲み、あとは風魔法の術者に風属性のシールドを作る手も―――』

「それだと、かなりの時間が要するな。間に合うか?」

『―――無理ですね。ヨルド公国に連絡し、ユリウス様に術者を準備するというだけでもかなりの時間が必要になります。さらに、この場所まで来るとなると……』

「わかった。じゃあ、アイツの魔石から魔力を抜く案でいこう」


 方針は決まった。

 後の細かいところは、セリス達が考えてくれる。


『かしこま―――た、大変です。ココロ様達を乗せたスターシップが海の魔物の襲撃を受けて危険な状況です!』

「―――! 場所はどこだ」

『そこから、北西方向。海竜(リバイアサン)の左側面です!』

「わかった―――ありがとう」

『ご武運を』


 セリスの通信が途切れ、俺は志達がいるほうに足場を作りながら向かった。


 巨大イカやタコに追われていたスターシップを助けた俺は、一度海上の防衛線に志達と一緒に戻った。


 …………

 ……

 …


 グランディール王国巨大船の指令室。


 そこに、剛田(ゴウダ) (ココロ)波多野(ハタノ) 美憂(ミユ)、トッティ、セリス、クリスの姿があった。

 俺達はそこで志達から海竜(リバイアサン)の背中で起きた出来事を説明してもらった。


「―――なるほど、あのクソ野郎! よりによって、オーラル王国なんて危険な国に協力しているのか」


 (ハラ) 貴士(タカシ)

 何かにつけて生徒に嫌みしか言わず、責任逃れの上手いアイツは誰からも嫌われていた。

 最低な大人だと思っていたが、そこまで落ちたかと、心の底からアイツを軽蔑した。


「ごめん。僕が何もできなかったから……」

「志くんのせいじゃありません」


 先ほどから葬式会場にいるかのように暗い表情の(ココ)と波多野。

 その暗い雰囲気に誰も志達に話しかけることができなかった。


 指令室に来る前に、戸成とミーアって子共が氷漬けになっている姿を見た。

 あの明るくいつも毅然としていた戸成があんなに静かにしている姿を俺は初めて見た。


 (ココ)が戸成に好意を抱いているのは前から何となくわかっていたが、まさかこんな形で会うことになるなんて。

 志になんて言葉をかけて良いのか分からなかった。


 二人の氷を溶かすため、セリスを中心にグランディール王国の総戦力で戸成達の解呪を行ったが結果は芳しくなかった。魔法を受け付けない氷を前に、なす術もなかったのだ。

 そのことが(ココ)と波多野をさらに落ち込ませた。


 そんな雰囲気の中、俺は戸成とミーアという少女が氷漬けになっている姿を見た時からずっと思っていたことを二人に伝えた。


「なあ、(ココ)。お前の炎の神具で、あの氷溶かせねえのか? 同じ神具なんだから大丈夫だろ!?」

「「「……」」」

「あれ? おかしいこと言ったか、俺?」

「「「それだぁあああ!!!」」」


 途端、船内が揺れた。


「さすがだよ、雄二! やっぱり最高だよ。お前は」

「酒井くん。頭が良いです! そうですよね。何で気づかなかったんだろう!?」


 (ココ)と波多野が、涙を浮かべ俺に称賛の声を送る。

 ……というか、気づけよ。それくらい。


 水の神具で凍ったのなら、火の神具で溶かせばいい。

 ただそれだけのことなのだが。


 一応、念には念を入れて二人が接していない部分の氷に向かって、(ココ)の神具の炎を少し当ててみた。すると、ポタポタと氷が溶けていったのだ。


 その光景を見て、目元に涙を浮かべ波多野と一緒に喜びの声を上げる(ココ)

 ……にしも、随分仲良くなったんだな、波多野と。恥ずかしがり屋のイメージがあったけど、波多野のあんな顔初めて見たな。まあ、それを言うなら、(ココ)も同じか。


「じゃあ、早速―――」

「……待ってください!」


 志が今度こそ戸成達の氷を溶かそうとしたときだった。

 セリスから突然、待ったの声が入った。


「……先に海竜(リバイアサン)の〝暴走“を止めてからにしましょう」

「な、なに―――」

「セリス。理由は?」


 急な待ったが入り、志がセリスに何か言おうとしていたのを遮る。

 こいつが、そう言い切った以上、必ず理由があると分かっているからだ。


「今、ミーア様が開放されれば、海竜(リバイアサン)の〝暴走“する意識と同調し、彼女が危険に晒される可能性があるからです。幸いなことに、アスカ様とミーア様はまだ無事の様子ですから、今は海竜(リバイアサン)を優先しましょう」

「だとよ、(ココ)。それでいいか?」

「―――う、うん。わかった。セリスさん。ごめん、怒鳴りつけようとして……」

「いいえ。大丈夫です」


 自分より年下のセリスに大人げない姿を見せて反省する(ココ)

 セリスがミーアと戸成の無事をわかっていたのは、〝心眼“で彼女達の心を覗いたからだろう。


「それでは、海竜(リバイアサン)の核についてですが……」


 セリスが皆に作戦内容を説明しようとしたときだった。

 船が大きく揺れ始めたのだ。

 懸命に周りの物に捕まり揺れが収まるのを耐える。

 やがて、ガタンと船が地面にぶつかった音が聞こえた。


 なんだ。一体何が起きたんだ、そう思っていたら室内に騎士が飛び込んできた。


「セリス様! 大変です! 海が、海が干上がって―――」

「落ち着いて! 落ち着いて報告してください」

「し、失礼しました。現在、この周辺域の海が引き潮となり干上がっております。そして―――」


 報告員が言う前に、誰もが外の景色に気づいた。


巨大津波(・・・・)がこちらに向かって来ています!」


 ……ああ。知ってる。今、見てる。

 窓の外には、遠くから巨大な津波がこちらへと向かって来ていた。

 報告員の話を聞きながら、俺は目の前の光景にただ呆然としていた。


※1.誤字脱字修正(2018.12.5)

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