SS4-1話:秘められた思い(第31話:感謝祭一週間前)
ルアーナ視点のSSです。
わたしはアスカという少女と会って話をした。
話を聞いていて、ミーアがこの人達に愛され、大切に育てられていることが伝わってきた。
そして、ミーアが奴隷になり、わたしと同じような悲惨な目にあったことを聞いたとき、全てが真っ暗になった。
実の娘に何もしてあげられないどころか、傷つけることしかしていない馬鹿な親なのだと、わたしは深く反省し、心中で何度もミーアに謝り続けた。
そんなことを考えていたら、
「ママ?」
何度もわたしに呼びかけてくれた懐かしい声が聞こえてきた。
可愛い我が子の声に反応したわたしはすぐさまミーアを視界にとらえた。
すると。
『ドクン』
まただ!
ミーアを見ると抱きしめたい感情が反転して、憎しみの感情が湧いてくる。
……どうして、こんなにも愛している我が子をこんなにも憎々しく思ってしまうのか!
必死にそんな感情を押し殺しながら、ミーアと会話しようと試みる。
「……ミーア。久しぶりね。元気だった?」
精一杯の気持ちでわたしは尋ねた。
しかし、ミーアはわたしを見て怯えている。
そんなミーアを見ていたら、抑えていた感情が爆発した。
「親に尋ねられたのに返事もできないなんて、やはり貴方という子は本当にクズなのですね。わたしにいつも迷惑ばかりかけて、本当邪魔な存在。役立たずの無能な子。さすがは低俗で野蛮な亜人といったところかしら」
(止めて! どうして! わたしはそんなこと言いたくないのに!)
必死に抑えようとするが、ミーアへの罵詈雑言が止まらない。
そんな、わたしは突如何かにぶつかり壁に叩きつけられた。
「次、ミーアに同じこと言って見なさい……本気で放つわよ!」
先ほどミーアの事で怒りを露わにしていた少女―――アスカさんの放った水弾だった。
わたしは強制的に止められたことを内心感謝しつつ、アスカさんに向かって悪態をついた。
「……酷いですわ。わたしはただ自分の娘に教育を施してあげたというのに」
……こんな言葉しか出ないのか。こんな最低なことしか言えない自分が情けなくて思わず涙が溢れてしまう。
「もう黙りなさい……次は本気よ」
ミーアのために真剣に怒るアスカさんの姿を見て、わたしはこのとき、ようやく自分がミーアにできることを悟った。
(もうミーアの傍にわたしは必要ない。ミーアのことはアスカさんに託そう)
彼女達ならミーアを守ってくれるとそう信じたわたしは、
「ふん。今日のところはこれで引き下がりますが。必ずミーアは返してもらいますからね」
一言そう告げて、アスカさん達のもとから去った。
心が痛かった。ミーアを手放したくて手放したわけではない。
ミーアの幸せを考えればこれが一番の選択のはずだ。
なのに、心が痛くて仕方がなかった。
(……とにかく今は負傷しているカイが治るまでどうにかミーアをこの場所にいるようにして、できるだけ時間稼ぎをしなければ!)
考え事をしながら廊下を歩いていたら、ふと先ほどの部屋に忘れ物をしていたこと気づいた。
正直、とても気まずいが仕方ない。
部屋へと戻ったときドアの隙間から見た光景に思わず足が止まってしまった。
アスカさんに抱き着くミーアの姿を見た。
その姿を見て思わず泣きそうになった。
(あの温もりが。あの可愛い笑顔が。わたしの大切な居場所が―――!!)
全てを奪われた気がしたわたしは、ただその光景を目の前に落ち込んでいた。
そんなわたしに、ココロさんという少年が話しかけてきた。
「―――まだ、何か用があるんですか!」
「……忘れ物をしたので、戻って来ただけですよ」
別れ際にまた来るとココロさん達に伝え、わたしはその場を後にした。
(……これでしばらくは大丈夫。ミーアには悪いけど、わたしがここに何度も足を運び、その度に駄目だったと報告すれば時間は稼げるはず)
必死にカイの事だけを考える。
でなければ自分の気持ちを抑えきることができない。
そう思いながら屋敷を後にしようとしたとき。
ミーアの楽しそうな笑い声が聞こえた。
同時に、アスカさんに抱き着くミーアの姿を思い出した。
辛かった。でもどうすることもできないのだ。
本当にごめんなさい。こんな愚かな親だけど貴方のことをずっと大事に思っています。
だからどうか幸せになって。
そして、
「生きててくれてありがとう」
わたしは屋敷にいる全ての人達に向けて気が済むまで頭を下げた。
所々で残り二話を投稿していきます。




