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異世界チートを期待したはずが【世界崩壊前】  作者: 中一モクハ
第1章:ベルセリウス帝国(トパズ村編)
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第5話:理想と現実

 僕は田舎が好きだ。

 というより、豊かな自然を見ると僕は元気になる。

 活き活きと日光を浴び、成長していく草花。

 時に、眩しい日光を優しくさえぎってくれる木々。

 その豊かな資源に誘われ、集まってくる可愛い動物達。

 そんな生命力豊かな自然の空気を吸えば、どんな嫌なことなんてすぐに忘れてしまう。

 僕はこの世界に来るまでそう思っていた。思っていたんだ……


「「「…………」」」


 ガサガサと道なき道を歩く、僕、飛鳥、美優の三人。

 森の中ということで、先頭を僕が歩き、その後ろを飛鳥、美優がついて来る。

 だが、さっきから全く会話がない。


(き、気まずい)


「ねえ、飛鳥、それに美優も……」

「うるさい、志! 後、近づきすぎよ、離れて!」

「……あっ、すみません、聞いていませんでした、志くん。何ですか?」

「いや、何でもないよ。ごめん」


 再び無言で歩きはじめる僕達。

 かなり余裕のない状態の飛鳥と疲れ気味の美優。

 原因ははっきりわかっている。

 この五日間、僕達はまともな食事や睡眠がとれていないからである。


 初めてのサバイバル生活。

 しかも、十分な装備やサバイバル知識などない一介の高校生に、いきなり森で生活しろと言われて、できる高校生はそういないと思う。

 幸いなことに、僕達には神具があったので、最低限のことはどうにかできた。


 僕の神具―――大剣は火を創り出すことができた。

 つまり火元は確保できたので、たき火や松明、獣避けに活躍できた。


 飛鳥の神具―――杖は水を創り出すことができた。

 おかげで、サバイバル生活で最も重要となる飲料水を獲得できた。また、温度コントロールも可能なため、お湯を作り、毎日簡易シャワーで身体を洗うことができた。


 美優の神具―弓はイメージした植物を創り出すことができた。

 おかげで、山菜といった食料や寝袋等の生活に役立つ物が手に入った。


 このように、僕達は神具のおかげで、最低限の生活を確保することはできたが、やはりこの生活は辛いものがあった。

 最近まで、美味しい食事を食べ、汗をかいたら風呂に入り、清潔な服や下着を着用して、安全で快適な寝床で睡眠をとる。

 そんな日本では当たり前のような生活が、急にできなくなったのだ。

 

 また、僕達は高校生だ。

 かなり異性を意識してしまう年頃である。

 お湯で毎日身体を洗っているとはいえ、シャンプーやボディーソープといった洗剤で洗っていないのだ。

 どうしても、匂いを気にしてしまう。

 先ほど、近づくなといった飛鳥の言い分はそういうことだろう。

 僕も自分の匂いが気になってしまう。


(はあー、僕が読んでいたWEB小説ではこんなことなかったんだけどな。何か、もっと主人公の便利魔法とかで快適な旅をして、女の子達にチヤホヤされるイメージだったけど)


 もう一度、チラリと後ろを見る。

 ムスッとしたまま歩く飛鳥と明らかに疲れが見える美優の顔が見えた。


(これが現実だよな。実際は)


 美優の疲れ具合を考慮して、一度休憩をとったのち、再び森の中を歩いた。


 しばらく歩くと、ようやく僕達は森を出ることができた。

 そして、目の前には大きな川が流れていた。


「ようやく、森を抜けることができたね」

「ええ、美優の言った通りだわ! 流石、美優ね」

「アハハ、うん。本当によかったです」


 ようやく、目標だった森を抜けることができ、ホッとした飛鳥と美優。当然僕もだ。

 女神からの恩恵なのか、美優はかなり遠くまで視野を広げることができるようになっていた。

 美優は時折木に登り、その力を使って、常に方角を確認していたのだ。


「あと、この川沿いを上へと向かったところに、やっぱり村があります」

「よし! 取りあえず、まずは宿屋を探そう!」

「ええ! もう、野宿はコリゴリよ。暖かい布団に、美味しい食事。これが理想よ!」


 村が見つかったことで、僕達のテンションはマックスに上がった。


「よし、行こう!」

「「おうー!」」


 僕の呼びかけに、二人は元気よく拳を上げた。


…………

……


「金がないなら、ウチに泊めれるわけねぇじゃねぇか! 帰った! 帰った!」

「「「そんなー!」」」


 僕らの理想は金という現実によって、もろく崩れ去ってしまった。

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