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異世界チートを期待したはずが【世界崩壊前】  作者: 中一モクハ
第2章(前半):ヨルド公国
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第25話:指令書の内容

「では、改めまして団長より預かりました指令書をお渡しします」


 アナベルから指令書を受け取り、その内容を読み上げた。

 そこには、以下の内容が記載されていた。


『指令書』


1.アシルド盗賊団のアジト調査

2.『巨大マナギの肝』の入手

3.〝コーネ”の捜索


 以上だ。


 アシルドという言葉に飛鳥、美優の二人が眉を潜める。

 誘拐され危険な目にあったのだから当然だ。

 ユリウスが言っていた僕達に関係のあることとは、このことだろう。


「アジトの捜索って、騎士団は捜索しなかったんですか?」

「いえ、報告を受けて、すぐさま屋敷を調査しました。しかし、何もビーグルに関する情報は見つかりませんでした」


 アナベルはさらに話を続ける。


「でも、不思議なことに探知魔法で屋敷を検索すると、奇妙な魔力反応が検出されるのです」

「奇妙って?」

「いえ、それが術者も探知したことがない不思議な魔力反応みたいでして……結局、その後も時間が空いたときに屋敷を捜索したのですが、何も見つけることはできませんでした」

「なるほど」

「現状、騎士団は感謝祭(シーフェス)の警備で手を回せない状況です。そのため、皆様とメルディウス様には、その奇妙な魔力反応について捜査していただきたいのです」

「あの〜アジトの捜索はわかりました。でも、私達で大丈夫でしょうか?」

「正直、捜索なんてしたことないわよ。そんな便利な魔法もないし」

「そこは安心してください。こちらで新たに開発した魔導具をお渡ししますから」


 そう言って、アナベルは僕らの前に探知の魔導具を取り出した。

 ヘルメットと二つの金属棒。

 ダウジングマシンみたいだ。


「……もしかしてその魔導具って」


 魔導具を見て、メルディウスが嫌そうな表情を浮かべた時だった。


「そうだ! 私の開発した探知器―――その名も『何でもみつカールクン三号』だ!」


 バンと勢いよく扉が開いて、草臥(くたび)れた白衣を着た男が部屋に入ってきた。

 無造作に伸びた銀色の髪と整った顔立ち。

 身なりを調えれば、かなりの紳士に見えただろう。


「久しぶりだなメル―――ブフッ! 報告通りに面白い格好だな」


 男はゴスロリ服を身につけているメルディウスの姿を見て大爆笑している。


「兄上! 私が困っているのに笑うなんて何事ですか!」

「いやいや、すまない。オシャレに無頓着な剣術バカのお前がそんな可愛らしい格好してるのが―――ブフッ! やっぱ無理だ!!」


 お腹を抑えながら笑い続けるメルディウスの兄―――コーネリアス・シュバルツ。

 その兄に笑われて、メルディウスは顔を真っ赤にしている。


「ブハハハ!」


 ……それにしても長いな~


 一通り笑い終えたコーネリアスは、「はぁあー、疲れた」と言ってようやく自己紹介を始めた。


「改めまして、ベルセリウス帝国魔法研究所室長のコーネリアスだ。そこのメルディウスの兄でもある。よろしくな」

「あっ、はい。宜しくお願いします」


 差し出された手を握り返す。

 続けて飛鳥、美優にも握手をしていく。


「そして、久しぶりだな。メル。元気そうで安心した」

「……最初からそういうふうにしてくれればいいのに」


 ブスッとふてくされた態度で応じるメルディウス。

 普段落ち着いた彼女が、子供のような態度を見せたことに少し驚いた。

 自分の気持を素直に見せ合えるということは、二人は仲の良い兄妹なのだろう、そう思った。

 

「さて、今日来たのは別にメルの可愛い姿を見に来たわけではない。実は騎士団に依頼して君達にはある素材を手に入れるよう依頼をしたのだが」

「それって『巨大マナギの肝』のことですか?」


 飛鳥がコーネリアスに尋ねる。


「ああ、そうだ。実を言うと現在、帝国ではマナギの肝が不足していてね。帝国騎士団でもマナギの討伐はとても難しいのだ」

「といっても私達は唯の素人なんですが……」

「大丈夫だ。マナギはある条件下でしか現れることができない魔物でな……その条件が」


 僕達がゴクリと息を呑む。


「強い魔力を持つ清らかな乙女がいないと姿を現さないんだ」

 …………。

 …………。

 …………はあ!? いまなんと。


 意味不明な理由に、僕達は思わず呆然としていた。


 そして、


「ちょっ、ちょっと、あんた。突然何を言ってんの!!」

「えっ、えっ! えぇえええ!!」


 慌てふためく飛鳥と美優。


「何と言われてもマナギが現れる条件を言っただけだが……まさか君達はひしょ―――」

「違うわよ! バカ」

「違います!」


 先程のメルディウスと同様に顔を真っ赤にして叫ぶ二人。

 ……というか、美優。僕を見つめて「絶対に違いますからね!」」と仰られても。正直、どう反応すればいいかわからないから!


「なら結構だ。見たところ君達の魔力なら余裕でマナギも反応するだろう。それに、メルが参加してくれれば大きな問題はないと思っていたしな」

「兄上。それはどういう意味でしょうか?」

「いや、お前と付き合える男なんて中々いないと思ってだな。お前未だに処女だろ?」

「兄上!」


 凄い剣幕でコーネリアスを追いかけ回る。

 しかし、異常な速さで逃げるコーネリアスに全く追いつくことができないメルディウスは肩を落として、

 

「……私にだっていずれ素敵な殿方が現れます……」


 小声で呟いた。


 ……誰かメルさんをもらったげて! 

 というか、容姿端麗で人柄も良いメルディウスなら誰もが飛びつくと思うけどな。


「ちなみに、この素材はお前のそのドレスを解除するために必要な素材でもあるから、しっかり取って来てくれ」


 凄まじいスピードでメルディウスから逃げたコーネリアスだが一向に疲れた気配もなく、淡々とマナギ素材の必要性を説明する。一応、メルディウスの身体のことも考えていたらしい。


「あと、今回最も重要なミッションだが……〝コーネ”の捜索だ」


 先程とは打って変わって鎮痛な表情を浮かべるコーネリアス。

 その表情から、よほど大切な人だということが伺える。

 メルディウスを揶揄(からか)っていたときと、態度が全く違う。


「兄上、コーネという方はいったい?」

「コーネは私の半身、いや全てといっても良い存在だ。そのコーネが二日前から行方不明になったのだ」

「もしかして攫われたとか……」

「……その可能性も否定はできない」

「そんな!」


 予想以上に切迫した状況みたいだ。

 これは、最優先で当たらなければならない事例だ。


「して、コーネとはどのような人物なのですか?」

「? 人物? 何を言っているのだ?」


 そう言ってコーネリアスが懐から一枚の紙を取り出した。

 その紙を覗き込むと―――


「猫かよ!」

 

 欠伸をした茶色の猫が描かれていた。


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