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異世界チートを期待したはずが【世界崩壊前】  作者: 中一モクハ
第1章:SS
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SS2-3話:続人間観察

連続投稿です。

(観察日記二日目)


 昨日と同じように正午まで人間(クミ)は眠っていた。

 目を覚ましたとと同時にご飯を催促するが、もうないことを伝えると驚愕な顔をした後、じーっとこっちを悲しそうに見つめる。

 ……あの顔は正直ずるいと思う。思わずご飯を与えたくなる。


第五、人間(クミ)は働かない。


(観察日記五日目)


 日記の日数が飛んだ。

 その理由は簡単だ。

 この三日間、クミは全て同じ行動しかしていないからだ。

 正午に起き、私が作ったご飯を大量に食べ、夜は私を撫でまわしつつ、ボーッとする。

 何も行動しないのは観察日記としてマズイと思う。

 でも、ご飯をあげないとあの目をするからなあ。明日は厳しくしよう。


(観察日記六日目)


第六、人間(クミちゃん)は魔法が使える。その際、瞳が青くなる。


 正午に起きたクミちゃんはいつものように私に昼食をねだった。

 そこで心を鬼にして、自分の分は自分で取りに行きなさいと叱った。

 初めは悲しそうな顔でこちらを見ていたクミちゃんだったが、私の言うことを聞いて狩りに出かけた。

 ……ナイス、私。よく頑張った!


 クミちゃんの狩はすごいの一言だった。

 すぐさま、水豚(スイトン)乱視猪(アスティグボアー)といった食材になる相手を見つけ出す。

 そして、何も持っていないのに、相手に向けて投げる動作をした途端、水豚(スイトン)達が気を失うのだ。

 どうやったのか聞いてみると、


「……私の魔法。〝風“を使って相手を気絶させることができる」


 ブイサインをしながら答えてくれた。

 普段、綺麗な長い黒髪と同じ黒い瞳が、あのときは青色になっていたのは不思議だった。

 きっと魔法を発動するときは、瞳の色が変わるのだろう、良い発見だった。


第七、人間(クミちゃん)は身体能力が獣人並みに高い。


 凄すぎる。

 水豚(すいとん)二頭、乱視猪(アスティグボアー)三頭を軽々抱えたまま小屋へと持ってきた。

 力持ちの像族の獣人でも無理だと思う。

 それをこんな小さな女の子が簡単に持ちあげている姿にとても違和感がある。

 しかも本人まったく疲れた様子がない。

 ……やばい。獣人のアイデンティティが壊された気がする。やはり人間は気をつけなければいけない生き物だ。

 ちなみに、水豚(スイトン)乱視猪(アスティグボアー)を一頭ずつ私にくれた。

 村の皆に渡すと、とても喜ばれた。

 クミちゃんありがとう。


(観察日記七日目)


第八、人間(クミちゃん)は魔物と会話できる。


 クミちゃんがいつものように正午に起き、まったりと過ごしていたとき。


『ハイホー!』


 小屋の中に突然ハイホー族が現れた。

 私は思わず槍を構えたが、クミちゃんは


「ハイホー!」


 ハイホー族と会話をしていた。

 傍から見たら、クミちゃんとハイホー族がハイホーと言っているだけなのだが、時に笑い、時に泣き、時に真剣な表情で話す姿を見ていると、本当に意思疎通ができているようだった。

 後で何の話をしていたのか聞いたところ、


「……守秘義務に関わるので、レナでも教えてあげられない。ごめん」


 と言われた。守秘義務とは何だろう?

 難しい言葉を知っているのだと思った。


 ちなみに、出会った当初どうして『ハイホー族』の仮面をつけていたのか、聞いてみたところ、


「……勝利して市民権を得たから」


 と、また難しい言葉を使われた。

 意味はよくわからないがクミちゃんがすごいということは伝わった。


 人間(クミちゃん)観察をしてから一週間が過ぎた。


 正直、この一週間とても楽しかった。

 いつの間にか、人間のことをクミちゃんと呼んでいた。

 クミちゃんも私のことをレナと呼んでくれる。

 まだ人間という生き物はわからない。

 だけど――私はクミちゃんのことが好きになった。


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