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異世界チートを期待したはずが【世界崩壊前】  作者: 中一モクハ
第1章:ベルセリウス帝国(トパズ村編)
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第19話:告白

 アシルドのアジトを襲撃して一週間が過ぎた。

 ベルセリウス帝国から派遣された復興部隊により、トパズ村の復興は大きく進んだ。

 村人も少しずつであるが、かつての明るさが戻り、賑やかな様相を取り戻し始めた。

 その村の一角。

 ちょうど、志達が宿泊していた宿屋の場所。

 現在は仮住宅が建築されており、志達はその住まいに宿泊していた。


 帝国騎士団によりアシルド盗賊団が討伐された知らせはすぐさま村内へ広がった。

 特に村を守ろうと戦っていた飛鳥、美優、そしてアシルドを倒した志は英雄のような扱いを受けていた。

 今も志達の元には毎日のように、村人から新鮮な野菜が届けられている。


 そんな英雄扱いされている(ココロ)は――現在、橋の下に隠れていた。

 彼は逃げていたのだ。

 もう一人の英雄―――波多野美優から。


…………

……


「志くーん、どこですかー?」


 美優の声が聞こえてくる。


 最近、美優が良く僕に話しかけてくるのだ。

 それは嬉しいことだ。

 内気であまり人と話すのが苦手な友達(ミユ)が積極的に話しかけてくれて、僕は嬉しかった。

 だが、ちょっと度が過ぎる気がする。

 食事の時も常に僕の隣に座ったり、手料理をアーンと言って食べさせてくれたり、甲斐甲斐しくマッサージをしたりと、友達の域を超えている気がするのだ。


 そして、一番怖いのが、僕が美優以外の他の女性と話をするときだ。

 昨日も、お礼に来た村人の女の子(年齢は僕達と同じぐらい)と仲良く話をしていたら、顔は笑顔なのにあのベルセリウス皇帝のような威圧感が美優から伝わってくるのだ。


 そのことを飛鳥に相談したら、


「はあ~、まあ、美優は思い立ったら真っすぐな子だからね、頑張んなさいよ」


 と、一人悟ったような顔で僕にエールを送った。


 まあ、ここまでされれば鈍感な僕にだってわかってしまう。


 美優が僕に好意を抱いているのではないのかと。

 もしそうなら、正直僕は嬉しい。

 いつも人を思いやる心の優しい女の子。見た目も小柄で愛くるしく、また人並より大きな(リーサルウェポン)を持つ美少女が僕なんかを好きになってくれたのだ。

 嬉しくないはずがない。反語!


 だが、同時に困ってしまうことがある。

 なぜなら、僕は美優の親友である戸成飛鳥のことが好きなのだから。

 この気持ちは、高校入学初日に飛鳥を見た時から変わっていない。

 何故か、彼女に心惹かれてしまったのだから。


 だから、美優には悪いが断ろうと思う。

 折角仲良くなったのに関係性が悪くなることが僕は辛かった。


 そんなことを考えていると、


「志くーん、みーつけた!」


 橋の上から美優が顔を覗かせていた。


…………

……


「もう、何で私から逃げるんですか」


 現在、僕と美優は村を一望できる高台に来ていた。

 美優が持参したピクニックシートを広げ、二人でサンドイッチを食べていた。

 プンプンとした様子で僕を軽く睨んでいる。


「いや、その、たまには一人でのんびりしたいというかですね、そのー」


 上手い回答が見つからずテンパってしまう僕。

 そんな僕の様子を見た美優は、


「……やっぱり、わかっちゃいましたよね……私が、志くんのことが好きだってこと」


 僕に告白した。

 突然の告白に僕の頭の中が真っ白になる。


「わかってます。志くんが飛鳥さんのことが好きだってことは……でも、どうしてもこの思いを伝えたくて」


 美優は首を傾げ優しく僕に微笑みかける。


「志くんは覚えてなかったみたいですけど、小さいころ、私と志くんは出会ってたんですよ。あの公園で」

「えっ!!」

「近所の子供達に虐められて泣いていた私を貴方が助けてくれたんですよ。僕は勇者だって言ってね」


 美優から公園の名前を聞き、僕は昔のことを思い出した。

 確かに小さいころ僕は勇者に憧れていた。

 弱きをくじき悪を成敗する勇者に僕はなりたかったのだ。

 しかし、現実は僕を勇者という幻想から切り離した。

 そのことを思い出すと今でも胸が苦しくなる。


 確かに僕は勇者に憧れて人助けをやっていた時期があった。

 薄っすらとだが虐められていた女の子を助けた記憶もある。


「あの時の女の子!?」

「やっと思い出してくれましたね。そうです。あの時は本当に助けて頂いてありがとうございました」


 嬉しそうに笑顔で美優は話を続ける。


「小さい頃の時もそうですし、石田先生のときもそう、そして今回の件も含めて、私はいつも貴方に助けられてばかりです。もう貴方のことを好きになるほかないじゃないですか」

「……石田先生のときは、僕は何もできなかったよ。あれは勇也のおかげだよ」


 美優が不登校になって、石田先生に美優がセクハラを受けているということに最初に気づいた飛鳥が僕達に相談してきたのだ。

 そして、石田先生が美優の家に家庭訪問に行くと聞いて僕達は慌てて学校をサボり美優の家へと向かったのだ。

 途中、道に迷い公園にいたところ美優が突然僕達の前に現れたのだ。


「石田先生から逃げて無我夢中で走っていたら、貴方と初めて出会った公園にいました。そこで、志くんが優しく抱きしめてくれました。あのとき、どれだけ私が救われたと思いますか」


 美優は目をつぶり胸に手を当てたまま話を続ける。


「勿論、勇也さんにも感謝しています。どうやってやったのかはわかりませんが、あの学校の大人達が突然自分達の非を認め謝罪し、石田先生も辞任させるなんて。本当に不思議な人です。それでも、私はあのとき私の心を救ってくれた貴方にとても感謝しています。貴方はどんな時にでも私が泣いてると必ず助けてくれる―――私の勇者様ですから」


 美優は綺麗な笑顔で僕に微笑んだ。

 そのとき、僕の胸にズキンと息苦しさを感じた。

 こんな綺麗な笑顔を僕は初めて見た。


「付き合ってほしいというわけではありません。志くんには飛鳥さんという想い人がいるのですから。けど、だからと言って諦めるつもりもありません。志くんが飛鳥さんに思いを伝え一緒になるまでは。私は何度でも貴方に好きだと伝えます」

「……僕が美優の思いに答えなかったとしても? その気持ちが重いと言っても?」

「はい。私は貴方のことを愛していますから」

「……」


 美優の真っすぐな言葉に思わず無言になる。


「ただ、迷惑だと感じればいつでもおっしゃってください。志くんの邪魔はしたくありませんから」

「……ずるいよ。そんな顔でそんなこと言われたら。迷惑だなんて言えないよ」

「はい。女の子はずるいんですよ」


 うふふと笑う美優に僕もつられて笑ってしまう。


「僕は飛鳥のことが好きだ」

「はい」

「でも飛鳥は勇也のことが好きだ」

「はい」

「僕の思いは飛鳥に届かないかもしれない」

「はい」

「それでも僕は飛鳥のことが好きなんだ」

「はい」


 僕は美優にひどいことを言っている。

 自分の好きな人が別の人を好きだとはっきり言っているのだから。

 美優は辛い気持を堪え、無理に笑顔を作ろうしているのが分かる。


「だから、僕は美優が僕を好きな気持ちを止めない」

「―――!!」

「だって僕も同じだから」


 好きという感情をコントロールできればいいのに。

 でもこの気持ちはコントロール不可能だ。

 美優の好きという大切な気持ちを僕は壊したくない。


 僕の答えを聞いて、美優は涙を浮かべる。


「一緒に頑張ろう」

「ヒック、ヒック……はい!!」


 僕達は笑顔で握手を交わした。


…………

……


 そんな二人の様子を遠くから見ていた人物がいた。


「嘘でしょう……志がアタシのこと好きだなんて」


 美優と志を探していた飛鳥は、二人の話を聞いて呆然とその場を立ち尽くしていた。

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