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異世界チートを期待したはずが【世界崩壊前】  作者: 中一モクハ
第1章:ベルセリウス帝国(トパズ村編)
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第10.5話:サバイバル訓練(美優視点)

 私の名前は波多野(ハタノ) 美優(ミユ)

 異世界で魔物をハントしている普通の女子高生です。

 ……あれ? 自分で言っていて普通の感じがしません!


 私は今メルディウスさん、飛鳥さんと一緒に〝魔の森“の奥地に来ています。

 そこは村の人なら誰も入らない危険な場所であり、その証拠に――


『『『ギシャー』』』


 私達は数十匹の巨大な蟻――『アーミーアント』に囲まれています。

 アーミーアントは1m(メートル)程度の大きさであり、硬い樹木を噛み砕き、ギョロリとこちらを見つめる複眼は見ていて嫌悪感が出てしまいます。

 ……というか私、昆虫は苦手なんです!


 隣にいる飛鳥さんもアーミーアントの集団を見て、顔色が悪そうに見えます。

 そんな私達に、


「お二人とも大丈夫です!! 数は多いですが、一匹の力はウッドウルフよりもむしろ弱いくらいです」


 メルディウスさんが説明しながら、剣でアーミーアントを次々と葬り去っていきます。

 時折、剣からは青白い雷光が発せられ、蟻の巨体を黒焦げにしていきます。

 私達は思わず魔物と戦うメルディウスさんの姿に見とれてしまいます。


「お二人の後ろは私が守ります。後ろは気にせず目の前の敵に集中してください」


 その声で、現在戦闘中であったことを思い出しました。

 目の前にはアーミーアントが五匹、こちらに向かって来ています。


 私は瞬時に神具―弓を創造し、アーミーアントに構えます。

 そして、戦闘が始まりました。

 結果は圧勝でした。傷一つ負うことなく簡単に倒すことができました。

 その後も奥地で襲い掛かってくる魔物達と私達は戦い続けました。


…………

……


「あまり大したことないのね、魔の森の魔物って」


 現在、私達は大きな木の下でキャンプをしています。

 メルディウスさんが用意したテントの近くで、折り畳み椅子に座り寛いでいる飛鳥さんがそう呟きました。


「というよりお二人の力がすごいんですよ」


 お茶を飲んでいたメルディウスさんが苦笑いを浮かべます。


「今日戦った『人面樹』という魔物は、帝国騎士団の騎士が三人がかりで相手にするくらいの強さなんですよ」

「そうなんですか!? 確かに、倒すのに時間はかかりましたが」


 人面樹との戦闘を思い出すと、距離をとりつつ、五十本近くも矢で狙撃していました。

 しぶといなぁとは思っていましたが、向こうからの攻撃は絶対当たらないので、脅威とは感じませんでした。


「それだけ貴方達は特別ということなんですよ。この世界では」

「でも、メルディウスさんは簡単にあの人面樹って魔物倒してたじゃない!? あっ、そのことで思い出した。戦闘中、メルディウスさんの剣が光ってたアレって魔法?」

「いいえ、魔法ではありません。あれは『剣技』です」

「剣技? 魔法とは何か違うのですか?」


『剣技』という初めて聞いた単語に耳を傾ける。


「そうですね、私も専門家ではないので明確にこの二つを説明するとなると難しいのですが―――」


 メルディウスさんが少し難しそうな顔をして『剣技』について説明してくれました。


 メルディウさんの説明によると、『剣技』とは、術者の生命力を使って発動する技のようです。

 『魔法』と違うのは、その力の発生源。

 『魔法』の場合は魔力、『剣技』は術者の生命力になる。

 そのため、『魔法』と『剣技』では使い勝手が異なるそうです。


 『魔法』の場合、周囲に散布する魔力の源であるマナ、あるいは術者の体内にある魔力を変換し、発動の鍵となる詠唱または魔法陣に魔力を通すことで発動します。

 詠唱や魔法陣の種類は多種多様に存在しているため、『魔法』は『剣技』に比べて自由度が高いのが特徴です。

 ただ、『魔法』は威力や習得方法が術者の魔力量や才能によって、大きく左右されるため習得するのが難しいみたいですが。


 『剣技』の場合、使用者が定めた(フォーム)に生命力を通すことで発動します。

 『剣技』が『魔法』に比べて優れている点は、努力すれば必ず習得できる点です。

 術者が使用する技を頭の中でイメージしながら、何度も何度も同じ型を繰り返し行う。

 やがて、その型に生命力が伝わり、技が発動すれば『剣技』となるみたいです。

 ただ、『剣技』を習得する場合、それ相応の努力が必要になるそうです。


 メルディウスさんが習得している『剣技』は三つあり、それゆえにメルディウスさんは帝国騎士団で剣の天才と呼ばれているそうです。本人は謙遜していますが。

 ちなみに『剣技』と話していますが、武器の種類によっては『斧技』、『拳技』、『弓技』と名称は変わるみたいです。


「今日、人面樹やアーミーアントに放ったのは、【雷鳴斬(らいめいざん)】という剣技です。『天』の上位『属性』が付与されています」


『属性』――

 この言葉はサバイバル訓練に入る前にメルディウスさんに教えてもらいました。

 この世界には、火、木、土、風、水の下位属性と天、冥の上位属性が存在します。

 属性はゲームのようにそれぞれ不得手があります。

 例えば、火は木に強く水に弱い。土は風に強いが木には弱い、といった感じです。

 そして、上位属性はどの下位属性よりも強いという特徴があります。

 ちなみに、天と冥はお互い弱点になります。


「人面樹というより、この森の魔物は基本的に木属性が備わった魔物が多いですから上位の天属性で戦えば、簡単に倒せます」


 そう言って、メルディウさんは自分の剣を見つめます。


「いいわね、上位属性なんて。私は下位の水属性だし」

「私は木属性ですから、この森の魔物は皆、耐性があるみたいです」


 飛鳥さんが溜息をつきながら自分の神具―杖を取り出しました。

 私も自分の神具―弓を取り出してみる。綺麗な木目に月桂樹が飾りついた私の(あいぼう)

 弦を引きながら矢を思い浮かべれば、手元に矢が瞬時に現れてくれる。

 頼りになる私の相棒だ。


「飛鳥さんの水弾、美優さんの矢は魔法に近いモノだと思います。そして推測ですが、恐らく生命力と魔力の両方を力にしているのではないでしょうか」

「それって、つまりどういうこと?」

「お二人の神具は剣技と魔法の両方の力を備えているということです。無詠唱で使い手の創造力だけで、その性能は何倍にも高まることができるのではないかと」

「それって、最強じゃない!!」

「ええ、正しく神に与えられた伝説の武器ですね」


 メルディウスさんが私達の武器(あいぼう)を絶賛してくれます。


「ですから、明日の訓練は想像力を意識してください。武器にどんな属性を付与するか、あるいは強力な一撃とするかなど、選択肢は無限にあります」

「わかりました」

「はい」


 明日のミーティングも終わり、就寝の準備をします。

 テントの周りにはメルディウスさんが魔物避けの魔導具を設置し、メルディウスさんと使い魔のギン(渋い雰囲気を匂わす二足歩行の黒猫さん)が先に見張りをしてくれるみたいです。


「それにしても、今頃、志のやつ。何やってんのかしら」

「ガイネルさんとマンツーマンで指導ですからね。怪我してないか気になります」


 テントの中で寝袋にくるまって飛鳥さんと話をします。


「まあ、大丈夫でしょう。あのガイネルさんやメルディウスさんと互角に戦えるのって(アイツ)だけだし」

「……そうですね」


 このサバイバル訓練を行う前、ガイネルさんやメルディウスさんと何度も模擬戦闘を行ってもらいました。二人の容赦ない猛攻になす術もなく敗北した私と飛鳥さん。

 しかし、私達とは違って志くんは二人に善戦していました。

 同じ世界から来たのに、志くんと私達の強さには大きな差を感じました。

 今回、無理を言ってメルディウスさんにサバイバル訓練をお願いしたのは、一刻も早く彼に追いつきたいという焦りからです。


「明日も頑張ろうね、美優」

「はい」


 お休みなさいと言って、私は目を閉じました。


「強くなって、今度は私が彼を守るんだ」


 そう決意して。


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