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異世界チートを期待したはずが【世界崩壊前】  作者: 中一モクハ
第2章(後半):SS
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SS2-6話:ハイホー族?の少女

 アタシはミレーユ。

 迷いの森を守護する兔族の族長の娘だ。

 今、アタシは命の危機に瀕していた。


「どこに行った!?」

「逃がすな!! 必ず見つけ出せ!」

「さもないと、俺達が殺されるぞ!」


 迷いの森の結界が壊され、人間が森の中へと侵入してきたからだ。

 突然アタシの村にやってきたアイツらは、村人を次々に襲い始めた。


 アイツらの狙いは、アタシ達亜人や獣人を人間の国へと連れ帰り奴隷とすることだった。

 父様が言っていたから間違いない。


 父様を中心に村の大人達はアタシ達子供を逃すため、人間達と戦った。

 だが奮戦空しく敗れてしまい人間達に捕まってしまった。


 アタシは父様の意志を受け継ぎ何とか森の奥地まで逃げて来たけど、ついに追い詰められてしまった。

 正直、この奥地は恐ろしい場所なので入りたくはなかったけれど仕方がない。

 ここには、危険度Dランクの危険な魔物―――『ハイホー族』の縄張りだと聞いている。

 さっきから身体の震えが止まらない。


「いたぞ!」

「―――ッ!!」


 人間達に見つかったアタシは茂みを出て、一目散に逃げ出した。


「逃がすな! 追え!」


 暗く生い茂った森の中をかき分けてひたすら走った。

 追われてから既に五日を経過していた。

 既に体力は限界だった。

 やがて。


「へっへっへっ! やっと追い詰めたぜ」

「クッ!」

 ついに、四方を取り囲まれてしまい逃げ場を失ってしまったアタシ。

 人相の悪い人間の男達が六人、アタシをニヤニヤ笑いながら見ている。

 彼らは、人を従属させる首輪をそれぞれ用意していた。


「ただでは捕まらないわよ! 最初に近づいた奴は絶対殺してやる!」


 思いっきり奴らを睨みつけた。


「へん。虚勢をはりやがって! やれ!」


 リーダらしき男の号令と共に周りの男達が一斉に飛びかかってきた。

 男の一人がアタシの耳を掴んだ。


「きゃああ!」

「全く手間かけさせやがって! 」

「いや! 離して!」


 必死に抵抗するが、男達は構うことなくアタシに首輪をつけようとする。


(もうだめだ!)


 諦めかけたそのとき。


「……ハイホー?」


 コシミノをつけた人サイズの『ハイホー族』が突然アタシの眼のまえに現れた。

 なんだあれは?

『ハイホー族』といえば、私の膝下にも満たない体格の小人だと聞いている。

 だけど、目の前の『ハイホー族』は私より少し小さいぐらいの体格だ。


 おかしな『ハイホー族』はアタシを拘束していた男達に向かって、手のひらを翳した。

 すると、強大な突風が吹き荒れ、囲んでいた男達が大きく吹き飛ばされた。


「なんだ! お前は、ハイホー族にしては大きすぎるだろう! 新種の魔物か!?」

「……」


『ハイホー族』の少女(地面につくくらいに伸びたキレイな黒髪に胸元を隠していることから、そう推測した)は何も反応することなく、こちらをじっと見つめている。


「……もしかして、アタシを助けてくれた?」


『ハイホー族』が人を助けた話なんて聞いたことがない。

 アタシはただ呆然と不思議な少女を見つめていた。


「クソ! なめやがって!」


 男が腰元の剣を抜いて、少女に襲いかかった。

 少女は慌てることなく、男に向かって何か投げる動作をした。

 すると、


「うグッ! かハッ!」


 突如、男が苦しみだしそのまま地面へと倒れた。

 どうやら、気絶して気を失ったようだ。


「なんだ! 何が起きたんだ!」


 人間達が慌てだし、彼女に向かって次々に魔法を放つ。

 しかし、少女は目にも見えない身のこなしで魔法を躱すと、再び投げ動作を行う。



「アッ! ガッ!」


 先程と同様に人間達は急に苦しみだした後、その場に倒れて気絶した。


 戦闘が終わると、魔物の少女はゆっくりとこちらに向かってきた。 

 アタシはどうすればいいかわからず、ただ身構えていると。 


「……大丈夫?」


 少女が仮面を外して心配そうに話しかけてくれました。

 少女の素顔を見て、アタシは思わず見惚れてしまいました。


 黒く艶のある漆黒の長い髪と同じ黒の瞳。

 見れば誰もが振り向いてしまう整った顔立ち。

 〝美”という確かなモノがあるとすれば、この少女にあてはまるだろう。


 ボーッと少女を見ていると。


「とりあえず、この人達をどこかに送ってあげないとね」

「えっ?」


 そう呟くと、「ハイホー」と少女が叫んだ。

 すると。


「ハイホー」

「ハイホー」

「ハイホー」


 周囲に無数の『ハイホー族』が姿を現した。

 ハイホー族はせっせと倒れている人間達をどこか遠くへ運ぼうとする。

 だがそんなことはどうでもいい。


「―――Dランクの危険魔物モンスターに囲まれるなんて! もう終わりよ!」


 アタシは恐怖のあまり、思わず意識を手放し、その場で気を失った。

 薄れる意識の中。


「……あれ? おーい? 返事がない。ただの屍か……」


 おかしな言葉を少女にかけられた気がした。


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