教育
「子供??」
ティアの大絶叫に俺は聞き返す。
隣にいるリーシャの顔も、呆然としている。
「ハァハァ…そうです!子供ができます!」
ティアは大きな声を出したせいで、息が荒い。
「ティア?子供って…どういう事?」
俺がそう言うと、ティアは深呼吸をして息を整える。
「ふぅ…いいですかシュウ?キスをすると、子供が出来ちゃうのですよ!」
「そんな事な…」
「待ってシュウ」
俺がティアの発言に言い返そうとすると、リーシャが止める。
そして、俺の手に触れると、
『シュウ、もしかしたらティアさんの教育に制限があるのかもしれないわ』
いつも、俺の右腕になって周りに人がいる時に話す方法で俺に話し掛ける。
『制限?』
『そうよ。王族は子供にあまり性教育はさせないって聞いたことがあるわ』
『そうなの?』
『予測だけれど、性教育を教えてしまってむやみに子供を作られたら、王位継承権の順列などがややこしい事になるからじゃないかしら』
『なるほど』
『でも、書物で物語を読んでしまったばっかりに、変な知識が付いちゃったんじゃないかしら』
『だから、キスをしたら子供ができると思ってるのか』
そうなると、下手なことは言えないな…。
俺がそう思っていると、
「シュウ!リリアーナ様!何で触れ合ってるんですか!」
ティアが、俺とリーシャの触れ合っている手を指差しながら言う。
「ティア、落ち着いて!ね?」
「落ち着いていられますか!子供は早いです!」
「大丈夫よ、私たちはまだ子供を作る予定はないわ」
「ならキスなんてしてはいけません!」
ティアは顔を赤く染めているが、それが恥ずかしいからなのか怒っているからなのかわからない。
『どうしよう…。このままじゃ部屋に帰れないよ…』
『仕方ない…。少しだけ子供の作り方を教えましょう』
リーシャはそう言って、俺から手を離してティアの所に行く。
「少し良いかしら?」
「な、何ですか?リリアーナ様?」
リーシャがティアを部屋の隅に連れていく。
「子供は…愛……」
「それは…ス……ない…?」
「そう…」
「そ…な…!」
「もっと……事……のよ」
2人は小さな声で話している。
多分、子供の作り方を少し詳しく話しているんだろう。
やがて、2人が俺の方へ来る。
「その…シュウ。変な事を言ってしまい申し訳ありません」
「大丈夫ですよ」
ティアが、申し訳なさそうに俺に謝ってくる。
俺はリーシャを見ると、リーシャはふふん!と胸を張っている。
それから俺とリーシャはティアの部屋を後にする事が出来た。
意外にもティアが、最後まで自分の部屋で過ごそうと言っていたが、それはまた今度という事になり、俺達はティアの部屋を出て細い廊下を通り、元の廊下に戻りレスティンとして部屋に戻った。
今は部屋の中で、リーシャと2人でティアから教えてもらった情報の整理をしている。
「執事で緑髪のアルノエさん、細身の門番をしているケールさん、青色の短髪で左手に包帯をしているメイドのマドロラさん…か」
「執事の人に会うのはどうしようかしら?執事って誰かの側にいるからそう簡単に情報を聞き出す事が出来ない可能性があるわよ」
「とりあえず、門番をしているケールさんと、包帯をしているマドロラさんから先に会ってみよう」
「わかったわ」
俺とリーシャはそう話し合ってから眠りについた。
もちろん、お互いに手を繋ぎながら…。
翌朝、特に誰かに起こされる事も無く、自然と目が覚めて起き上がる。
隣にいるリーシャは、未だにすやすや寝ている。
俺は物音を立てない様に部屋から出る。
城の中を歩いていると、執事やメイドさんがテキパキと働いている。
俺は外の空気を吸いたいと思い、訓練場に歩き出す。
訓練場に着いて見ると、先客がいる。
「エルミールさん?」
訓練場にポツンと座っているエルミールさんの横顔が見える。
その前には、かなりの大きさの布が訓練場の地面に敷かれている。
すると、エルミールさんが立ち上がり、いきなり胸元に手を入れる。
何をしているんだろう?
そう思いながら、俺は訓練場の入口に生えている茂みに隠れる。
彼女は胸元をゴソゴソしていると、手を胸元から抜く。
すると、彼女の手には短剣が握られている。
「どこから出してるんですか…」
俺は今見た光景に小さくツッコミを入れてしまう。
更に、メイド服の襟から手を入れると、出てきたのは弓…。
それからも、彼女が服に手を入れると様々な武器が出てくる。
袖からは、注射器の様なものまで出てくる。
一番出てきた場所は、メイド服のスカートだ。
前にも見たが、彼女のスカートには様々武器が出てくる。
地面に敷かれている布の上に出していく武器を並べると、1つ1つ手入れをし始めた。
その表情は、とても真剣で今彼女に近づくのは止めようと思ってしまう程だ。
とりあえず俺は、茂みの中で彼女が手入れを終えるのを待つ。
やがて、エルミールさんが全ての武器をまた服の中に閉まっていく。
終わったのかな?
そう思って、茂みから出て彼女に近づく。
すると、
「このメイド服も、そろそろマズいですね。新調してもらいましょうか…」
エルミールさんが独り言を言っている。
すると、近づいてくる俺に気がついた。
こちらを向いて、頭を下げてくる。
「おはようございますレスティンさん」
「おはようございますエルミールさん」
彼女と同じように、俺も頭を下げる。
「こんなところで何をしているんでしょうか?」
「朝起きて、外の空気を吸いたいと思いまして、ここに来たんですよ」
「そうでしたか。そういえば昨日はどうでしたか?」
「昨日ですか?」
エルミールさんが、一歩前に出て俺に近寄る。
「ティアリス様とのお話です」
「あぁ、ティア…ティアリス様との事ですか」
「はい、とても気になります」
「俺が、ここにいる事で色々と話しましたよ」
「ティアリス様は今回の依頼に対して、何も知らないはずですよ」
そう言うエルミールさんに、昨日のティアの部屋での会話を教えた。
「あのハゲジジイ…秘密だと言ったはずなのに…」
エルミールさんが物凄く怒っている。
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