収集
「ティアリス様がですか?」
「はい」
目の前に立っているエルミールさんに聞くと、頷きながら返事をする。
何でティアが?
そう思うが、
「わかりました。どこに行けば?」
俺はエルミールさんにティアの居場所を聞く。
「ティアリス様はご自分のお部屋にいらっしゃいます」
エルミールさんはそう言って歩いて行く。
俺もエルミールさんに付いていく。
エルミールさんの後ろを歩きながら、ティアの部屋はどこなんだろうと考える。
城の階段を上り、廊下を進んでいくと、前を歩いているエルミールさんが止まった。
「どうしたんですか?」
俺は急に止まったエルミールさんに声を掛ける。
すると、エルミールさんが廊下の壁に触れる。
すると、壁が動く!
見ると、細い廊下が壁の先に続いている。
「これって…」
俺がそう呟くと、エルミールさんが細い廊下を歩いていく。
俺も細い廊下に入り、進んでいく。
すると、いくつか扉がある。
3つ目の扉で、エルミールさんが止まる。
コンコン
「ティアリス様、お連れしました」
エルミールさんが扉をノックして声を掛ける。
すると、扉が開く。
「ありがとうエルミール。後は私に任せて」
「わかりました」
ティアがエルミールさんにそう言うと、エルミールさんは一礼して帰っていく。
「レスティンさん、どうぞ入って下さい」
ティアがそう言って、部屋に入っていく。
「失礼します」
俺は一言そう言って、ティアの部屋に入る。
中は思ったよりかは広いが、王女様の部屋にしては狭いと思ってしまう。
「どうぞ」
ティアは椅子に座り、向かい側にある椅子に手を向けてそう言う。
俺はティアに言われたとおりに、椅子に座る。
すると、
「突然呼び出してしまい、申し訳ありません」
そう言って、頭を下げる。
「いえ、そんな事ありません。頭を上げて下さい」
俺がそう言うと、ティアは頭を上げる。
「それで、どうして俺をここに?」
俺がそう質問すると、ティアの表情に影が差す。
どうしたんだろう?
俺がそう思っていると、
「実は、レスティンさんが城にいるヴァランス帝国の内通者を探しているのは知っています」
ティアがそう言う。
「…どうして」
俺がそう呟く。
「ある方から聞きました」
「ある方?」
「はい。ヴィクトルです」
「あの人ですか」
あの人、この依頼が秘密なのは知ってるんじゃないのか?
俺がそう思っていると、
「私は、皆を疑いたくはないのです。ですが、コレットや勇者様の皆様の危険を考えると、早めの対処が必要だと思いまして…。内通者の目星は付いているのですか?」
ティアが質問してくる。
「まだ、全然です…。ティアリス様はこの城にいる人達のスキルを把握してますか?」
「えぇ、大体は把握しています」
「闇魔法を使える者は何人いますか?」
「闇魔法…。私の記憶が正しければ、3人だけいます」
「教えて頂いても良いですか?」
「えぇ、1人は執事のアルノエです、まだ新人ですが頑張っていますね。2人目は騎士のケール、城門の門番をしています。3人目は、マドロラというメイドです。彼女は10年前にここに働きに来ましたね」
ティアが闇魔法を使える人達の名前を言うが、3人共知らない…。
できる限りその3人の動きを知らないと…。
俺はそう思いながら、更にティアに質問する。
「出来れば3人の特徴を教えて欲しいのですが…」
「特徴ですか?アルノエは緑髪の男性ですよ、まだ私と同じぐらいの年齢ですが頑張り屋ですね。ケールは騎士の割に細身でヒョロッとしています。マドロラは髪が短くて青色の髪をしています、左手にいつも包帯を巻いています。怪我ではないようですが」
緑髪のティアリス様ぐらいの歳の男、ヒョロッとした騎士で門番、青色の短い髪で左手に包帯をしているメイド…か。
「ありがとうございます、ティアリス様」
「いえ、よろしくお願いします」
俺がお礼を言いながら、頭を下げる。
『ねえシュウ?』
『どうしたの?』
リーシャが話しかけてくる。
『今周りには人がいないし、この子にシュウの真実を明かしましょう。そういう約束だったでしょ?』
俺の真実…。
俺は頭を上げると、ティアもちょうど頭を上げているところだった。
どうやらお互いに頭を下げていたらしい。
『そうだね』
俺は緊張しながら、目の前のティアを見る。
そして…。
『何て切り出せばいいんだろう!?』
リーシャに聞く。
『普通に実は…的な感じで良いんじゃないかしら?』
『わかった』
俺はティアを見る。
目の前の彼女は、俺と目が合うとニッコリと笑ってくる。
「あ、あの…ティアリス様!」
俺がそう言うと、
「何でしょうかレスティンさん?」
微笑みながら俺の言葉を待っている。
俺は、緊張しながらも言葉を続ける。
「その…、実は俺は…レスティンと言う名前ではないんです」
俺がそう言うと、少し驚いた表情をするティア。
「では、貴方は何て言う名前なんですか?それとも、何か訳があるんですか?」
「俺は…シュウと言います」
「シュウ…あぁ!コレットの護衛をして下さった冒険者の方ですね!」
俺の言葉に少し考える感じになったが、思い出したと言う様に手を合わせて、そう言った。
当たってるけど、違う…。
俺は、そう思いながら、更に言葉を続ける。
「ティアリス様、それは合ってはいますけど、まだなんです」
「まだとは?」
「ティアリス様…いや、ティア。俺、勇者に巻き込まれて召喚されたシュウなんだ!」
俺がそう言うと、ティアは完全に呆けた顔をする。
「え?勇者のシュウ…だって、彼は…ダンジョンの奈落に…え…?」
俺の放った言葉に、完全に戸惑っている。
「ほ、本当にシュウなのですか?」
「そうです」
「信じられません…。お世辞にも私の知っているシュウは冒険者で戦って生きていける程強くはなかったです」
「確かにそうですけど…」
実際にそう言われると心に刺さるが…。
「…私とシュウが熱く語り合った物を覚えていますか?」
「リ…初代勇者の伝説の本でした」
ティアの質問に答えると、彼女は瞳がウルウルとしていく。
「その時…私が好きだと言った戦いは?」
確か…。
俺はあの時の事を思い出す。
「…ユニオールの戦い」
俺がそう言った瞬間!
ティアが思いっきり立ち上がる。
反動で椅子が後ろに倒れるが、ティアは気にしていないようで、俺の事をガン見している。
涙を流して口に両手を当てている。
ゆっくりと俺に近づいてくる。
俺もゆっくりと立ち上がる。
そして、ティアは俺に抱き付いてきた!
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場違いとは思いますが、明日の投稿は16時にする予定なので、よろしくお願いします。




