表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初代勇者を腕に  作者: 雪羅
92/430

貫通

俺がティシール様の攻撃で地面に激突した瞬間、


『癒しよ』


リーシャが回復させてくれた。

俺が地面に倒れていると、


「お母様!何をしているのですか!?」


ティアが訓練場にきたようで、声が聞こえる。

すると、


「何って訓練に決まってるじゃないか」


少し遅れて地面に下りてきたティシール様が、大きな声でそう言った。


「騎士の皆が城内に駆け込んで来たから、どうしたのか聞いたらお母様が訓練場にやって来ると聞いて、慌てて来たのですよ!」


ティアは大きな声を出しながら訓練場に入って来たのか、声がどんどん近づいてくる。


「今日の仕事は全部やったぞ!」

「お母様が訓練なんてしてしまったら、我が国の騎士の皆が離職してしまいます!」

「そんな事で騎士を辞めるならその程度でしかないんだ!」

「お母様の力で何人の騎士が大怪我をしたと思っているのですか!」

「28人だろ!」


どうしよう…。

完全に親子喧嘩が始まってしまっている。

俺はそう思いながらも動かない方が良いかと考えて、未だに地面に倒れている。

すると、城の方から人がぞろぞろ出てくる。

見た感じ、先程まで訓練場で鍛練をしていた騎士の人達だ。

それからしばらく、ティシール様とティアの言い争っている声が、訓練場に響き渡っていた。

それから俺は、騎士の人に見つけて貰い、地面から起き上がる事が出来た。


「大丈夫かい?ティシール様は手加減しないからね」

「ありがとうございます。ティシール様はいつもあんな感じなんですか?」

「いや、ティシール様が体を動かすのは、機嫌が良い時か悪い時らしい」

「今回は悪いんですかね…」


俺が騎士と話していると、


「レスティン!帰るぞ!」


ティシール様の怒号が聞こえてきた。


「…死ぬなよ」

「不吉な事言わないでください」


騎士の呟きにツッコミを入れて、俺は城の方へ歩いて行くティシール様の後を追う。

城内に入ると、前を歩くティシール様はメイドの人にあれこれ命令している。

そのまま、仕事をしていた部屋に入る。

俺も後に続いて部屋に入ると、ティシール様は椅子に座って何やら考えている。

だが、考えているのが面倒になったのか、


「おいレスティン」


俺に声を掛けてきた。


「はい」

「私が言うのもなんだが、お前はヒトか?」


ティシール様の言葉に、


「どういう事ですか?」


と聞いてしまう。


「私の攻撃を何回も食らってそこまでピンピンしているのが、おかしい」


自分で言ってしまうんだ…。

俺はそう思いながら、


「自分は普通だと思いますけど…」


ハッキリとそう言うと、部屋の扉がノックされる。


「入れ」


ティシール様がそう言うと、扉が開いてメイドの人が3人入ってくる。

1人は、ティシール様の着替えの服を持っているようだ。

後の2人は、分厚い一冊の本と大きめのパンを持っている。

何だろうと思っていると、


「レスティン、今から着替える。目を瞑ってろ」


ティシール様が俺にそう言ってくる。


「また、殴りませんよね?」


ティシール様に質問すると、


「しない。早くしろ」


鎧を外して俺を睨みつけながらそう言ってくる。

俺は慌てて目を瞑る。

すると、


「失礼します」


と、メイドの人の声が聞こえて布が擦れる音がする。


『ねえシュウ』


俺が目を瞑っていると、リーシャが声を掛けてきた。


『どうしたの?』

『実は今、一瞬だけ闇魔法を使用した気配がしたの』

『本当!誰かわかる?』

『ごめんなさい…。それはわからないわ。でも、城門付近で感じたから、今行けばわかるかも』

『じゃあ、行こう!』

『あっ!目開けちゃ…』


俺はリーシャにそう言って、目を開ける!

すると目の前には、服を脱いで着替えている途中のティシール様の姿が…。

しかも、ティシール様は訓練で汗を掻いていたのか、メイドの人が布で拭いている。

つまり…、ほぼ全裸なのだ…。

綺麗な肢体に、大き過ぎず小さくもない胸…。

その先には、綺麗なピンク色のモノ。

全部は見えず、綺麗な金髪で少し隠れている…。


「…おい」


目の前のティシール様が、俺を睨みつけながら低い声を発する。

もはや俺には、目の前の人が人間には見えない…。

完全に魔神だ。

黒いモノが体中から滲み出ている幻覚を見てしまう程の、怒り。

逃げたくても、足が動かない…。


「…レスティン」


魔神様が俺の目の前に来る。

怒りの所為で羞恥心が無くなってしまったのか、はだけている体を隠さないで俺の前で仁王立ちする。


「…死ね」


瞬間!

俺が見たのは、全力で俺に拳を振るう魔神様の姿だった。

俺は見事に腹を殴られて、意識を失いそうになる…。

だが、ティシール様の攻撃は全て衝撃が体を貫通するだけで、吹っ飛ぶ訳ではない。

俺は床に倒れそうになるが、俺が倒れる前に俺の頭を掴んで倒れないようにする魔神様。

そして…、俺は思いっきり外に向かって投げられた。

城の壁に激突して、壁を破壊して外に投げ出される…。


『今回は治してあげない』


リーシャも怒っている所為で、怪我がすぐに治る事も無く、俺は地面に落下した。

見事に城門に落下したようだが、俺は痛みで意識が朦朧としている。

何だ何だと、俺の周りに人が集まってきた。

すると、


「君は!?大丈夫かい!」


俺の体を揺すってくる男性。

見た事がある。

確か名前は…。


「ヴィクトル…さん?」


俺がそう言うと彼は、


「意識はあるね!とりあえずコレを!」


そう言いながら、持っていた袋から市販されている回復薬を俺に飲ませてくれる。

苦いが、飲んでいくと体中の痛みが消えていく。

そうして2本目の回復薬を飲んで、完全に体の痛みは無くなり、立ち上がる事が出来る様になった。

俺が立ち上がると、周りにいた人達はそれぞれの持ち場に戻って行ってしまった。


「何があったんだい?上で破壊音がしたと思ったら、いきなり君が落ちてきて驚いたよ」


俺に聞いてくるヴィクトルさん。


「仕事で失敗してしまいまして」


俺がそう言うと、ヴィクトルさんが、


「何をしたんだい?」


俺に顔を近づけて聞いてくる。

俺が話そうとした瞬間、


「レスティンさん、ティシール様がお呼びです」


エルミールさんが城の2階辺りから声を掛けてきた。


読んでくださってありがとうございます!

評価、感想、ブックマークして下さると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ