人間?
この人って本当にただの人間なのだろうか…。
俺がそう思っていると、ティシール様は手首や足首を動かして準備運動?をしている。
それが終わると、今度は膝を曲げてしゃがむ。
そして、ジャンプをした…んだが、ティシール様が立っていた地面は砕かれていて、そこにティシール様はいなくなっていた。
上を見ると、青空にポツンと黒いモノが見える。
徐々に黒いモノが落ちてくる。
そして、またもや轟音が訓練場に響き渡る!
「ふぅ…準備終わり」
砂ぼこりから声が聞こえる。
徐々に砂ぼこりが晴れていくと、そこには良い顔をしたティシール様が立っている。
俺はその光景を呆然としながら見ていると、
「何やってるんだレスティン?早く準備をしろ」
俺を姿を見て、ティシール様がそう言ってくる。
「準備…ですか?」
ティシール様の言葉に困惑しながら、俺は聞き返す。
俺の質問に、ティシール様が睨みながら、
「そうだ」
と言ってくる。
俺は困惑しながらも、前の世界で行っていた準備運動をする。
そうして、準備運動を終わらせ、ティシール様に準備完了を知らせると、
「じゃあ、行くぞ」
ティシール様がそう言った瞬間!
少し離れた位置にいたティシール様が目の前に現れた!
「え?」
『シュウ!』
リーシャの声が聞こえた。
だが、突然の腹に伝わる衝撃にリーシャの声を聞いていられる余裕が無くなる!
「ぐぅぅ…」
あまりの痛みに、息が漏れる。
痛覚半減のスキルを持っている俺に、ここまでのダメージを負わせられるなんて…。
体に衝撃を与えられたが、吹っ飛ばされる事は無く、俺はその場で腹を押さえながら膝を地面に付けてしまう。
衝撃が体を貫通したぞ…。
そう思っていると、
「ほら立て、立て」
ティシール様が俺にそう言ってくる。
『ごめんなさいシュウ、私もいきなり仕掛けてくるとは思わなかったわ』
リーシャが謝ってくる。
『大丈夫だよ。謝らないで』
俺は、謝ってくるリーシャにそう言って立ち上がる。
「反撃して良いんだぞ。じゃなきゃつまらないしな」
ティシール様が俺にそう言ってくる。
「反撃して、後で不敬罪とかにしませんよね?」
俺がティシール様にそう言うと、ティシール様は笑いながら、
「そんな事はしない。レスティン、お前の全力をぶつけて来い!」
そう言ってくる。
俺はまず、魔視でティシール様が本当に魔法を使用していないか確認する。
リーシャが言った通り、ティシール様の周りの魔素に魔法を使用している反応は見られない。
つまりこの人は、何かのスキルの力でこれほどの強さを発揮しているのだろう。
俺がそう思っていると、またもや一瞬で俺の目の前に現れるティシール様。
だが、俺もリーシャも何回も同じ手を食らう程、気を許している訳ではない。
俺は僅かな時間に魔素を纏い、身体能力を上昇させる。
それと同時に、
『加速』
リーシャが加速魔法を使用してくれる。
ティシール様が、俺を殴ろうとしているが、それよりも速くティシール様の後ろに回り込む!
「魔拳!」
右腕になっているリーシャに魔素を纏わせて、殴る!
だが拳は、ティシール様には当たらず空振る。
そこにいたはずのティシール様がいない。
どこに行ったんだ?
そう思っていると、
『シュウ!上よ!』
リーシャが教えてくれる。
上を見ると、踵落としをしようとしているティシール様が近づいて来ている!
俺がその場から逃げた瞬間!
俺がいた場所にティシール様が落ちてくる!
轟音を立てて訓練場の地面が砕ける。
「なかなか良いな」
そう言いながら、砂ぼこりから出てくるティシール様。
「良いって何がですか?」
「最近は私が訓練しようとすると、皆逃げ出して行くからな」
そう言ってくるティシール様。
当たり前だよ…、普通の騎士がこの人の訓練に巻き込まれたら大怪我だ…。
俺がそう思っていると、
「だから、こうやって人と訓練するの久しぶりだな」
そう言いながら、俺の背後に現れるティシール様。
「レスティン、魔法は使えるか?」
後ろから声が聞こえる。
「はい」
俺がそう返事をすると、
「じゃあ、使え。じゃんじゃん使って来い」
ティシール様がそう言ってくる。
「良いんですか?」
「あぁ、気にするな。それに手加減したら、お前が…死ぬぞ」
ティシール様がそう言って俺の背後から抱き付いてきた!
そして、ティシール様がジャンプをする!
ティシール様がジャンプをするだけで大空に来てしまう。
すると、ティシール様が俺の左腕の二の腕を掴んで、地面に向かって俺を投げる!
俺はぐんぐん降下していくが、
『飛空翔』
リーシャが飛行魔法を使ってくれたおかげで、空中で止まる事が出来た。
上を見ると、ティシール様が落ちてくる。
ティシール様の表情は、俺が空中に止まっている状態を見て疑問に思っているのか、険しい顔をしている。
俺は、
『リーシャ、雷魔法を使って』
リーシャにお願いをする。
『どうしたのシュウ?』
『やってみたい事があるんだ』
『わかったわ』
リーシャはそう言って、
『雷牙』
魔法を使用する。
右手から、バリバリバチバチと雷が発生していく。
俺は魔素を操り、リーシャが使っている雷魔法の形を槍の形に形成する。
俺の行動に、ティシール様が驚いている。
俺は雷の槍を構えて、空を駆ける!
魔視を使用しながら、ティシール様に雷の槍で攻撃をしようとするが、ティシール様が空中を蹴ると、空中を飛ぶ!
やはり、魔法は使用していない。
俺も空中を蹴り、ティシール様を追いかける!
俺は、雷の槍をティシール様に向かって投げる!
槍は、ティシール様に追いつき当たりそうになるが、
「よっと!」
ティシール様が急に止まり、槍を蹴り飛ばす!
すると槍は、折れて消えてしまった。
あの人は何でもありなのか…。
俺がそう思っていると、ティシール様がこちらに向かってくる!
ここは空中だ、今なら魔震を使う事も出来る!
俺はそう思い、魔素を圧縮しようとした瞬間、
『ダメよシュウ!あれはやらせないわ!』
リーシャが怒って俺に言ってくる。
『じゃあ、どうすれば…』
俺がリーシャにそう言った瞬間!
ティシール様が蹴ろうとしているのか脚を構えている!
『シュウ!人の気配がするわ!あれに当たって地面に落ちるわよ!』
リーシャの言葉に、俺はティシール様の蹴りを無抵抗に喰らう!
『癒しよ』
攻撃が当たった瞬間に、リーシャが魔法を使用してくれる。
俺はそのまんま、地面に落ちていき激突した。
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