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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
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馬車

エルミールさんの言葉に固まってしまった。

だが、ルリィが俺にすり寄ってきてクンクンと俺の匂いを嗅いでくるので、意識はエルミールさんからルリィに変わる。


「どうしたのルリィ?」

「ご主人様の姿が変わってしまいましたが、匂いは同じなのか確認したくて…」


ルリィは、俺の質問に俺の匂いを嗅ぎながら答える。

それからルリィが離れていき、これからの事をエルミールさんと話をする。


「俺は何ていう設定で城へ行くんですか?」

「簡単な事です。私とこれからサンレアン王国へ帰ります。その後、宿屋の近くでルリィさんには馬車を降りて貰い、私と貴方で城へ行きます。まずは、城内にいる者達に挨拶をしてきて下さい。これは、どういう者が城内にいるという把握するための時間ですが、単純に少しの間ですが、仕事仲間になるのですから当然のことだと思います。それから貴方専用の部屋を用意しますので、部屋の確認をします。これも、城内にいる者達と同じ様な待遇ですから、怪しむ人は多くないでしょう。最後に、コレット様とティアリス様とお会いになってもらいます。ただし、コレット様とティアリス様には正体を隠して下さい。お2人との距離が近ければ怪しまれますから。内通者が、どこで何を見ているかわからない状態です。くれぐれも気をつけて下さい」

「…わかりました」


エルミールさんの説明が終わり、エルミールさんが馬車を取りに行ってしまった。


『どう思うリーシャ』

『内通者よりも、ヴァランス帝国が今度は何を企んでいるのかが知りたいわね』

「こういう時にアルがいると、強そうだね』

『アルのスキルを使えば一発でわかるものね』

『でも、今はリーシャと俺しかいないんだ。2人で頑張ろう!』

『そうね!頑張りましょう!』


エルミールさんが来るまで、リーシャと話していると、


「…寂しいです。ご主人様~…」

「よしよし」


ルリィが俺に抱き付いてくる。

頭を俺に擦り付けてくるので、頭を撫でる。


「なるべく早く終わらせてくるから、少し待ってて」

「うぅ~…」


ルリィを見ると、耳も尻尾もシュン…としている。


「ねぇルリィ、宿で待っている間に、頼みたい事があるんだけど」


俺がそう言うと、ルリィが俺の事を見上げてくる。


「今回の依頼は前金があったから、お金をルリィに預ける。それで、美味しい料理を作って欲しいんだ」


ルリィが俺の言葉にキョトンとしている。


「多分依頼が終わったら俺もリーシャも疲れてる。だから、美味しいものが食べたい。ルリィにはそれをお願いしたいな」

「ルリィ、それはルリィにしか出来ない事よ。私にも出来ないわ」

「ご主人様…、リリアーナ様…」

「ルリィ、これからはリーシャで良いわよ」


ルリィが俺と俺の右腕になっているリーシャを見る。

そして、


「わかりました!ご主人様とリーシャ様に美味しい物を食べさせてみせます!」


ルリィは勢い良くそう言った。


「ふふ、頑張ってね」


リーシャがそう言うと、


「任せて下さい!リーシャ様からご主人様を奪う勢いで作ります!」

「シュウは渡さないわよっ!」


ルリィがまた、とんでもない発言をする。

リーシャとルリィが色々言っているが、ルリィが元気になって良かった。

俺はそう思いながら、さっき渡された前金が入っている袋を開けると、


「……」


俺は固まってしまう。

そこには、紋章が入っている金貨が10枚。

確か、紋章が入っている金貨は王金貨と呼ばれていて、1つ100万ラティー。

つまりこの袋には、既に1000万ラティーが入っている。

また…こんな大金を…。

そう思っていると、


「どうしたんですかご主人様?」


ルリィが俺を見てそう言った。

それから、ルリィに700万ラティーを生活費と食料費で渡したら、顔を青く染めながら、


「…頑張ります」


と言った。

そんな事をしていると、馬車が俺達の近くで止まった。


「どうぞ」


中からエルミールさんがそう声を掛けてきて、俺達が乗る馬車という事に気づく。

それよりも、今回はエルミールさんが馬車を操縦していないんだな。

見ると、操縦している人はエルミールさんとは違い、何回か見たサンレアン王国の騎士の人が着けている鎧を身に纏っている女性だ。


「よろしくお願いします」

「お、お願いします」


俺とルリィは女性に声を掛けてから、馬車に乗り込む。

中に入ると、エルミールさんが座っている。


「どうぞ」


エルミールさんの向かい側に、俺が座りルリィは俺の隣に座った。

今回は見張りをしなくても良いのだろうか?

そう思っていると、


「何か考えているようですが、どうかしましたか?」


エルミールさんが俺に聞いてくる。


「いや、今回は見張りをしなくても良いのかなと思いまして」

「それなら大丈夫です。操縦している彼女は騎士団に所属しており、魔物との戦闘も慣れております。それに前回と違い、魔物の姿が減ってきています。おそらくは、魔波の前兆でしょう」


俺の質問にエルミールさんがそう答える。

それからしばらくして、昼食ということになり、馬車を止めて皆でご飯を食べた。

リーシャだけ食べられず、後でこっそりと食べてもらうしかない…。

昼食を食べ終えて、再び馬車に乗り込み出発をする。

魔物も本当に出ないようで、馬車を操縦している女性が戦っている様な音も無く、平和に馬車の中でユラユラと揺られていた。

そうしていると、眠くなっていき隣を見ると、ルリィは既に寝てしまっているようだ。

正面に座っているエルミールを見ると、真っ直ぐ俺を見ている。


「眠いのですか?」

「えぇ。つい気持ちよくて…。すみません」

「いえ、どうぞ寝て下さい」


エルミールさんが俺にそう言ってくれる。


「エルミールさんは眠くないんですか?」


俺がエルミールさんにそう聞くと、


「私は、職業柄夜以外は眠らない様にしているので…」


エルミールさんはそう言って、馬車に付いている小さな窓から外を見る。


「ですから私の事は気にせずに、どうぞお休みになって下さい」


外を見ながらそう言うエルミールさんが、何を考えているかはわからない。

ただ、どこか辛そうに見えてしまう。


「エルミールさん…、俺なんかが役に立つとは思えないですが、何かあったら相談に乗るんで、言って下さいね」

「…そうですね。貴方程度でも話せば楽になるかもしれませんね」


エルミールさんはそう言って、俺の事を見つめてくる。

どんな事を言われるかわからないが、エルミールさんの気持ちが楽に出来れば良いなと思いながら、エルミールさんの言葉を待つ。

そして、エルミールさんが口を開いて、


「とても…眠いです」


そう言った。


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