狩り
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ザールさんの言葉に、俺は頭が追い付かない…。
一緒に狩りにってどういう事だ?
「師匠!こんな奴を仲間にするなんて俺は反対っすよ!」
ヤニックがザールさんにそう言うと、ザールさんは、
「仲間にするとは言ってない。これは言うなれば、俺達がヴェルーズを離れた時に彼にここを任せられるか確認したいだけだ」
そう言った。
そうか、ザールさんは故郷の人達を探すために、本当なら1つの町に留まっている方がおかしい。
多分、ザールさんも心の底では、旅に出て故郷の人達を探したいのだろう。
「そういう事ですか」
ヤニックもザールさんの言う事に同意する。
そして、アルベールさんも、
「確かにそういう時の為に、彼の実力を知っておいた方がいいかもしれませんね」
そう言って、頷いている。
「アルベールさんもですか!?」
ヤニックが2人の意見を聞いて唸っている。
「チッ…まぁ、一回だけなら」
ザールさんとアルベールさんの2人の意見に仕方がないといった様子で、ヤニックはそう言った。
それから俺達はヴェルーズを離れて、魔物が生息している草原に来ている。
少し離れているが森も見える。
ちなみに、戦闘が出来ないルリィも今日は、連れて来ている。
理由は、まだ右も左も分からないヴェルーズに置いて行くのが心配だったからだ。
それに、リーシャもいるから、どんな状況にも対応出来る。
ルリィは、
「私も戦いたいです!!」
と言ってはいるが、基本的にルリィは戦闘できるスキルがない。
ルリィの使える魔法は、土と闇魔法だ。
両方とも魔法レベルⅡだと言っていた。
それとルリィの狐の獣人固有の変化というレアスキルがある。
土魔法は防御系の魔法らしく、ルリィは基本的に攻撃力が単純に無い状態なのだ。
ただ今回は、自分の身は自分でしっかり護る様にと言ってある。
「…いたぞ」
俺がそんな事を思っていると、ザールさんが声を出す。
ザールさんの視線の先には、血黒狼。
数は3匹で色は、赤黒い。
「まず、俺達の連携を見ていてくれ。行くぞ」
「俺達の力、目見開いて見てやがれ!」
「ヤニック、行きますよ」
ザールさんが合図をすると、2人が動き出す。
だが、どうやら基本的にはヤニックに攻撃させているようだ。
ザールさんは、大剣で血黒狼の攻撃を容易く防いでいるし、アルベールさんも華麗に血黒狼の攻撃を避けている。
が、アルベールさんの動きは綺麗すぎる…。
見ると、アルベールさんは自分の魔法で生み出した水を足に纏わせて、地面をスイスイ移動している。
どんな魔法でも使い方次第なのか…と思わせるほどの器用な魔法だ。
そして、ついアルベールの周りの魔素を見ると、
「ん?」
俺の予想では、アルベールさんの周りか足の魔素が青色になっているだろうと思っていたのだが、実際に見るとアルベールさん自体が青色になっている…。
どういう事だ?
そう思っていると、
「はぁぁ!!!」
ヤニックが最後の1匹の頭を刎ね飛ばす。
そう言えば、ヤニックは魔法を使ってないな…。
刀で血黒狼と戦ってたし。
どうしてだろ?
そう思っていると、3人が俺達の所まで帰って来る。
「どうだ新人!!俺の力は!」
帰ってきていきなりヤニックが俺に突っかかってくる。
「新人はこんな事できるか~?」
「やめろヤニック、次は君にやってもらいたい」
「援護はしますよ」
3人がそう言ってくるが、
「わかりました。あと。俺1人で大丈夫です。見ていて下さい」
俺はそう言って、3人から離れる。
ルリィが俺から少し離れた後ろにいる。
『シュウ、どうするの?』
『今回はリーシャの力は大丈夫だよ。俺の力だけで戦うよ』
『わかったわ。ただ、危なくなったら援護するわ』
『俺よりもルリィの方を気にしてあげてね』
『わかったわ』
リーシャと話していると、遠くの方から2匹の血黒狼が走ってくる。
色は、黒い。
さっきよりもある程度、強いだろう。
「新人!!助けて欲しかったらちゃんとお願いしますって言えよ~!」
後ろからヤニックの声が聞こえる。
お前にだけはお願いしないわ!
そう思いながら俺は、魔素を圧縮して剣を作り出す。
あと少しで、飛ばせる範囲に入る…。
俺も少しずつだが、飛距離などが伸びている。
そして、血黒狼が俺の攻撃が届く範囲に入って来る!
「魔翔剣!」
剣を飛ばして、血黒狼を斬り刻む。
あっけなく2匹の血黒狼を細切れになり、俺は少し物足りなさを感じながら3人の所へ戻る。
3人の顔を見ると、ザールさんは凄い驚いている訳ではなさそうだけど、それでも俺がここまでできる人間だとは思ってなかったのだろう、目がいつもより開いている。
アルベールさんは、
「ほぉ~…」
と、関心している様な声を出している。
そして、俺に散々絡んできたヤニックは、目は見開いているし、口も顎が外れるんじゃないかと思ってしまう程開いている。
「どうでしたか?」
俺がそう言うと、3人は俺の目の前まで来る。
そして、
「君はそこまで強かったのか…」
「なかなかやりますね~」
「は、はん!まぁ、良いんじゃないか?」
そう言って、俺を褒めてくる。
何だろう?
近くにリーシャやアルがいた所為なのか、俺はまだまだ全然だと思っていたが、この人達には俺って強く見えるのか?
それから俺達は、更に魔物を狩ろうとするが、なかなか魔物がいない。
「やはり…か」
ザールさんが呟く。
その呟きに、アルベールさんとヤニックの顔つきが険しくなる。
「どうしたんですか?」
俺がザールさんに聞くと、
「魔波の前兆だ。君も知っているだろう?」
「え、えぇ。はい」
ザールさんが顔を険しくしながら言ってくる。
『どういう事?』
『魔波の前は、必ず魔物は夜行性になって昼は巣や縄張りからほとんど出る事がないのよ』
『なるほどね』
『シュウは異世界から来たから知らないと思うけど、こっちでは皆知ってる事よ』
『この前兆からどのくらいで魔波って起きるの?』
『それは決まってないわ。短いと2,3日ぐらいで来る時もあるし、長いと1ヶ月ぐらい続く時もあったわ』
リーシャと話していると、森から人影が出てきた。
すると、俺達の方へ歩いてくる。
だが、近づいてくる人影は、どんどん大きくなっていく。
人じゃない…、魔物だ!
俺がそう思った瞬間、ザールさんが魔物の方へ歩いていく。
俺も加勢しようと歩き出そうとしたら、
「大丈夫ですよ」
アルベールさんが、俺の肩を掴んで止めてくる。
ザールさんの方を見ると、ザールさんは大剣を構えている。
そして、大剣から炎が燃え上がる!
「炎斬!」
ザールさんが大剣を振り下ろすと、炎の斬撃が魔物へ飛んでいく。
魔物に炎の斬撃が当たると、炎は魔物を焼き尽くす様に燃えていく。
そして炎が消えると、魔物の姿は無かった。
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