ルリィ
俺は畜舎に走って向かう。
畜舎に辿り着き中に入ると、皆自分のお腹や体を抱きしめて唸っている。
見ると、俺が蜥蜴にやった様に濃度が濃い魔素が子供達に強制的に吸収させられている。
「…どうにかしないと。このままじゃ皆が…」
俺は子供達の周りに集まっている魔素を霧散させていくが、状況は変わらない…。
ルリィの傍に行き、俺は彼女のお腹に手を当てる。
だが、俺には魔法を根本的に使えなくする事しか出来ない。
既に使われている魔法には、俺の力は効果はない…。
「俺には…どうしようもできないのか…」
今の俺には、子供達の周りの魔素を払うことしか出来ない…。
「うぅ…シュウさん」
「ルリィ!」
ルリィが目を開けて俺の名前を呼ぶ。
「シュウ…さん、主様…は?」
「大丈夫だよ、あいつはいなくなった」
「そ…うですか…。これで…私や皆みたいに盗みなんか…しなくても…いいんですね…」
ルリィはそう言って、微笑む。
「ルリィだってこれから自由なんだよ!ルリィもこれから普通の女の子みたいなれるんだ!」
俺がそう言うと、ルリィは微笑みながら、
「私には無理ですよ…。私はもう家族がいません…。私はこれからも…誰かに仕えて生きていくしか出来ません」
そう言った。
俺はルリィの笑いながら言う事に、驚く。
この子はこの年でここまで考えているのか…。
「じゃあ、俺がルリィの家族になる…」
「えっ…」
「俺がルリィの家族になって、ルリィを守る」
俺がそう言うと、ルリィは目を見開いて俺を見る。
「シュウ…さんが?」
「俺が皆を守ってみせる!だから、諦めるな」
俺がそう言うと、ルリィは顔を赤く染めながら微笑む。
「ありがとう…ございます」
ルリィが俺にお礼を言う。
だが、ルリィにこう言ったが今の俺にはどうすればいいのか解決方法が思いつかない…。
その瞬間、
「シュウ!?どこにいるの!?」
「お~いシュウ!返事しろ~!」
リーシャとアルの声が聞こえた。
どうしてここに?
そう思ったが、今はそんな事考えている余裕は無い。
「リーシャ!アル!ここにいるよ!」
俺は大声を出して2人を呼ぶ。
すると、走ってくる足音がして、畜舎に入って来るリーシャとアル。
「これって?」
「シュウ、なにがあったんだ?」
2人は畜舎の中の状況を見て、俺に聞いてくる。
「色々あって、この子達が違法に奴隷にされていたんだ!お願いリーシャ!解呪を!」
俺がそう言うと、リーシャとアルは俺の方へ来る。
リーシャが俺の所に来て、ルリィに触れる。
「解呪」
リーシャが魔法を使うと、ルリィの表情が苦しそうにしていた顔が穏やかになる。
その間にアルは、うずくまっている子供達を運んでくる。
その後は、リーシャが子供達の奴隷の証を解呪していく。
俺とアルが屋敷に入ると、子供が更に10人いた。
だが、何故かこの子達は苦しんでいる様子が無かった。
疑問に思っていると、アルが子供達を見て、屋敷の中にいた子供達は俺が殺した男に心を支配されてしまっていたらしく、もはや奴隷の証の力すら必要なかったらしい。
その子供達はもう、どうする事も出来ないらしい。
心の支配をどうにかする事は出来るらしいが、そうするとこの子達は正常の精神のまま、自分たちがあの男にしていたことを受け止める事になるのだが、アルがそれは止めておいた方が良いと言っていた。
この子達は、アルの知り合いの孤児院を経営している人に預かってもらえる様に頼むと言っていた。
俺とアルが戻ると、リーシャと一緒に俺と同じくらいの男女が畜舎から出てきた。
誰だろう?
俺がそう思っていると、リーシャが俺の方へ来る。
「シュウ、解呪は終わったわ」
「ありがとうリーシャ」
俺とリーシャが話していると、リーシャと一緒に出てきた男女がこちらに来る。
「あの、助けて頂きありがとうございます」
女の子が俺にお礼を言ってくるが、子供達の家族かな?
俺がそう思っていると、隣にいるリーシャが、
「シュウ、この人達がシュウが助けた子供だった人達よ」
「??どういうこと?」
俺にそう言ってくるが、意味がよく分からない。
「あの人の奴隷にされて、10歳になってしまいましたけど…。シュウ様とリリアーナ様のおかげで無事に元に戻りました」
女の子が俺とリーシャを交互に見ながら言ってくる。
そう言えば、男が戦っている時にそんな事を言っていたな…。
それからは畜舎から出てきた人1人1人にお礼を言われた。
どうやら皆家族がいるらしく、それぞれの故郷へ帰るらしい。
少しずつ皆が、屋敷から出ていく。
そして、最後の1人になった。
そう言えば、ルリィがいない。
俺はそう思って、周りを見るがルリィの姿は見えない。
俺がそうしていると、最後に残った女の子が俺の所へ来る。
「シュウさん、助けて頂きありがとうございます」
「あぁ、いえ、俺なんかなんも出来なかったです。皆の奴隷の証を解呪したのはリーシャです」
俺はそう言って、苦笑いをする。
結局、俺は何もできなかった…。
俺がそう思っていると、目の前にいる女の子は、
「いえ、私はシュウさんに助けられました。それに…」
俺にそう言ってきて、急にモジモジし始める。
どうしたんだろう?
俺がそう思った瞬間、
「シュウさんが私の家族になってくれるって言ってくれて…とても嬉しいです…」
女の子が爆弾を投下して来た。
空気が重くなるような錯覚をするが、気にしないで目の前にいる女の子に質問する。
「もしかして…ルリィ?」
「はい!」
目の前にいる女の子は満面の笑みで返事をする。
だが、ルリィは狐耳の獣人だったはずだ…。
目の前にいる子は普通の人間にしか見えない。
俺がそう思っていると、
「あっ!すみません。今は変化で姿を変えていたんでした!」
女の子はそう言って、胸の前で手を合わせると、女の子から煙が出てきて女の子の姿が見えなくなる。
だが、煙がなくなるとそこにいたのは、黄色というか濃いクリーム色の髪の毛に頭に見える大きめな狐耳。
そして、彼女の後ろにチラチラ見えるユラユラ揺れている尻尾。
「これが…私の姿です…」
そう言って微笑むルリィの笑顔は、今まで奴隷にされていたとは思えないほど、素敵な笑顔だった。
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