腐
頭を粉砕しても死なないなんて反則だろ…。
再生していく頭を見ながら、俺はそう思う。
仕方なく、蜥蜴から一度距離を取る。
「どうだい?おとなしく私の奴隷にならないかい?」
「俺は畜舎にいた子達と違って17歳だ」
「そんな事は私には関係ないさ。私の奴隷になれば、年齢は10歳で固定してしまうからね」
そんな事も出来るのか…。
「小さくなるつもりは…ない!」
俺は足に魔素を纏って空中へ走り出す。
「空を!?」
一気に加速して高度を上げていき、足に纏わせていた魔素を霧散させる。
そうすると当然、俺は下に落ちていく。
落下しながら、俺は体に魔素を纏う。
「魔拳」
魔素を圧縮して腕を作る。
そのままどんどん落下していき、あと少しで地面に激突する!
だが、俺が狙っているのは蜥蜴の体のど真ん中だ!
俺は拳を突き出して、蜥蜴の体の真ん中に突っ込む!
激しい音と衝撃!
俺はすぐにその場から離れる。
見ると、蜥蜴は胴体に大穴が開いている。
だが、俺はこれで殺せていないのはわかる。
頭を破壊して死なない生物がいるなんて…。
蜥蜴はまた回復していく。
どうすればこの蜥蜴を殺せる?
そうか、蜥蜴が回復しているうちに男をぶっ飛ばせばいいんだ!
俺はそう思って、回復している蜥蜴の体を飛び越えて男に突っ込む!
「魔拳!」
「私を狙うのはこの場合得策かもしれませんが、私に触れればどうなるかわかってますよね?」
だからこそ魔拳でこの男を殴るんだ!
だが、俺が男を殴ろうとした瞬間、横から蜥蜴の尻尾が俺の体に攻撃してくる!
「うおっ…」
突然の攻撃に俺は飛ばされるが、なんとか空中で体勢を整えて地面に着地する。
「危ないな…」
俺はそう呟いて、蜥蜴を見ると奴はまだ体が回復しきっていない状態で動いている。
「…魔翔剣」
俺はそう呟いて、魔素で剣を2本作り出して飛ばす。
剣を飛ばして、蜥蜴の両手両足を斬り落とす。
すると、蜥蜴は体勢を崩して倒れる。
更に体をバラバラに切断していく。
だが、切断して地面に落ちている蜥蜴の肉片がズルズルと地面を這いずりくっ付いていく。
この状態にしてもダメなのか…。
「君の魔法は変わっているね。ますます欲しくなってしまったよ」
勘弁してくれ…。
男の言葉に、俺は考える。
この男を倒せたとしても、その後はどうなる?
また、奴隷を捕まえてルリィや畜舎の中にいた子供たちの様な目に合う人が出てくるかもしれないんだぞ…。
なら、この男はここで殺した方が良いのか…。
人を殺したくない。
この気持ちは、まだ俺の心にある…。
だけど、ここで俺がやらないとまたあんな風にされる人が出てきてしまう可能性がある…。
俺がそう思っていると、蜥蜴が体を形成して鳴き声を上げる。
「どうしました?折角私に攻撃できる様にしたのに攻撃しないなんて」
男が、俺に微笑みながら言ってくる。
俺は、
「あんたを殺せば…子供達の呪印は解けるのか?」
俺に微笑んでいる男にそう聞く。
「解けますよ。私を殺せれば…ね?」
男の言葉に、俺は男と蜥蜴の周りの魔素を圧縮していく。
圧縮し過ぎると、この屋敷どころか周りの屋敷にも被害が出る。
微妙な調整が必要で、時間が掛かりそうだが蜥蜴は攻撃してきても単純な攻撃故に避けやすい。
男も蜥蜴に戦闘させているだけで、自分から攻撃して来る訳ではない。
だが俺がそう思っていた瞬間!
男が俺に斬りかかってくる!
マズい!
剣の刃が俺の頬を掠る!
それと同時に、微調整していた魔素が霧散していく。
「…チッ」
「私も戦えば君を捕らえられる確率が上がりますからね」
男はそう言って、俺に斬りかかってくる!
「魔拳!」
俺は男の剣を受け止める。
「君がどんな魔法を使っているかわかりませんが、一気に仕留めてしまいましょう!ギエル!」
男がそう言うと、蜥蜴が俺に飛びかかってくる!
「魔翔剣!」
飛びかかってきている蜥蜴を、飛ばした剣で空中で斬り裂く。
「はぁっ!!」
「ッ!?」
それと同時に、男がまた斬りかかってくる!
面倒くさい!
仕方なく、俺は魔素を小さく圧縮していき。
「魔拳!」
魔素で腕を作り、圧縮した魔素の塊を男の前に移動させる。
くらえ!!
「魔震!!」
その瞬間、俺に斬りかかろうとしていた男の体が斜めにズレる。
「ぐ…」
男が唸る。
そして、小規模な爆発!
それでも、俺は吹っ飛ばされる。
だが、地面に衝突することなく、足に集中して空中で体勢を整える。
どうなった!?
俺がそう思って男の方を見ると、男は倒れている。
「な…何が…」
だが、意識はあるようで小声だが声が聞こえる。
そう言えば蜥蜴は?
そう思って辺りを見ると、モゾモゾと蠢く物がある。
まだ、蜥蜴としての原型は無く、ただの肉の塊だ。
俺は男が、まだ動きそうに無いのを確認して、肉の塊に近づく。
そして、濃度の高い魔素を作ると、肉の塊に無理矢理吸収させていく。
すると、肉の塊は動きを活発になっていくが、それも10秒程で動きが鈍くなっていく。
肉の色の所為で、変色しているのが分からないな…。
そう思っていると、肉の塊からダクダクと血が流れていく。
前にやった一角馬と同じ現象だ。
だがそれだけでなく、どんどん肉が腐っていく。
気持ち悪くなるような臭いがする…。
多分だが、始末することに成功したのだろう。
俺は肉の塊から離れて、倒れている男の所へ歩く。
「わ、私の契約獣が…ギエルが負けることなど…」
「残念だったな、あの通り腐っていってるよ」
俺はそう男に言って、男の背中に魔素を圧縮して作った剣を突きつける。
「子供達を解放しろ」
「ふ…あれは、私の奴隷…所有物だ。解放することなど…」
男の言葉を、最後まで聞かずに背中に剣を突き刺す。
「ぐぅぅ…」
「なら、貴方を殺すしかないようだ」
俺はそう言って、剣を男の背中から抜き、再度突き刺そうと構える。
「私を殺せば、奴隷の証は消える…だが、私がタダで殺されはしない!」
「「「あぁぁぁぁぁァァァァァァァッ!!!!!!!」」」
男がそう言った瞬間、畜舎の方から子供達の叫び声が聞こえた!
「何をした!!」
俺が男に問いただすと、
「…命令に従わなかった時の状態にしてあげただけさ」
男はそう言った。
つまり、ルリィが苦しんでいた時の状態にしたって事か!
「ふふ…、しかも長時間苦しむようにして…」
俺は男の言葉を最後まで聞かずに男の首を斬り刎ねた。
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