畜舎
PCの不調で遅くなりました。
申し訳ありません。
主…、この子はメイドなのか?
「ルリィは、メイドなの?」
俺がルリィにそう聞くと、ルリィは首を振る。
「私は…奴隷です」
ルリィの発言に俺は疑問を感じる。
奴隷を許されているのは、ヴァランス帝国だけだったはずだ。
他の国は、奴隷制度は禁止されている。
俺はルリィを見る。
腕や首に奴隷の証である腕輪や首輪は無い。
「ルリィ、その…奴隷の証明になる物とか付けてない?」
俺はルリィにそう聞くと、ルリィは自分のお腹に触れて、
「ここに刻まれています」
そう言った。
「刻まれているってどういうこと?」
「グリニオン帝国では奴隷は禁止されています。ですので、パッと見ではわからないように体に奴隷の証を刻み付けるのです」
「そういうことか」
つまり、あの時ルリィが苦しんでいたのは、命令を完遂出来なかったからだろう。
ルリィも見ると、この子が幸せそうには完全に見えない。
「ねぇルリィ?それを消す方法は知ってる?」
俺がルリィにそう聞くと、ルリィは首を振る。
「主様が言うには、これは呪いと同じようです。命令に従えなかったら死ぬ事もあり得ると…」
呪い…。
この場にリーシャがいれば解呪が可能なんだが…。
いや、リーシャに頼り過ぎるのは良くない。
もう1つ、おそらくだが方法がある。
ルリィの主に自発的に契約を解除させる方法だ。
「ルリィ、君の主の所に連れて行って欲しい」
俺がそう言うと、ルリィは首を振る。
「…大丈夫です。ルリィは大丈夫です」
俺はその様子を見て考える。
何かあったのかもしれない。
「もしかして、俺みたいに君に主人の所に連れていって欲しいって言ってきた人がいる?」
「…はい」
ルリィにそう聞くと、頷きながら返事をした。
「その人は?」
「ルリィと同じ様に奴隷にされてしまいました」
ルリィは、涙目になりながら言ってくる。
つまり、奴隷はルリィ1人という事ではないだろう…。
「ルリィは奴隷にされている人の数はわかる?」
俺がそう聞くと、ルリィは小さな手を広げて指を曲げていく。
「全員の数はわかりません。最低でも15人はいます」
15人…、それほどの奴隷を買える人間なんて限られている。
この国の貴族だろう…。
つまり、護衛などがいるはずだ。
「大丈夫だよルリィ、俺がなんとかする」
俺がそう言うと、ルリィは首を振る。
「…私の所為でこれ以上、人が奴隷にされてしまうのは嫌です」
「大丈夫だよ、俺一応これでも強い…と思う」
俺はそう言ってルリィの小さな手を握る。
「ね?」
ルリィが俺の方を向く。
俺はルリィの目を見つめて、
「俺を、ルリィの主人の所に連れていって」
ゆっくりとはっきりとルリィに言う。
すると、ルリィは呆けた顔をした後、頬を赤く染めて、
「…はい」
そう言った。
ルリィに案内されて着いたのは、大きな屋敷だ。
少し賑わっていた場所から離れている所で、周りの建物も屋敷が多い。
だが、周りの普通の屋敷と違い、この屋敷は門番がいない…。
ルリィが先に屋敷の敷地に入っていく。
俺もその後に付いていく。
ルリィは、屋敷の裏に歩いて行く。
畜舎がある。
すると、ルリィは畜舎の前で止まる。
「もしかしてここって?」
「…はい」
ルリィが畜舎に入っていく。
俺も一歩遅れて畜舎に入ると、そこには目を瞑りたくなる光景が広がっていた。
畜舎の中は、ルリィぐらいの女の子と男の子が10人程いる。
皆、ルリィの様にやせ細っており、虚ろな目をしている。
女の子はワンピースの様な服を着ているが、男の子は上半身裸の状態だ。
だが、男の子の腹を見ると、腹に何かの印が刻まれている。
これがルリィ達を苦しめている呪いか…。
俺はすぐに畜舎から出て、屋敷に向かう。
すると、
「私の屋敷に何の用かね?」
そう聞こえて、上を見ると窓から50代位の男がグラスを片手に俺を見ている。
「貴方がここの屋敷の主人ですか?」
「あぁ、立派だろう?」
俺が質問すると、男はそう言って、グラスを持っていない腕を広げる。
「畜舎の中を見ました」
「あぁ…あれを見てしまったか…」
俺がそう言うと、男は残念そうな声を出す。
だが、男の顔は笑っている。
「では、君を殺すか、奴隷にするしかないようだね」
そう言うと、男は窓から飛び降りる。
地面に着地すると、男の全体が見える。
あまり筋肉質な体はしていない。
むしろ、スラリとしていて細い。
「ふむふむ、近くで見ると変わった顔立ちをしている。私好みですよ」
コイツ…、男が好きなタイプか…。
「俺は将来を誓った女がいる。他を当たってくれ」
「男同士の良さを教えてあげますよ」
男はそう言った瞬間、剣を召喚して俺に斬りかかってくる!
「魔拳!」
腕を作り出して男の剣を受け止める。
「ん?何が?」
男にもやはり魔素は見えていないようで困惑している。
俺は腕を横に振るい、男の態勢を崩す。
俺はそのまま左手に剣を出した瞬間、
「ッ!」
左手に痛みが走り、男から一度距離を取る。
左手を見ると、掌が切れて血が出ている。
何が起きたんだ?あの男の仕業か?
俺がそう思って男を見るが、
「一体何が…」
男は何やら困惑している。
男がこれをやったとは思えない。
「これじゃあ、ダメですね」
男の声が聞こえて、見ると、俺を睨みつけている。
「何がダメなんだ?」
「私に触れた瞬間、貴方に隷属の呪印を刻むつもりでしたが…。触れる事も触れさせる事も出来そうにない…」
確かに…、俺は魔素を使っての攻撃方法だから、直接的に触れる事があまりない。
「これしかないですね」
男はそう一言呟く。
そして、
「我と契約せし獣よ、我の敵を食い散らかし、死骸を我に献上せよ!」
魔法を詠唱する。
すると、男の後ろに扉が現れる。
「召喚、堕竜ギエル!」
扉が開き、中から姿を現したのは大きな蜥蜴だ。
だが、体の所々から血が出ている。
「やれ!ギエル!」
男が蜥蜴に命令すると、鳴き声を上げながら突進してくる!
「魔拳!」
俺も蜥蜴に向かって走り、俺に喰らい付こうとする蜥蜴の頭を殴る!
だが、思ったより体が柔らかく、俺の魔素の拳が蜥蜴の頭を粉砕する。
「思ったより弱…」
俺がそう呟いた瞬間、粉砕したはずの蜥蜴の頭が治っていく!
「ははっ!ギエルはその程度では、殺せませんよ」
男が笑いながら俺に言ってくる。
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