獣人
町中を歩いていて思ったのだが、俺は2人がいる家までの道を覚えていない…。
順番通りに歩かないと辿り着けないって事は間違ってはいけないって事だろう。
仕方ない…、帰りが遅くなって2人に探してもらうしかないようだ。
あまり、お金もないしどうしよう…。
そう思っていると、
「待ちやがれ~!!」
と怒鳴り声が聞こえてきた。
声がした方へ向くと、小学生低学年位の女の子が追いかけられていた。
しかも、頭には獣耳。
女の子は必死に逃げている。
だが、前に見た子より足は遅い。
服から出ている腕や脚も細く、あまり食べれていないのだろう。
「きゃっ!」
追いかけていた男は女の子の細い腕を掴んでしまった。
すると、女の子の手にはキラキラと光る宝石の類だろう物が出てきた。
「離して!!」
「離すのはお前の方だぁ!」
男はそう言って、女の子が持っていた宝石を取る。
「返して!!」
「ふざけるんじゃねえ!!」
男はそう言って、女の子を殴ろうと腕を振り上げる。
流石に、あんな女の子が殴られるのはダメだ!
俺はそう思い、足に集中して駆ける。
魔素を纏うと、俺の身体能力が少しだけだが上がることがわかった。
「ひっ…」
「おとなしく殴られろ!!」
俺は一気に距離を縮めて女の子と男の側まで辿り着く。
俺は男の振り下ろそうとしている腕を掴む。
「盗まれた物は取り返したんですよね?殴らなくても良いですよね?」
俺がそう男に言うと、
「なんだお前!このガキの仲間か!?」
「いえ、そういうわけではないです。でも、こんなやせ細っている子供を殴られそうになって止めに入りました」
「このガキが俺の店で盗みを働いたんだ!何されようが自業自得だろう!」
「盗みはいけないです。それは認めますけど、物は取り返したんです。それで引いて下さい」
「嫌だね!腹の虫が治まらねえ!邪魔するならお前からぶちのめしてやる!」
男はそう言うと、俺が掴んでいる方とは逆の腕で殴りかかってくる。
仕方なく魔拳で防ぐと、男は驚愕の表情をする。
「なんだ!何かに触れたぞ!」
そうか、魔素は普通の人には見えないんだった。
男は更に何回も殴ってくるが全て防ぐ。
「ぜぇぜぇ…クソ!何だってんだよ…」
「満足してくれました?」
「チッ」
男は舌打ちをして掴んでいた俺の腕を振り払うと、足早に去っていった。
俺は男が追撃して来ないのを確認して、女の子に声を掛ける。
「大丈夫?」
「あ、ありがとう…ございます。あっ…」
女の子は俺にお礼を言って立ち上がる。
だが、よろけてしまい俺の胸に身を預ける体勢になってしまう。
「すみません…すみません」
俺の胸で体を振るわせながら謝ってくる。
「大丈夫だよ」
俺は女の子の頭を撫でながら出来るだけ優しく話す。
女の子の髪は所々固まったりしている。
この耳は…狐か?
女の子の頭から生えている耳の形を見ながらそう思っていると、
「うぅ…」
女の子が泣き出してしまった。
「ごめんね!」
俺は慌てて女の子の頭から手を離すと、女の子は頭を振りながら、
「違います…優しくされたの…嬉しくて…」
そう言いながら、泣いている。
その言葉を聞いて、もう一度女の子の頭を撫で始めた。
それからしばらくして、女の子は落ち着いて話してくれる様になった。
だが、流石に道のど真ん中で話すわけにはいかないので少し移動して人通りが少ない道に入る。
「助けてくださってありがとうございます」
「ううん。でも盗みは良くない事だよ」
「…はい。すみません」
俺がそう言うと、女の子の頭の耳が倒れる。
どうやら反省しているようだ。
すると、隣からグゥゥという音が聞こえた。
隣を見ると、顔を赤くしながらお腹を抑えている女の子。
お腹が空いてるのだろう。
「少し待っててね」
俺は女の子にそう言って大通りに出て売店を探す。
丁度良い所に、串焼きを売っているお店を発見する。
そこで、5本の串焼きを買って女の子の所へ戻ると、
「うぅぅ…」
女の子は自分の体を抱きしめて苦しそうに唸っている。
顔にも汗が流れている。
「どうしたの!?」
俺は女の子の隣に買ってきた串焼きを置いて、女の子の体に触れようとすると、
「触らないで!」
大きな声で止められた。
すると、女の子の頬の色が黒くなっていく。
この現象って…。
俺は女の子の体を見る。
すると、女の子に濃い魔素が吸収されている。
そして、原因は女の子の体にあるようだ。
詳しく調べるのは後にして、今はこの状態を何とかしないと!
俺はそう思い、女の子の体の周りにある濃い魔素を霧散させていく。
すると、女の子の息が整ってくる。
魔素が濃い状態だと、変色することを知っていたから何とか対処できた。
俺は大丈夫そうになっている女の子を見て安心する。
だが、どういうことだろう?
「すみません」
「もう大丈夫?」
「はい、でもいつもはもっと長いのに…」
女の子は不思議そうにしている。
だが、俺がやったと言う必要もないだろう。
「これ、食べな」
俺は自分の体をペタペタ触っている女の子に、さっき買った串焼きを渡す。
「良いんですか?」
「うん。君に買ってきたんだよ」
だが、女の子は食べようとしないで、俺の事を見ている。
「食べていいんだよ?」
「その…貴方も一緒に、食べて欲しいです」
そう言って俺の事をガン見してくる。
「わかった」
俺も1本串焼きを手に取り、肉を食べる。
俺が食べるのを確認してから、女の子も食べ始める。
だが、一気にがつがつと食べていく。
その姿を見ながら、俺も食べ進める。
俺が1本だけ食べて、後は女の子が食べたんだが、1本1本食べる毎に俺の許可を待っていた。
頭の耳の所為もあり、完全にペットの様に見えてしまう。
「そう言えば君、名前は?」
俺が女の子に聞くと、
「ルリィって言います」
「ルリィ、俺はシュウって名前だよ」
「シュウさん」
「そうそう」
ルリィは俺の名前を言いながら頷いている。
「ねぇルリィ?」
「はい」
「何で盗みなんかしたの?確かにルリィは痩せているからあまり食べていないように見える。でも食べ物を盗むんならある程度わかるんだけど、ルリィが盗んだ物って宝石でしょ?」
確かに宝石の方が高く売れるから盗むのは分かるが、食べ物を盗む方が宝石に比べれば簡単に見える。
だが、どうしても疑問がある。
ルリィの体に起こった現象がだ…。
俺がそう思っていると、
「私の…主が盗んで来いって命令してきて…」
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