防具屋
店主に教えてもらった通りに歩いて行くと、噴水が見えた。
そこには、売店などが出ており、活気が良い。
俺はそこを右に曲がり、店の看板を見ていく。
「…あった」
すぐに見つけることが出来た。
確かにヴェルーズの防具屋より大きい…。
そう思いながら、俺は防具屋の扉を開いて中に入る。
中を見ると、普通そうな防具や高そうな防具もある。
「いらっしゃいませぇ~」
すると、奥から赤い長髪の綺麗な女性が出てきた。
この人がジスレットさんの双子のお姉さんのジスレーヌなのか?
「すみません。これを」
紹介状を渡そうとすると、
「恋文は受け取らない主義なのぉ~」
そう言って、胸の前で手を横に振る女性。
確かに綺麗な人だから、そういうのを送る人がいるかもしれないが、俺は違うぞ…。
「違います。ジスレットさんから紹介状を書いてもらったんです。ここで防具を買いたくて…」
俺がそう言うと、女性は頬に手を当てて顔を赤くしながら、
「あらあら、そうだったのねぇ~。申し訳ありません」
女性はそう言って頭を下げる。
少しして頭を上げると、紹介状を受け取る。
女性は手紙を開いて目を通している。
「間違いなくジスレットのお店の名前ねぇ~。ようこそ、私がジスレットの姉のジスレーヌです~」
女性はそう言って俺の左手に手を伸ばしてきて、俺の左手を握ってくる。
「うんうん…なるほどねぇ~」
女性は俺の左手を握って目を閉じながら頷いている。
何だろう?
しばらくして、俺の左手を離すジスレーヌさん。
「欲しいのは、身動きが取りやすい軽装備が良いのねぇ~。予算はどの位ですかぁ~?」
「100万ラティー位です」
「それなら良い物が買えるわよぉ~」
ジスレーヌさんはそう言って、商品棚の方へ行ってしまう…。
俺もジスレーヌさんを追いかけて行くとジスレーヌさんが胸当てを手に持っている。
「これなんてどうかしらぁ~?」
そう言って胸当てを俺に手渡してくる。
受け取った胸当ては、前に使っていた胸当てよりは重量があるが、着ける分には余裕だろう。
「それはね~、世界一硬いと言われているオルベリル鉱石を食べる竜のアゴの下に1枚だけ生えている逆鱗を使用しているのよぉ~。硬さは世界一だと思うわぁ~」
「そんなに凄いんですか…」
あまりの凄い物にそうとしか言えない…。
「それとぉ~…」
ジスレーヌさんはそう呟きながら、また違う商品棚に向かって行ってしまう。
慌てて追いかけると、今度は普通のシャツとズボンを手に持っている。
だが、色々な物を取っては戻している。
「これが良いわぁ~」
そう言って俺の前に持ってくる。
「大きさも良さそうねぇ~」
どうやらサイズとかを見ていたようだ。
その服は、普通そうに見えるが、やはり違うのだろうか?
俺がそう思っていると、ジスレーヌさんが俺の顔を見て、
「これは普通の服じゃないわよぉ~」
と言った。
どうやら完全に顔に出ていたようだ。
「これはどんなモノなんですか?」
「これはぁ~、様々な環境でも生きていける蛇竜の皮を使用しているのぉ~。これ一着でどこでも行けるわぁ~」
また凄い服が出てきた…。
これ、お金足りるかな?
「これで良いかしらぁ~?」
「はい」
これだけ強い装備なら当分大丈夫だろう。
そう思っていると、
「そうだぁ~、左腕に篭手も買いましょ~」
「えぇ!?」
これ以上だと本気でお金事情が…。
だが、俺の心配など知らないジスレーヌさんは、またもどこかへ行ってしまう。
俺も行こうとしたら、
「そうだわぁ~」
そう言いながら、ジスレーヌさんは戻ってきてお店の奥へ行ってしまった。
お店の奥にはいけないので待っていると、カウンターの向こうにいくつか置いてある防具が見えた。
その中の1つが篭手なのだが、とても気になる。
それを見ていると、ジスレーヌさんが戻って来た。
「これ、仕入れたんだけどぉ~…。どうかしらぁ~?」
ジスレーヌさんが持っている篭手は頑丈そうに見えない。
だが、それよりも俺はさっきから見ていた篭手の方が気になる。
「すみませんジスレーヌさん。せっかく持って来てもらったんですけど、俺あの篭手が気になるんです」
俺はそう言って、置いてある篭手を指さす。
俺の指さした篭手をジスレーヌさんが見て、顔をしかめる。
マズい…、あれは商品じゃないのか?
そう思っていると、
「この篭手は、誰にも使えないわぁ~」
「使えない?」
「そうなのぉ~。この篭手はぁ~」
そう言いながら、置いてある篭手を取り俺の目の前に置く。
「この篭手は、初代勇者の着けていた篭手だと言われているわぁ~。その所為なのか誰が着けても効果が出ないのぉ~」
初代勇者…つまり、リーシャが着けていた篭手。
「効果?」
「この篭手はぁ~、敵の魔力を吸い取って自分自身を強化する事が出来るのよぉ~。言い伝えではねぇ~」
「本物ですか?」
「本物よぉ~、ティオレット家の紋章が入ってるものぉ~」
「これ買います」
「でも~、それは君には使えないわよぉ~」
「それでも欲しいです」
俺の言葉に、ジスレーヌさんは困惑しながらも了承してくれた。
「じゃあ~、合計で160万ラティーよ」
やはり、過ぎてしまったか…。
こうなったら分割払いに…。
「でもぉ~、妹の紹介だからぁ~…。140万ラティーで良いわぁ~」
「え?良いんですか?」
「胸当てが100万に服が30万、篭手に30万だけどぉ~、服と篭手を20万で良いわぁ~」
「意外と篭手が安いんですね」
「効果が発揮出来れば1000万以上はするんだけどぉ~、発揮できなければ普通の篭手だものぉ~」
意外と辛口だな…。
「それに、初代勇者が着けていたのかも本当かはわからないものぉ~」
「でも良かった。それなら払えます」
俺はそう言って、140万ラティーを渡す。
「丁度ねぇ~」
そう言って、商品を渡してくる。
「ここで着けても良いですか?」
「良いわよぉ~」
ジスレーヌさんに許可をもらい、俺はジスレーヌさんが見えない様に商品棚の裏に行って着替えた。
少し重いが、慣れてしまえば問題ない…。
そう思いながら、ジスレーヌさんの所へ行くと、
「よく似合っているわぁ~」
と言われた。
「ありがとうございます。また装備整えたい時はここに来ます」
「楽しみに待っているわぁ~。高い装備が欲しくてお金が無かったら強制的に私の依頼とか受けてお金を稼いでもらうわよぉ~」
ジスレーヌさんに見送られて店を出る。
最後に怖い事を言っていた様な気がしたが…。
ま、まあ、お金は少ししか残らなかったが、良い買い物が出来たと思う。
俺はそう思いながら、リーシャとアルがいるあの家に戻ろうと歩き出す。
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