二重構造
バルナルドという名前は知らないが、ヴィリヴァというのは知っている。
古代に栄えた都市の名前だったはずだ。
「ヴィリヴァ…。魔導具という点では繋がるけど、他の接点がわからないわ…」
リーシャが考えている。
俺は部屋から出て、他の部屋を調べてみる。
1階に下りて家具とかの引き出しを開ける。
だが、何もない。
仕方なく、部屋を出てもう一部屋に入ると、書斎なのか空っぽになっている本棚と椅子、そして…机だ。
とても気になる机を見る。
俺の経験上、ここには何かがあると叫んでいる。
ゆっくりと引き出しを開ける。
何もない…様に見せかけて引き出しの底を確認する。
すると、引き出しの底は二重構造になっている。
「やっぱり…」
俺は板を外すと、そこには箱。
何も知らない俺が勝手に物を持つのは止めておこうと思い、一度2人がいる部屋に戻る。
見ると、アルとリーシャが扉に張り付いて何か調べている。
「リーシャ、アル」
俺が2人に声を掛けると、2人が振り返る。
「どうしたのシュウ?」
リーシャが俺に聞いてくる。
「なんか箱を見つけたんだけど…」
俺がそう言うと、2人が一瞬で俺の目の前にやってくる!
「「どこ!?!?」」
「し、下の書斎みたいな部屋」
俺がそう言うと、2人は走って下に下りて行った。
俺も後を追う。
さっきの部屋に戻ると、2人は箱を開けようとしていた。
そして箱を開ける。
何故か2人が止まっている。
何が入っているのか気になる。
2人の傍に行き、俺も箱の中を見るとそこにはバッジの様な物が入っていた。
バッジには、紋章みたいなものが刻まれている。
俺には価値が分からないな…。
「なぁリーシャ…これって」
「えぇ…ヴィリヴァの国章よ」
どうやら良い物だった様だ。
「よくやったシュウ!!」
そう思っていると、アルがまさかの抱き付いて来た!
「ア、アル!」
感極まっているのか抱きしめてくる力も強い!
だが、だが何よりも俺の胸に当たるこの柔らかい感触は…。
「アル!シュウから離れて!」
リーシャがアルを引っ張って離す。
「ちょっと!?アル!?」
だが、今度はリーシャに抱き付いている。
おぉぅ…、可愛い女の子が抱き合ってるのもなかなか良いものだ…。
それからしばらく、リーシャはアルに抱きしめられていた。
「す、すまねぇ…」
ようやく冷静になったアルが俺とリーシャに謝ってくる。
「全くアルは…昔から嬉しすぎると抱きしめちゃう癖直した方が良いわよ」
「おぅ…」
「まぁまぁリーシャ。それだけ嬉しかったんだから仕方ないよ」
「シュウは甘いわよ…」
リーシャが目を細めて見てくる。
「それよりシュウ、何でここに物があるって思ったんだ?」
「え?」
アルが俺に聞いてくる。
「だってここにあるってわからないと、こんな所探さねぇだろ?」
「あぁ。俺もよく前の世界で隠してた事があったからね」
「そうなのか?どこでも同じ事考える奴がいるんだな」
「…そうだね」
俺の場合はちょっとエッチなゲームだったけど…。
そう言えば、俺の部屋の不思議な現象で1週間毎に隠していた物が変わってたな。
俺は弄ってないし、買った事がない物まで入っていた。
確か、年上幼馴染に監禁される系に義理の妹との純愛モノ。
そして、俺の趣味ではない義理の姉を辱めるモノ…。
何かの陰謀を感じさせる物ばかりだった…。
そんな事は置いておいて、
「それって何か役に立つ?」
俺は2人に聞いてみる。
「はっきりとはわかんねぇな~」
俺の質問にアルがそう返してくる。
それからしばらく、アルとリーシャは2階の部屋で扉の調査をして、俺はまだ何か仕掛けが隠してあるか探す事にしたが、皆成果は無かった。
仕方なく、今日はここに泊まる事になり、ある程度の掃除を3人でしてから、夕食を食べて眠りに着いた。
翌朝、俺が起きると2人の姿は無く、俺は2人を探すと例の部屋で見つけた。
2人共、楽しそうな顔をしている。
「ん?シュウ、起きたの?」
「おはようリーシャ」
リーシャが俺に気づいて声を掛けてくる。
俺はリーシャに挨拶をする。
その後にアルも俺に気づいて朝の挨拶を交わす。
今日は2人共、例の扉を調べる事にするらしく、俺には出来ることが無い。
そこで、俺は1人で紹介状を書いてくれたジスレットさんのお姉さんが営んでいる防具屋を探す事にした。
それを2人に言うと、リーシャが一緒に行くと言い始めてしまった。
リーシャを納得させて俺は家を出ようとすると、
「シュウ、危ない事はしちゃダメよ」
「うん」
「変な人に付いていっちゃダメよ」
「う、うん」
「婦館にも行っちゃダメよ」
「行かないよ」
何だろう?
リーシャが俺の母さんみたいになっている。
俺達の会話を見ていたアルが、
「リーシャ、そこまで心配しなくてもシュウなら大丈夫だろ」
「何が起きるかわからないもの…。心配するのは当然よ!」
リーシャとアルに、
「いってきます」
と言って、家を出る。
リーシャに渡された袋を背負い左右の道を見るが、どちらに行けば良いか分からない。
だが、立ち止まったままでも、ここじゃあどうにも出来ないと思い、足に集中して魔素を踏み空を駆ける。
走っていると、人通りが激しい道を見つけた。
そこから少し離れた人通りが無い道に下りる。
そこから俺は、人通りの多い道へ出る。
「安いよ!採れたての黄金林檎だよ!」
「今だけ特別価格!この伝説と呼ばれている初代勇者の付けていた真龍の鱗で作った鎧を売ってやろう!」
「この飲めば、この世の全ての女に迫られる薬はいらんかい?」
賑わってるけど、怪しい物が多くない?
あと、リーシャの私物っぽいけど多分それ、偽物でしょ…。
俺は、比較的普通そうな人に話しかける。
「すみません。この辺に防具屋さんはありまんか?」
俺がそう言うと、店主であろう男の人が、
「タダで情報は渡せねぇなおい!」
と、睨みつけてくる。
普通そうな人でコレか…。
そう思いながら、
「わかりました。買いますからお勧めは?」
俺がそう言うと、男はある物を見せてくる。
回復薬に見えるが、液体の色が違う。
「これがお勧めだぜ。女に飲ませれば何でも言う事を聞かせられ…」
「いりません」
男の説明に被せる様に言う。
「男なら…」
「いりません」
「お前みたい…」
「いりません」
俺が全く買うつもりが無いのを察すると、
「これはどうだ?」
男は諦めて、別の商品を進めてきた。
「これは?」
「痛み止めだ。お前の腕、たまに痛むんじゃねぇか?」
男は俺の右腕を見る。
今はリーシャもいないから俺の右腕は肘から先がない。
だが、実は痛みは無い。
リーシャのおかげで痛みは感じなくなっている。
それにスキルで痛覚が半減されているし。
「あぁ。それなら買うよ。いくら?」
「要らねえよ。頑張れよ」
男はそう言って、俺に薬を渡してくる。
実は親切なのか?
「あと、防具屋だろ?それならこの道を真っすぐに行くと、噴水がある広場に着く。そこを右に行ってすぐだ」
「ありがとう」
「これからは、うちの店を贔屓しろよ。もう商品上げたりしないからなぁ!」
「わかりましたよ」
もう一度、店主にお礼を言って俺は教えてもらった通り、噴水がある広場を目指して歩き出す。
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