可能性
それから俺は、アルに先に帰ってもらった。
本当はアドバイスとか聞きたかったが、今回試そうとしているのは、アルにも当たってしまう可能性があるほど、魔素のコントロールが大変だ。
俺はまず、2つの魔素を圧縮して作ったボールを空中に浮かせる。
それを俺の周りをクルクル浮かせる。
次に3つ目のボールを作る。
ここまではまだなんとかなっているが、これを浮かせようとしたら、先に浮いていた2つの内の1つが落ちてしまった。
俺はその場に座り、ボールを全て消した。
新しく一気に魔素を圧縮していき、ボールを作っていく。
全部で5つのボールが出来る。
「…浮かさなければ、5つか」
俺は独り言を呟きながら、ボールを作っていく。
地味な作業だが、この作業に慣れていかないと次に進めない。
それから俺は、1人で黙々と魔素を圧縮したボールを作っていく。
そうしていると、少しずつ効率良くボールが出来る様になっていく。
結果、一気に8つのボールを作る事が出来た。
それと同時に、ボールが消えるまでの時間も少しだけだが伸びた。
多分、1分くらいは霧散することなく維持出来ると思う。
だが、問題はここからだ…。
もう一度、魔素を圧縮して8つのボールを作る。
そしてボールを浮かせようとすると、3つが浮かび上がり5つが消えてしまう。
どこまで出来るか確認した後、森に近づく。
「相変わらず禍々しい木だ」
俺は1本の木の近くに立つ。
いつも通り魔素を圧縮してボールを作る。
そして、木に向かって飛ばす。
すると、木に当たった瞬間、木を少し揺らしてボールは跳ね返ってきた。
このままだとあまり攻撃力がなさそうだ…。
今の俺には魔素を圧縮して作った物はあまり大きく形を変える事が出来ない。
魔素の腕を伸ばしたら消えていってしまったのは、これが理由だ。
だから、最初から形を作った物を飛ばすようにしないと。
俺はそう思い、飛ばす物を作っていく。
それは、腕1本分サイズの剣の刃の形に圧縮していく。
ボールよりも時間が掛かる。
薄く、鋭く、切断力を高められるように。
そして、自分で納得できる形にすることが出来た。
完成した刃を浮かせ、木に向かって全力で飛ばす。
すると、刃は木を切断して返ってくる。
重々しい音を立てながら、木は倒れる。
見えない斬撃。
これなら、戦闘でも役に立つだろう。
俺は更に2つの刃を作り出して、木に飛ばしていく。
木の枝を刈り、細かく輪切りにするように木を切断していく。
細かく動かすのが、意外にも集中しなければならず、一回休憩する。
その場に座り、刃を作る。
ボールよりも作るのに時間が掛かってしまう。
早く作れるように、練習しておかないと。
どんどん作っていく。
すると、久しぶりに体が怠くなっていく…。
ステータスカードを見ると、
<ステータス>
シュウ・ハヤマ
Lv:13
職業:初代魔神の弟子
年齢:17
MP:100
スキル:魔素視認Ⅲ、魔素操作Ⅲ、魔力操作Ⅲ、痛覚半減
MP切れ…。
あんなにいっぱいあったMPが切れるまでやってたのか…。
仕方なく、一度戻ろうと立ち上がろうとしたが、気持ち悪くなり諦める。
そういえば、前に買ったMP回復薬があったはずだ。
腰に付けているポーチに手を入れる。
あった、戦闘していないのに飲むのも気が引けるが仕方ない。
青色の薬品を飲み込む。
苦い…。
多少楽になったが、今動いてもすぐにMP切れになってしまうだろう。
それからしばらくして、俺はまた木を切り刻んでいく。
2つの刃でより細かいコントロールをしていく。
が、
「あっ!」
刃と刃がぶつかる。
刃にひびが入る!
その瞬間、刃が爆発した!
衝撃波が襲いかかり俺は倒れる…。
何が…。
そんな事を思っていると、
「シュウ!大丈夫!?」
「おいシュウ!無事か!」
転移して来たであろうリーシャと、四肢を変化させて走ってきたであろうアルが倒れている俺を見つけて駆け寄ってくる。
「大丈夫だよ。ちょっと失敗しただけ」
俺がそう言うと、2人は安心した顔になる。
「いきなり爆発音がしたから、驚いたわ」
「本当だな。何があったんだ?」
「そうね。教えて欲しいわ」
聞いてくる2人に俺は、さっきまでしていた事を2人に話した。
「それは圧縮された魔素同士がぶつかり合ってひびが入って爆発したのね」
「だな。操作は慎重にやらないとダメだぞシュウ」
「うん。心配掛けてごめん」
そう言って2人は森に帰っていく。
それを見送ってから、俺はある考えが頭から離れない。
あの爆発を攻撃に利用できないかと。
サンレアン王国騎士団団長の1人、レデリックさんは爆裂魔法を使っていた。
そして、彼は英雄と呼ばれる程強い。
俺にも、あの爆発を上手く使えるようになれば、強くなれるのではないか…。
2人には止められたが、俺は次に練習することを決める。
それからまた、刃を作っては飛ばして木を切断していく。
すると、3つの刃を操る事に成功した。
更に操作が難しくなっていくが、攻撃数が変わり、どんどん木を細かく出来る。
それからも木を切り倒していき、夕方になってきた。
夜までここにいるのは危険だと思い、切り刻んだ木を薪になると思い担いで、森に入る。
テントに戻り、アルに持って帰って来た薪を渡すと、
「ありがとうよ!」
と言ってもらえた。
それからは、いつも通り3人で夕食を食べて眠る。
翌朝もいつも通りだ。
だが、
「シュウ、これ持って行って」
今日はリーシャにさまざまな回復薬とリーシャが育てた果物を渡された。
多分、昨日の爆発で心配してくれたのだろう。
「ありがとうリーシャ」
リーシャにお礼を言って、出発する。
森から出て、辺りを見渡す。
昨日の様に、魔物がいた。
2つの頭があるトカゲだ。
図鑑で見た気がするが、忘れてしまった…。
数は5頭。
出来るか分からないが、俺はゆっくりと魔物に近づく。
魔物が俺に気づいて鳴き声を上げる。
それと同時に魔素を圧縮して2つの刃を作り出す。
トカゲが俺に向かって走ってくる。
俺の攻撃範囲に入った!
その瞬間、刃をトカゲに向かって投げる!
トカゲ達は目の前から飛んで来ている剣の刃に気づかず、首が飛んだ。
残りの3頭は突然首が飛んで死んだ仲間を見て、足を止める。
都合が良い事に、3頭並んでいる。
俺は新しく刃を飛ばして、トカゲ達の首を一気に刎ね飛ばした。
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