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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
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願望

自分のステータスカードを見て驚愕する。

MPの数値が異常なのだ。


「この数値って…」

「それがリーシャの魔力を注いだ結果だな」


アルがそう言ってくる。


「どういう事ですか?」


俺がアルに聞くとアルは、


「シュウの体にある魔力を増やすためにリーシャの魔力を注いだんだよ。これでシュウの魔力は多くなったな」


そう答えて、アルはリーシャが触れていた俺の胸の中心に触れる。


「いくぜシュウ!」

「お願いします」

「リーシャよりも酷くなるからな」

「え?…ッ!?」


アルがそう言った瞬間、体中を針で刺されている様な鋭く激しい激痛が全身からする!


「ハッ…ハッ…」


呼吸も浅く小刻みになる…。

じんわりと脂汗が出てくる。

そして、また俺は意識を失った。

目を覚ますと、真っ暗だ。


「リーシャ?アル?」


俺は2人の名前を大きな声を出して呼ぶが返事は無い。

どういう事だ?

アルならともかく、リーシャが俺を置いてどこかに行くことはないはずだ。

そんな事を思っていると、突然辺りが光りだして、俺は目を閉じる。

光りが落ち着いたようでゆっくりと目を開けると、そこは自分の部屋だった。

どうして部屋に?

何で自分の部屋なんかに…。

そして、これは夢だと気づく。

まだ、俺は目が覚めていないのか…。

すると、部屋の扉がノックされる。


「お兄ちゃん!起きて!」


扉の向こうから春乃の声が聞こえる。

俺は扉を開けると、制服姿の春乃がニコニコしながら、


「おはよう!早くしないと学園に遅れちゃうよ!」


そう言ってくる。

学園?

俺はリーシャとアルと一緒に目的の場所に行かなければいけないんだ。


「春乃、俺は…」

「早く着替えてね!」


俺が言いたい事を聞かないで春乃は下の階に下りて行ってしまった。

俺は自分の格好を見ると、寝る時にいつも着ているジャージだった。

仕方なく、いつもの学園指定の制服を着て1階に降りると、


「おはよう柊、朝ご飯食べちゃいなさい」


母さんがリビングに入って来た俺に気づいて声を掛けてくる。


「おはよう、母さん」


母さんに返事をして朝食が置いてあるテーブルの椅子に座る。

既に父さん、姉さんと春乃が座って朝食を食べていた。


「おはよう皆」


俺がそう言うと、


「おはよう」

「おはよう…柊」

「私はさっきおはようしたよ」


と3人が返してくる。

俺は仕方なく用意されていた朝食を食べ始めるが、味がしなかった。

完全に夢なんだな。

そう思いながら朝食を食べていると、


「ご馳走様、行ってくる」


父さんが食べ終えて仕事に行ってしまった。

その後、姉さんと春乃が朝食を食べ終える。


「…柊、早く学校行こ」

「のんびりしてると遅刻するよ」


朝食を食べ終えた2人が俺にそう言ってくる。

俺は止ってしまった。

姉さんと春乃が俺と登校すると言うのがあまりにもあり得なくて。


「う、うん。すぐ食べるよ」


俺はそう言って味がしない朝食を食べて3人で家を出た。

我ながら理想の夢だな。

姉さんと春乃と仲良く登校なんて出来るとは思えなかったし。

そんな事を思っていると、


「3人ともおはよう」


先輩が待ってくれていたのか道の端に立っていて俺達を見ると、そう声をかけてきた。


「おはよう怜華」

「おはよう怜姉ちゃん」


姉さんと春乃が先輩に挨拶をする。


「おはようございます、先輩」


俺も先輩に挨拶をする。

それから先輩も一緒に登校することになり4人で学園に向かう。

学園まで先輩と姉さんと春乃の3人が話しているのを俺は後ろで眺める。

現実にこんな事なんて中等部の時までで、高等部になってからは姉さんと春乃が先に行ってしまって俺は1人で登校していたからある意味、新鮮ではあった。

そんな事を思っているうちに学園に着き、皆と別れて俺は自分のクラスに行く。

教室に入ると、俺を除く全員が席に座っている。

俺も自分の席に座る。

俺が座った途端、担任の先生が教室に入って来る。

時計を見ると、少しだけ余裕に着いたはずなのに、時計は既に遅刻ギリギリの時間だった。

流石夢、訳が分からない事が起きるな。

そんな事を思っていると、担任の先生はいなくなっており数学の教師が教室に入って来た。

数学の教師が、


「この間やったテストを返すから呼ばれたら取りに来い」


と言って順番に名前を言っている。


「葉山」


俺の名前が呼ばれて席を立ち、教師の所へ行く。

答案を返されて点数を見ると、96点だった。

ありえない、俺は良くて70点ぐらいしか取れない。

悪ければ赤点ギリギリの60点だ。

その瞬間、今まで動いていたクラスの人達がピタッと止まる。

どういう事だ?

そんな事を思っていると、教師が立っていた所に俺が立っていた。


「よぉ」


だが、姿は完璧に似ているが一部違うところがある。

髪が白く、肌は黒い。

そして、角がある。

魔族の様な俺の姿だ。

でも、声は完全に俺の声だし、顔も俺だ。

いや、ちょっと向こうの方がイケメンかも…。


「これが俺の理想だった」


俺と同じ声で俺に話しかけてくる。


「お、お前は何だ?」


俺は俺に似ている奴にそう言うと、


「俺はお前の願望の姿だよ」


笑いながら俺に言ってくる。


「願望?」

「そう、願望だ。姉さんと春乃と先輩と仲が良く学園に一緒に登校できて学力もこの学園にいるには十分。これがお前の願望の姿だよ。そして…」


俺の願望の姿と言っている奴が手を上げると、周りの景色が学園の教室からガラリと変わる。


「ここは…訓練場?」

「そう。サンレアン王国の訓練場だよ」


俺が呟くと、奴が答えてくる。

周りには訓練している姉さんや先輩もいる。


「柊の魔法が見てみたい」


訓練していた姉さんが俺に似ている奴に言っている。


「うん、姉さん」


奴はそう言うと、手を前に出す。


「太古の炎よ、全てのものを無に、炎翔竜陣」


奴が魔法の詠唱をした瞬間、奴の周りから竜の形をした炎が出てくる。

炎の竜は高く舞い上がり空で消える。


「柊、そんな魔法を使えるの」

「そうだよ姉さん、これなら魔神を殺せるよ」


奴が姉さんに向かってそう言う。

確かに、あれほどの魔法を使えたらと思っていた。

こいつは、完全に俺の願望の姿だ。

皆と仲が良く、頭も良いし、魔法も使える。

俺が思っていると、奴が俺の方へ来る。


「俺の力が必要だろ?この手を握れ。そうすればお前は…いや、俺はもっと強くなれる」


そう言って奴は俺に左手を伸ばしてくる。



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