初代魔神
とてもいい笑顔でそうだぞ!と言うアルネウスさん。
魔神ってあの魔神だよね!?
俺が1人でパニックになっているとアルネウスさんがリーシャに話し掛ける。
「おいリーシャ、シュウは何であんなにあわあわしてるんだ?」
「貴女の発言が信じられないのよ」
「何でだ?」
アルネウスさんが不思議そうな顔をする。
「とりあえず、目的の場所に向かいましょう」
リーシャがそう言うと、俺とアルネウスさんの手を握る。
「転移」
一瞬で宿屋の部屋から外に出る。
「っておい!オレまだ返金して貰ってないんだよ!」
「返してあげるから黙りなさい」
「まぁ、返してくれるなら良いけどよ…」
アルネウスさんが魔神ってどういう事だ?
リーシャは魔神を倒したって…、あれ?
「もしかしてリーシャ、魔神を殺してはいないって事?」
「そうね。意外にも魔神があっさりとしていてね…」
そう言ってリーシャは冷たい眼差しでアルネウスさんを見る。
「いやなぁ~!ぶっ飛ばされたから負けを認めて改心したんだよ」
「魔神って改心するものなんですか?」
俺がアルネウスさんに聞くと、
「アルネウスが異常なのよ。2代目魔神は最後の最後まで私を殺そうとしていたし」
「あいつは陰湿だったなぁ~」
2人は思い出話に花を咲かせているが内容が凄すぎる。
「2代目魔神?」
気になるワードが聞こえて、2人に聞いてしまう。
「ん?あぁ、2代目魔神の時は勇者が使えなくてなぁ」
「負けちゃったのよね」
そうだったのか…。
「でも、そんな事になってるなら今頃この世界は大変な事になってたはずだよね?」
俺がそう聞くと2人は苦笑いしている。
「その、2代目勇者が倒されちゃった後、私とアルネウスの2人で消滅させちゃったのよ」
「あの時は力加減が難しかったな~。世界滅ぼしちまいそうになったな」
「あれはアルネウスがいけないと思うわ」
「いや、リーシャの魔法がデカ過ぎるのもいけなかったんだよ」
もうこの2人の話は規模が大きすぎる…。
それから3人で歩いて行く。
「そう言えば、転移の魔法ではいけないんですか?」
「いや、行けるんだがな…、オレは歩いてこの世界を旅したいんだ。悪いけど付きあってくれ」
「昔からこうなのよ」
リーシャはそう言ってため息をつく。
「良いと思いますよ。実際に歩いて見るのは良い事だってどこかで聞いた事があります」
「おっ!良い事言うじゃねぇか!」
俺がそう言うとアルネウスさんはガハハと笑う。
何というかアルネウスさんは姉御肌なところがあるな。
「シュウ…」
俺がそんな事を思っていると隣を歩いていたリーシャが声を掛けてくる。
「どうしたのリーシャ?」
「その、私が魔神を倒した伝説の勇者じゃなくて幻滅した?」
リーシャはそう言って不安そうな顔をする。
「そんな事ないよ。逆に凄いなと思うよ」
「凄い?」
「うん。だってあの魔神を仲間にしちゃうんだもん。普通じゃできないよ」
「そうかしら?」
リーシャが首をかしげる。
俺はリーシャの右側に移動してリーシャの右手を握る。
「それに俺はそんな事でリーシャの事、幻滅しないよ」
「ありがとうシュウ」
リーシャが俺の左手を握り返してくれる。
俺とリーシャがそうしていると、
「お2人共仲良いなぁ~!」
アルネウスさんが俺とリーシャの握り合ってる手を見て言ってくる。
アルネウスさんの目がキラキラしている。
「こう思うとリーシャに男ができるなんて思わなかったもんな~」
「そうなんですか?リーシャは魅力的な女性だから周りの人がほっとかないと思うんですけど」
「いや、リーシャを知っているオレ達はリーシャは万年生娘だと思ってたからな」
「どういう意味よ」
リーシャがアルネウスさんを睨みつける。
アルネウスさんはリーシャの視線に気づいて、固まっている。
「いや…、レクシシュとも話してたんだぜ」
「あの幼女と?」
「レクシシュさん?」
俺が2人にそう言うと、2人はお互いの顔を見合わせて内緒話をし始める。
「これって言っていいのか?」
「良いでしょ?私はシュウに隠し事はなるべくしたくないのよ」
「おいおい、なら今リーシャがシュウにしている事も言わねえといけねえだろ?」
「ちょ!?それは!」
何故かリーシャが慌てている。
俺はそんな2人から目を離して周りの景色を見る。
草原に向こうの方には山が高く聳えている。
山の手前には森が広がっている。
綺麗な景色だな…、こんなに平和そうに見えるのに今、この世界は危険な状況になっている。
そんな風に思えない程だ。
隣から2人が何かを言い合っているが、今はこの景色を堪能しよう。
そう思い、しばらくの間周りの景色を見て楽しんだ。
その後、夜になってしまい今日は野宿になってしまった。
そして、俺はアルネウスさんに聞きたい事を言う。
「アルネウスさん」
「ん?どうした?」
アルネウスさんはリーシャが取り出した食事を食べながら俺の言葉を待っている。
「アルネウスさんのスキル、全知の有効範囲を聞きたいんですけど…」
「オレのスキルのか?この世界のありとあらゆる事を知っている。それこそ特定の人物の考えている事すらも。それは過去、現在、未来と時間も関係ない。だが、未来は変わる事もある。シュウや勇者が来るなんて未来は無かったからな」
「未来に関しては不確定って事ですか?」
「その通りだ」
そう言ってアルネウスさんはガツガツと口に食糧を入れていく。
「シュウ、お前が聞きたいのは2つだろ?」
「…はい」
アルネウスさんには全てがお見通しって事か。
「答えてやるよ。まず1つ、魔神の復活を阻止できるかだがオレが知っている未来では阻止できて無い」
「理由とかありますか?」
「あ~、お前に言って良いのか分かんねぇけど…。今のサンレアン王国にいる勇者の誰も魔神の復活を阻止しようなんて思ってねぇんだよ。ましてや、魔神を殺そうなんてな」
え?皆、魔神を殺そうと思ってない?
俺がそんな事を思っていると、
「あぁ、全員ほぼ諦めてる。後は、まぁ…色々やることで魔神なんて二の次っぽいぞ」
「え?そうなんですか?」
「残念ながらな」
アルネウスさんはそう言ってくる。
だが、これではマズくないか?
このままでは魔神が復活してしまう。
「それと次が本題だ」
アルネウスさんは持っていた食糧を食べきり真剣な表情で俺に言ってくる。
「シュウ、お前が強くなる方法とお前に起きている事だ」
読んでくださってありがとうございます!
ブックマークして下さった方ありがとうございます!
評価、感想、ブックマークされると嬉しいです!




