修羅場??
ヴァランス帝国を後にした俺はリーシャに魔法を使ってもらいエルフの森の所まで転移した。
だが、エルフの森に入るためにはエルフと同行しなくてはいけないのを思い出して四苦八苦していた。
『どうしようリーシャ…』
『入れないなら無理しないでもう帰りましょうよ』
『えぇ~…それはどうなの…』
リーシャに相談していると、
「迎えに来た」
エルネットさんが森からやって来た。
そしてその後ろにはリザベルトさんもいる。
「良かった…どうしようかと思ってたんですよ」
「…来て」
エルネットさんはそう言って森に入って行く。
リザベルトさんも一緒にだ。
俺もその後に付いていく。
「……」
「……」
前を歩いている2人は俺の方をチラチラと見ながら歩いていく。
『何で見られてるんだろう?』
『なんか嫌な予感がするわ』
『嫌な予感?』
リーシャが何か不安な事を言ってくるが俺にわからないので気にしないでおこう。
そうしながら森を抜けエルフの村に到着する。
すると、エルフの村の全員が俺を歓迎している。
皆、ありがとうと言いながら俺に触れてくる。
俺は何も言えない状態で皆に揉みくちゃにされている。
しばらく、皆に触られ続けた後エルネットさんが戦いに勝利した事の宴をする事になり、皆準備をし始める。
俺は一度エルネットさんの家に帰る。
「大丈夫?」
エルネットさんが俺にそう言ってくる。
「うん、ヴァランス帝国の王に会う事も出来たし今後エルフに手を出す事をしないって契約させて来ました」
「…あと、これも…」
「ん?」
エルネットさんは言いながら腕に付けている紐に触れている。
「これのおかげで、私は呪いに罹ることもなく無事でいられた」
「無事で良かったよ」
俺がそう言うとエルネットさんは紐に触れながら、
「これは貰っても良いの?」
「良いですよ」
俺がそう言うとエルネットさんが微笑む。
やはり、エルネットさんは笑っている方が綺麗だ。
『…シュウ、私は?』
『リーシャもだよ。リーシャはどんな時でも可愛いし綺麗だよ』
『…ふふ』
リーシャが少しヤキモチを妬いているのか俺に聞いてくるが俺が素直にそう言うとリーシャは満足そうだ。
「シュウ君、エルネット、準備が出来たわよ」
そんな事をしていると、リザベルトさんが呼びに来てくれた。
『君?名前呼び?』
リーシャが何か言っているが言っている事がよく分からない。
リザベルトさんに付いて行くと、村の広場で皆座って俺達を待っているのかこちらを見ている。
広場に行くと、何故か中心に案内される俺…。
周りのエルフ達に見られて恥ずかしい…。
両隣にはリザベルトさんとエルネットさん。
「皆、今回私達を救ってくれたシュウ君よ!」
リザベルトさんが皆に向かって大きな声を出す。
すると、皆大きな声を出して俺の事を称えてくれている。
恥ずかしいが右手を少し上げると、更に盛り上がって行く。
『恥ずかしい…』
『こういう時は堂々とするのよ、シュウ』
リーシャにそうアドバイスされるがそう簡単にできるものでもない。
それから、エルフの皆は俺にお礼を言いに来たり食べ物をどんどん持って来たりと嬉しかったが大変だった。
だが、一番嬉しかったのは俺が助けた奴隷にされていたエルフ達がお礼を言いに来た時だ。
俺は人を傷つけ酷い事をしたが、この人達の親族にもお礼を言われて、して良かったと思えた。
それから、夜が明けるまで宴は続いた。
俺は途中で抜けてエルネットさんの家に帰り眠ろうとベッドに入り目を閉じる。
すると、少しして俺がいる部屋に入ってくる気配がした。
足音は2つ、つまりエルネットさんとリザベルトさんだろう。
すると、何故か俺のベッドが沈む。
誰かが俺のベッドに乗っているという事だろう。
何で?
「あれ、シュウ君がいるわ~?」
近くでリザベルトさんの声が聞こえる。
俺のベッドに乗っているのはリザベルトさんだったか。
リザベルトさんは猫撫で声を出している。
酔っているのだろう。
「エルネット、ここにシュウ君がいるわよ~」
「母上…はしたないですよ」
「シュウ君寝てるみたいよ?」
「……本当?」
「ほら~、この通り~」
そう聞こえると、掛けていた布が剥ぎ取られる。
何が起きてるの?
「ほら、寝てるでしょ~?」
頬を突かれる。
「…本当」
今度は頬をさわさわと撫でられる。
何!?何が起きてるの!?
『……シュウ…』
『違うんだよリーシャ!俺は何もしてないよ!』
リーシャの声が暗く怖い…。
「可愛いわね~」
「…うん、可愛い」
2人に頬を突かれたり撫でられたりする。
『…シュウ、わかってるわよね』
『な、何が…でしょうか?』
『興奮したら…』
『しませんしません!!』
リーシャに脅されながらエルネットさんとリザベルトさんに頬を弄られるという何とも言えない状態だったが、その後2人は眠くなったのかそれぞれのベッドに入って眠りについた様だ。
『…シュウ…』
『リ、リーシャ?』
『帰ったらわかってるわよね?』
『は、はい…』
その後、俺はリーシャに怒られながらも眠った。
翌朝、というかもう昼頃だった。
起きると家には誰もいなかった。
俺は家を出るとリザベルトさんを筆頭にエルフ達が広場に集まっていた。
俺は広場に行くとリザベルトさんに声をかける。
「おはようございます」
「シュウ君、おはよう」
「どうしたんですか?」
見ると、皆雰囲気が暗い。
「これよ」
リザベルトさんが持っているのは手紙のようだ。
「それは?」
「フェリアンからの手紙よ」
「何て書いてあるんですか?」
「シュウ君が問題を無事に解決しエルフの村が安全になって良かったと書いてあったわ」
リザベルトさんの言葉を聞いて俺は疑問に思う。
何故、フェリアンさんは俺が解決したのを知っているのか、と。
「あと、これはシュウ君に渡してと書いてあったわ」
リザベルトさんはそう言って更にもう一つ手紙を出して俺に渡してくる。
内容は、
「今回、エルフの村の問題を解決して頂きありがとうございます。エルフの皆も喜んでいると思います。ここからが手紙を出した理由なんですが、お2人に来客が来ています。出来れば戻ってきてください。戻れない場合、迎えに行きます。フェリアン」
意外にあっさりとした内容だ。
だが、来客?誰だろう?
そう思っているとリザベルトさんが、
「帰るのよね?」
そう言ってくる。
「はい」
俺がそう言うと皆、寂しそうな顔をする。
リザベルトさんも涙目だ。
後ろにいるエルネットさんも視線が下に落ちている。
「お世話になりました」
「また、来て」
エルネットさんが俺に言ってくる。
エルフの皆も同じ事を言ってくれる。
「はい。また来ます」
「エルネット、見送りを」
「はい」
それから、俺とエルネットさんは村を出て森を歩いている。
すると、
「これ」
エルネットさんが俺に何かを渡してくれる。
見ると、木材に何か刻印されている。
「これは?」
「証。それがあればエルフの村に来れる。ハイエルフにしか作れない」
「そんな大切なものなんだ。ありがとう、大切にします」
「うん」
そうしているうちに森を抜けた。
エルネットさんが立ち止まる。
俺は彼女と向かい合う。
「また逢う日まで」
「はい、また来ます。今度はお土産でも持っていきますよ」
「楽しみにしている」
そう言ってエルネットさんは微笑む。
「エルネットさんは笑っていた方が綺麗ですよ」
「え…あ、ありがとう」
「はい。じゃあまた」
俺はそう言って歩き出す。
「またね…シュウ」
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