強迫
俺は嫌な視線を感じる。
この国では完全にエルフは下と見られているようだ。
「おいおい、どうしたんだよあのエルフ」
「ご主人様に捨てられたんじゃないか?」
周りの人間は俺を指さし笑っている。
そして、俺の目の前まで来る者も現れた。
「おいおい奴隷の分際でこの国を自由に動けると思ってるのかぁ~?どう思うお前ら!」
目の前の男は周りの野次馬に向かってそう叫ぶ。
それを聞いていた野次馬も、
「そうだそうだ!」
「さっさと捕まえちまえ!」
と俺に向かって物を投げてくる。
『…シュウ』
『俺もここまでイラッとしたのは久しぶりだよ』
『同意見ね』
俺はリーシャとそう話し、目の前の男を睨みつける。
俺の視線に気づき俺を罵倒してくる。
「エルフの分際で人間様にその目は何だァ!!」
男はそう言って殴りかかってきた!
『硬壁』
リーシャが魔法を使ってくれる。
男の拳が俺の腹を殴りつけるが、俺には痛みが無い。
逆に殴りつけてきた男の方が苦痛に顔を歪める。
「アァァァァ!!手が!手が!」
見ると、男の拳は皮膚が破けて血が出ているし肉どころか中の白いものすら見えている。
俺は苦痛で顔が歪んでいる男の顔面を左腕で殴りつけると、男は吹っ飛んでいき建物に激突して止まる。
更に追加で俺は右腕を振るい斬撃を飛ばし、男が突っ込んでいった建物を斬り裂く。
建物は崩れて行き、隣の建物を巻き込んで崩れた。
その様子に、俺に物を投げていた奴らや暴言を吐いていた連中が崩れていく建物を目を見開いて見つめている。
完全に崩れてしまった建物を見ていた連中がまた俺を見つめる。
「次にああなりたいのは?」
俺がそう言うと周りにいた連中は皆、顔を青ざめて身を引いている。
誰も出て来ようとしないので俺は後ろで、
「終わりだ…もう終わりだ…」
と呟いている男を俺の前に立たせる。
すると、
「あいつ…エルフ狩りに参加して出た奴らにいたよな…」
「あぁ、俺も見たぜ」
この男を知っている人が小さい声で話している。
俺は、
「お前、エルフ狩りをしていた愚かな者達の事を話してやれ」
男に向かってそう言う。
「ぁぁ…わかり…まし…た…。だから…命だけ…は…」
男は震えながら、一歩前に出る。
「お、俺達エルフ狩りに出た奴らは…俺を合わせて数人だけを残して…全員死んじまった!」
男はそう言うと、地面に手と膝を付いて伏せた。
男の発言を聞き、周りの連中がざわざわと騒ぎ出す。
「確か104人だったか?エルフ狩りに出た奴らは」
「あぁ、しかも魔族もいたよな」
どんどん騒いでいく者達は突然ピタリと静かになり、俺を見てくる。
「ま、まさかあんたが…」
野次馬の中にいる男の1人が俺にそう言ってくる。
「えぇ、そうですよ」
俺がそう言うと皆更に顔を青ざめていく。
「わかりましたか?俺がここに来た理由を?」
俺がさっき質問してきた男に質問をする。
すると、
「し、仕返しに…」
まるで認めたくないように俺に言ってくる。
俺は笑顔で、
「正解です」
そう言うと、皆更に一歩下がる。
すると、
「どけ!どけ!何事だ!」
大声を出しながらこちらに向かって来る8人の団体。
馬に乗っており、豪華な服を着ている者を護るように並びながらこちらに来る。
「王だ…」
誰かの呟きが聞こえた。
つまり、あの豪華な服を着ている男がこのヴァランス帝国の王という事か。
「この騒ぎは何事だ!」
ヴァランス帝国の王が集まっている俺達に向かって叫ぶ。
だが、王は俺の姿を見た瞬間に顔を歪める。
「何故我が国に野放しになっている家畜がいるのだ!」
「俺はエルフ狩りの仕返しに来ました」
「仕返しだと?愚かな家畜だ!」
王はそう言って大笑いをする。
周りにいた護衛していた人達も笑っている。
この国の連中は全員クソだな。
だが、ここでヴァランス帝国の王を殺すのは得策ではない。
故に俺は、周りにいた護衛の1人に右手を向ける。
『水斬り』
リーシャが魔法を使うと、右手から細いが凄まじい勢いで水が出る。
そして、笑っている護衛の男の両腕を斬る。
「ははは……は?…あ…ガァァァ!お、俺の!腕が!」
男は突然無くなった両腕を呆然として見ていたが、自身の腕が斬られた事を認識して叫び声を上げる。
落馬しながら、痛みに叫び声を出している男。
その様子を見ていた他の護衛の人とヴァランス帝国の王は目を見開く。
やっと、今の現状を理解したのか護衛の男達は王を護ろうと俺に剣を向けてくる。
だが、俺もリーシャも怒っている。
『リーシャ、加速魔法をお願い』
『わかったわ、加速』
リーシャに頼み、ヴァランス帝国の王に突っ込む!
たった数十mの距離。
俺は王の首を掴み地面に叩きつける。
「ぐあぁ…」
王が苦痛に声を出す。
「今後、エルフに関わらないと契約しろ」
俺が王にそう言う。
すると、自分で言った事だがもっといい方法が頭に浮かんだ。
『ねぇリーシャ、奴隷制度を廃止させる契約にするのはどうかな?』
俺がリーシャにそう提案すると、
『…それはダメよ。おそらく奴隷と言ってもエルフ達みたいな強制的に奴隷にさせられているのは珍しいし、おそらく犯罪を行った結果奴隷になった者の方が多いと思うわ。そんな連中を他の国に行かせるなら、ここに縛り付けておいた方が良いわよ』
リーシャが俺にそう言う。
その言葉を聞いて、俺はリーシャの意見に賛成する。
そうして頭の中でリーシャと話していると、痛みに耐えている王が、
「馬鹿め、家畜と約束などするものか」
そう言って笑っている。
「そうか」
俺はそう言って王の顔面を殴る。
地面が砕け、陥没する。
「契約するか?」
「ごほっ…するものか…」
更に一発殴る。
「するか?」
「し…な…い」
今度は立ち上がり腹を踏み抜く。
王が吐血をする。
多分、今ので内臓を潰してしまったのだろう。
「契約しろ」
「あ…ぁ…ぁぁ」
そして俺は俺でもしたくなかった場所を蹴り付けた。
男にとって最悪な急所を全力で蹴ると、
「!!!!!!?!!?!?!?!?!」
王はもはや声にもならない叫び声を出す。
「このまま蹴り続けるか契約するか選べ」
「は~…は~…は~…。け、契約…」
「そうか」
王はやっと契約してくれる気になってくれた。
『リーシャ、お願い』
『シュウって意外に鬼畜なのね…』
『そんな事ないよ』
『幻視契約』
リーシャがそう言うと、王の体のあちこちに黒い靄が覆う。
特に、顔と腹と急所に。
『この契約、違反するとどんな効果があるの?』
『違反した瞬間、シュウが与えた苦痛や痛みが起きる様になるわ』
『えげつないね…』
王との契約が終わりそれから、この国の連中にも同じ契約をした。
もし、エルフ狩りやエルフを奴隷にすることになったら、ボロカスになっているこの国の王と同じ痛みが襲うと言ったら、
「もう金輪際、エルフには手を出しません!!」
と言っていた。
その言葉を聞き、もう一発意識が無くなっているヴァランス帝国の王を、
「サンレアンの分だ」
と呟いて蹴り飛ばしてヴァランス帝国を後にした。
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