瞬殺
短いです。
すみません。
俺とエルネットさんは突然苦しみ出した大勢の人達を見て困惑する。
「母上!皆!」
エルネットさんがリザベルトさんやエルフの皆に声をかけるが、皆苦しそうに唸っているだけだ。
『リーシャ、この呪いはどんな効果なの!』
『この呪いは、呪いをかけた相手の寿命を自分の魔力にする魔法よ。寿命を吸われて体の内側から激しい苦痛が続くわ。苦痛が無くなる時が自分の死よ』
『呪いを解く方法は?』
『あの男を倒すか呪いを解くかだけど…。私とシュウならあの男を倒した方が速いわ』
リーシャはふふんっ!と自信満々に言う。
「流石は長寿のエルフだ!魔力がどんどん増えていく!」
魔族の男は高笑いしながらそう言う。
だが、俺達の方を見て怪訝な顔をする。
「あなたとエルフの娘…。何故あなた達は呪われない!」
魔族の男が俺を指差して叫んでくる。
「確かに…何で…あれ?光ってる」
エルネットさんがそう言うと魔族の男が、
「あなたのその腕に付けている紐は何ですか?私の呪いを弾く紐なんてありえない!」
驚愕している。
エルネットさんは、
「これはエミに渡されて魔除けのお守りって聞いた。渡して欲しいと頼んだのは…」
そう言って俺の方を見てくる。
確かにあれはリーシャが創ったお守りだけれど…。
俺がそんな事を思っていると、
「あなたですか…、私の呪いを弾くほどの力を持っているのは…」
いえ、リーシャです。
俺ではない。
まぁ、真実を伝えたところで理解してくれないか…。
『シュウ、私が魔法を使ったらあいつを殴って』
『殴るの?』
『そう右腕、つまり私で』
『わかった』
俺はいつでも走れるように足に力を入れる。
俺がそうしていると魔族の男が、
「あなたも連れて行きましょう。ガレス様も喜びます」
そう言う。
魔王が様付けするって事は魔神か大魔王しかいないだろう。
魔神の名前は確か違ったはずだ。
つまり、大魔王の事だ。
「連れていく?どういうことだ?」
俺が男にそう言うと、男は微笑みながら俺を見てくる。
気持ちが悪い。
「ガレス様は魔神ベリウズザ様復活のために贄が必要と言っていました。そして、それを私達が捕まえて連れていくのです」
男が説明してくる。
『魔神の復活に生贄なんて無かったはずよ』
リーシャが男の発言を否定する。
つまり、魔王達は大魔王に騙されているのだろう。
『加速、強化、旋風、身体剛化』
リーシャが魔法を使い体に変化が現れる。
加速魔法で体が軽くなるのと同時に風魔法で背中を押される感じ。
そして、力が湧いてくる感じだ。
『シュウ!準備できたわ!やっちゃって!』
リーシャの合図と同時に俺は一瞬で男の前まで走る!
男の腹に握りしめた右腕を突き刺すように殴った瞬間!
パァンッ!!!
そんな音が聞こえた。
見ると、殴ったはずの腹はどこにも無かった。
そして、殴った状態の俺が固まっていると上から何かが落ちてきた。
それは…。
魔王の首だった。
足元に転がる魔王の首は苦しそうな表情はしておらず、俺が一瞬でこの男に接近した時の表情のままだ。
一瞬で魔王の首から下を消し飛ばした様だ…。
だが、問題は魔王の後ろで苦しんでいた人達も少しを残して皆、姿が見えない。
これはつまり…、パンチ一発で数十人が死んだ事になる。
『あえて少し残したわ』
全員殺す事も可能だったという事か…。
だが、作戦としては丁度良い。
「あ…あぁ…ぁ…」
生き残っていた1人の男の傍に行き声をかける。
「俺に協力しろ、そうすれば殺しはしない」
俺がそう言うと男は首をブンブンと音が聞こえるんじゃないかと思わせるほど縦に振る。
「逃げるなよ」
「は、はぃ」
俺は男にそう言って倒れているエルフの人達の所へ走る。
「変態…貴方は…」
エルネットさんが何かを言いたそうだが俺は彼女に、
「皆を村に運ぶよ。手伝って」
指示を出す。
反論されるかなと思ったが、エルネットさんは何も言わずに従ってくれた。
エルネットさんが皆を運んでいると、
「ん…あれ?…ここは?」
という声が聞こえて見ると、リザベルトさんが起き上がろうとしていた。
俺はリザベルトさんの所に行き、
「大丈夫ですか?」
と声をかける。
「え、えぇ。大丈夫。それで、どうなったの?私が生きているって事は勝ったって事よね?」
「はい。大丈夫ですよ。皆も無事です」
「そう…。良かったわ」
リザベルトさんがそう言った時、
「母上!」
エルネットさんが森から走ってリザベルトさんに抱き付く。
「母上!母上!」
エルネットさんがリザベルトさんに泣きながら抱き付いている。
リザベルトさんも抱きしめ返している。
それからリザベルトさんは自分で立ち上がる事が出来るまで回復してエルネットさんと一緒に皆を運びながら村に帰っていった。
俺は、最後にやることがある。
そう思いながら、ガタガタ震えている男に、
「付いてこい」
と言って男に触れる。
『転移』
男に触れた瞬間にリーシャが魔法を使いヴァランス帝国の近くまで移動する。
男は突然周りの景色が変わった事に驚いているが、だからといって俺に声を掛けては来ない。
「来い」
そう言いながらヴァランス帝国まで歩いていく。
そして遂に、ヴァランス帝国につき中に入ろうとすると、門番が俺に声を掛けてくる。
「エルフがここに何の用だい?」
「知っているだろう。この国の連中がエルフ狩りをしに行ったのを」
「命乞いに来たのかい?」
門番は笑いながら俺に聞いてくる。
「いや、こいつを連れて来てやったのさ」
俺はそう言って後ろで震えていた男を門番に見せる。
すると、門番は目を見開いて驚愕している。
「この国の連中に知っておいてもらおうと思ってね」
「な、何を?」
「エルフに今後手を出そうとしたらどうなるかを…ね」
門番にそう言ってヴァランス帝国入る。
城下町を歩いている俺と男を見て何だ何だと野次馬が集まってくる。
さあ、やろうか!
読んでくださってありがとうございます!
ブックマークして下さった方ありがとうございます!
評価して下さった方ありがとうございます!
評価、感想、ブックマークされると嬉しいです!




