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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
46/430

前夜

すみません。

遅れました。

あの後リザベルトさんに平手打ちをもらい、エルフ達からは変態と言われ続けた…。

エルネットさんも冷たい目で俺を見るし、リーシャも機嫌が悪く話してくれない…。

ただ、リザベルトさんをあそこまで追い詰められた所は評価され、用心棒として信用された。

問題なのは、


「おい、変態。これはどうすれば良い?」

「あぁ、それは向こうに設置してください」

「わかった」


変態と呼ばれるようになってしまった事だ。


「あ!ヘンタイさんだ」


子供のエルフにもそう呼ばれてしまっている…。

これは皆好意的に接しているからこうなったのかな?

と現実逃避をしていると、


「変態、教えて欲しい事がある」


エルネットさんが話しかけてくる。


「ちょうど良かった。エルネットさんに渡しておく物があったんだ」

「要らない」

「えぇ!そ、そんな事言わないで受け取ってくれないかな?」

「嫌」


完全に嫌がれている。

でも、これはどうしても渡しておきたい。


『どうしようリーシャ?』

『…ふんっ!』


リーシャも会話してくれないし…。

リザベルトさんに言って渡してもらえば良いと思ったが、あんな事があって顔を合わせ辛くなったし…。

どうしたら良いだろうと考えながら、エルネットさんと村を歩いていると、


「こ、こんにちは」

「エミリシーさん」


エミリシーさんが俺に声を掛けてくる。

相変わらずビクビクしているが俺とまともに話してくれる人だ。

彼女に聞いてみよう。


「エミリシーさんに聞きたいんだけど今良いかな?」

「は、はい。大丈夫です」

「今俺がエルフの人達に何て呼ばれているか知ってますか?」

「へ、変態って呼ばれているのは知っています」

「それで、皆にせめて名前を呼ばれたいんですよね…」


俺がそう言うとエミリシーさんが、


「じゃ、じゃあ食糧を調達するっていうのはどうですか?」

「食糧?」

「はい!皆最近まともにご飯が食べれなくて保存食だけしか食べてないんですよ」

「確かにそう」


そうか、エルフは森の中では殺しはしないって話だ。

つまり、食糧を手に入れるためには森を出て狩りをするしかないって事だ。

だが、森を出れば人に捕まって奴隷にされてる。

完全に囲まれているんだ。

なら、唯一人間である俺が食糧を持って来ればある程度は変態とは呼ばれなくなるだろう。


「わかった!食糧調達して来ます!」

「あ、でも貴方が森から出たらこの村に帰って来れなくなっちゃいます」

「私が付いて行く」


エルネットさんが申し出てくれる。


「ありがとう!じゃあ、行ってきます」

「エミ、私達が狩りに出ると言っておいてください」

「わかりました」


俺とエルネットさんはそれから、森を抜けいつもエルフの皆が狩りをしていた場所に着いた。

森から少し離れた所の草原だが、魔物?動物?がちらほら見える。

今回はリーシャが怒っているから助力は頼めそうにない…。

大丈夫だ、俺1人でも頑張ろう!


「あの水牛が良い」

「水牛?」


あの水牛がこの世界にもいるのか?

そう思いながらエルネットさんの指差した方向を見ると、


「何ですか?あれ」

「何って水牛」


エルネットさんが指差したのは牛の形をした水の塊だった。


「あれ、美味しいんですか?」

「とても美味。エルフは皆好き」


そう言われたら狩るしかない!

俺は直剣を出し、水牛の元へ走ろうとした時、


「水牛は剣では斬れない」

「え?そうなんですか?」

「水だから」


そうなると魔法だが…、俺は火魔法しか使えない…。

だが、考えていても仕方がない!

そう思って水牛の元へ走る!

だが、後3~4mっていうところで後ろから風の刃が飛んできて水牛を真っ二つに斬り裂いた。

切られた牛は血も出さずに倒れる。

近づいて切断面を見ても完全に水のようにほぼ透明だ。


「魔法を使ったほうが速い。変態もあれだけ魔法が使えるならそちらの方が早く済む」


エルネットさんが後ろから来て言ってくる。

エルネットさんが言いたいことは分かるが俺には風魔法は使えない。

だが、ここでリーシャの存在を言っても誤解されるかもしれない。


「いや、俺は剣でやってみるよ」

「無駄」


そう言ってエルネットさんが水牛の群れの方に歩いていく。

俺は水牛の元へまた走り出す。

次は横取りはされないだろうから剣を握る。


「はぁ!」


水牛の首を斬ると綺麗に斬り落とす。

意外に簡単じゃないか…。

そう思って更に水牛を狩っていく。

気がつけば、日が沈みかけている。

数えると俺が狩った水牛は10頭だった。


「どう?」

「10頭狩りました」


俺がそう言うとエルネットさんが驚いている。


「何故剣でそこまで…」


そう言ってくるエルネットさんだったが俺の握っている剣を見て納得したような顔をする。


「変態、付与魔法もできたの?」

「付与魔法?」

「とぼけないで、その剣に風魔法が付与されている」


俺はエルネットさんが指差している自分の剣を見ると、僅かに緑に光っている。

俺は付与魔法どころか風魔法すら使えない。

つまり、


『リーシャがしてくれたの?』

『…うん』

『ありがとう』


やはり、リーシャが手助けしてくれていたみたいだ。

怒っていたはずなのに手を貸してくれるリーシャに感謝すると同時に申し訳なく感じる。

そろそろ俺も自分自身で戦えるようにならないと…。

それから、エルネットさんが狩った水牛を見ると、21頭だった。

エルネットさんが魔法で計31頭の水牛を運ぶ姿は勇ましかった。

村に戻り、2人で狩って来た水牛を見せるとエルフの人達は皆喜び宴のように皆で夕食を食べた。

水牛は柔らかく美味かった。

皆久々のしっかりとした食事に満足してくれたみたいだ。

名前は変態から変わらなかったけど…。

それから、皆は家に帰り就寝した。

俺もエルネットさんに連れられて家に戻ったがリザベルトさんとは気まずくあまり話せなかった。

そして、翌朝。

いつも通りの朝ではなく皆慌ただしい。


「どうしたんですか?」

「おぉ!変態!遂に人間達が来やがったんだ!」


遂に、敵が攻めてきたらしい。


読んでくださってありがとうございます!

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