刻下 ホワイトデー 特別?
後書きに少し大切なお知らせがあります。
できれば最後まで目を通して頂けると幸いです。
…どうしたら良いのだろうか?
俺はホワイトデーになっても、買ってきた飴菓子を前に悩んでいた。
と言うのも、ただ飴を渡すだけでは駄目だと思っているのだ。
普通が一番だと思う人もいるだろうが、毎回向こうの世界の依頼の帰りにちょっとした飴菓子とかをお土産で買って帰ってきた所為で、ホワイトデーの特別感が無い。
バレンタインの時はとても特別な感じだったのだ。
せめて俺も少しは特別感を出したい。
そう考えて、悩んでいる内に時間だけが経ってしまったんだけど…。
俺がそう思って自分の不甲斐無さに落ち込んでいると、
「あ~…安全な家に帰って来たな~」
後ろの扉が突然開いて、扉からヴェロニアさんが出てきた。
突然の事に驚いていると、
「ん?何だ少年、珍しく1人なのか?」
ヴェロニアさんが俺の事を見てそう言ってくる。
俺はその言葉を聞いて、
「あはは、そうですよ。流石に皆とずっと一緒にいる訳じゃないですよ。皆にだって皆のしたい事とかあるじゃないですか」
苦笑しながらそう言うとヴェロニアさんは、
「それもそうだね」
俺の言葉にうんうんと頷いてくれる。
すると、
「ん?それは何だい?」
ヴェロニアさんが俺の机の上に置いてある飴を見て、そんな質問をしてくる。
「あ、あぁ。これは皆に送る様に買った飴菓子なんですけど、いつもみたいに渡しても意味が無いかなって思って…」
俺がヴェロニアさんの質問にそう答えると、ヴェロニアさんは俺の言いたい事がよく分かっていない様だ。
不思議そうな顔をして、首を捻っている。
俺はその様子を見て苦笑をして、
「ヴェロニアさんは、あまりそういう事を気にしなさそうですよね」
そう言う。
すると、俺の言葉を聞いたヴェロニアさんは、
「まぁ、そうだね。贈る物を渡すのに特別も何も無いと…うちは思ってしまう。…そういうのに興味が無いからだろうね」
そう言って苦笑する。
俺はその言葉を聞いて、それでもいつもみたいな感じで渡したくはないと考える。
俺がそう思って飴を見ていると、
「…仕方がない。いつも色々とお世話になってるからね。うちもそういうのに疎いけど協力しようじゃないか」
ヴェロニアさんはそう言うと、俺の元にやって来て俺の座っている椅子に無理矢理座ってきた!
その瞬間、ヴェロニアさんの体の柔らかさと甘い匂いに俺は驚いて椅子から立ち上がる。
すると、
「そんなに露骨に避ける事ないじゃないか…。いくらうちだって傷つくんだぞ…」
ヴェロニアさんが少し寂しそうな顔をしてそう言ってくる。
も、申し訳ない気持ちもあるが、
「いやいや、いきなりくっ付かれたら俺だって驚きますよ」
俺がそう言ってヴェロニアさんとくっ付いたのが嫌という訳では無いと弁解すると、
「…本当かい?なら、一緒に座る事も出来るだろう?今度はうちからじゃなくて、少年から座りに来れるからね」
ヴェロニアさんが俺に意地悪な事を言ってくる…。
確かにいきなりの行動じゃないから驚きはしない。
だが、俺から椅子に座るのも勇気がいるな…。
俺がそう思っていると、ヴェロニアさんが半分だけ座るところがある椅子をチョンチョンと叩いて、
「ほれほれ、早く座りなさい。話が進まないからね」
そう言ってきた…。
仕方がない、これ以上言ってもヴェロニアさんが意見を変える事は無いだろう。
彼女は研究者故なのか、自分に言った言葉を変えようとはしないのだ。
俺はそう思い、自分が床とかに座ろうとする事を考えたが止めて、ヴェロニアさんの横にお尻を滑らして椅子に座る…。
「せ、狭くないですか?流石に2人で座る様の椅子じゃないので、狭いと思うんですけど…」
俺がそう言うと、
「別に構わないよ。それより、飴菓子をどうやって渡すかだけど、これなんかを一緒に渡すのはどうだろう?」
ヴェロニアさんは俺が横にいるのを全く気にした様子を見せず、自分の持ち歩いている魔導袋から魔導具を取り出した。
大きさはあまり大きくないが、俺は魔導具の知識はあまりない。
見せられても、どう使う物かも見当もつかないのだ。
俺はそう思いながらも、ヴェロニアさんから魔導具を受け取って魔導具を観察する。
すると、
「最近作った、変形する手錠。元々の材料はこっちの世界で調達してきて、組み立てと魔術式は別々の世界で作った代物だ。利点は、小さな魔石でも動いてくれる財布に優しい設計。これをうち達の世界の人達に売ったら、良い物になると思うんだ」
ヴェロニアさんが、凄く自慢げに魔導具の説明をしてくれる。
俺はその説明を聞いて、これをどう使えば良いのかと思っていると、
「ほら少年、飴菓子を手に包んで」
ヴェロニアさんが机の上に置いてあった飴の1つを俺に手渡すと、それと同時に俺の手にあった魔導具を取って起動させ始める。
金属が擦れるサッパリとした音が聞こえると、丁度両手の手首が収まるくらいの穴が出来ていて、その穴に手を差し入れる。
すると、起動した時と同じように金属の擦れる音がして手錠が付けられた。
「…あのヴェロニアさん?この手錠の便利さは分かったんですが、これで一体何を?」
俺がそう質問をすると、ヴェロニアさんはニヤリと笑って、
「特別な渡し方がしたいって言ったじゃないか。君ごと飴として渡してあげれば、特別でもあるし皆も大喜びだろうね」
俺にそう言ってくると、更にこちらの世界から持って行ったであろう粘着テープを魔導袋から取り出すと、
「ささ、早く飴菓子を手に包むんだ」
ビイィーっと音を立てながらテープを伸ばし、俺の指先を少し雑にテープで巻いて拘束すると、
「さぁ、皆にお渡ししに行くぞ」
俺にそう言って部屋の真ん中の扉を開けてくれるヴェロニアさん…。
もう話は進んでしまったし、これで行くしか無い様だ。
それにヴェロニアさんの性格上、また振り出しに戻す事はしなそうな気がする。
もしかしたら、面倒になってもっと強引な方法で手伝ってくれるかもしれない…。
俺はそう思い、
「そ、そうですね。これ以上時間を先延ばしても皆に悪いですもんね。これでダメだったら、また改めて後日何かしますよ」
ヴェロニアさんにそう言って、先にヴェロニアさんが扉を通って俺もその後に続く。
そうしてヴェロニアさんに連れられて屋敷の廊下を歩いていると、何故か悪い事をして連行されている気分になってしまうな…。
俺がそう思っていると、皆の声が聞こえてきた。
どうやら皆、食堂で何か話をしている様だ。
…何か、変に緊張してきたな。
俺がそう思った瞬間、
「ただいま~!今帰って来たよ」
ヴェロニアさんが食堂の扉を開けてそう言う。
すると、皆のおかえりというヴェロニアさんを迎える声が聞こえてきた。
このままヴェロニアさんと一緒に行っても良いものなのか?
俺が廊下でそう思った瞬間、
「この前にお願いされていた少年を捕獲する魔導具、完成したからついでに捕まえておいたよ」
食堂から聞こえたヴェロニアさんの声に、俺は察してしまった。
あぁ、見事に罠に掛かってしまったと…。
その瞬間、食堂の扉から出てきた怜華さんのとても嬉しそうな笑顔に、俺はもうどうする事も出来なかった。
ただ1つ言える事は、皆が凄く喜んでいる姿が見れたから良かった。
うん、良かった…。
これまで読んで下さった皆様、ブックマークや感想、評価やレビューを書いて下さった皆様、ありがとうございました!
今回の更新で、とりあえずではありますが「初代勇者を腕に」を終了させて頂きます。
ただし、自分がシュウ達のこんな光景を見てみたいなどの案が浮かびましたら、また稀だとは思いますが更新するつもりなので完全に終わった訳ではないです。
長い間、「初代勇者を腕に」を読んで下さって本当にありがとうございました。
三日坊主の私が、ここまで続ける事が出来たのは読んで下さった皆様のおかげだと思っています。
改めてお礼を申し上げます。
本当にありがとうございました。
…そして遂に次回作の投稿をします。
きっともう投稿されているとは思うのですが、今回の主人公はシュウとは反対の性格の主人公を書いてみたいと思って書いた作品です。
ので、人によっては嫌な主人公に見えてしまうかもしれません。
簡単に言うと、イキっています!
欲に忠実に生きている感じです。
おそらく題名を見れば分かるのですが、結構羽目を外しています。
1日おきの更新の予定ですのでなかなか話が進まないとは思いますが、次回作「ケモナーサモナー、異世界で奴隷保護をする」をよろしくお願いします。
下のURLからどうぞ。
https://ncode.syosetu.com/n4047fj/




