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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
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刻下 バレンタイン 様々なチョコ

俺は今、何故か屋敷を追い出されてしまった。

と言うのも、ルリィに秘密にしたい事があるからと言われて屋敷にいてはいけないと言われてしまったのだ。

秘密だからと言われてしまうと、逆に知りたくなってしまうのは誰にでもあるだろう。

ルリィはリーシャや皆にも声を掛けて、俺以外の皆は今日屋敷に集合している。

1人だけ除け者にされてしまうと、寂しい気持ちもある。

それにしても皆、今日は何をしているのかな?

と言うよりも、俺がいない時の皆ってどんな感じなんだろう?

俺がいてもいなくても会話とかはいつも通りなのか、それとも女性同士でしか出来ない会話とかしているのだろうか?

そう考えると、気になって仕方がない。

皆が集まって何をしているのかも気にはなるが、それと同時にどんな感じで話していたりするのだろう。

俺はそう思うと、意を決して自宅の部屋の扉をそっと開く。


「…誰も見張りはいない…よね」


僅かに開いた扉の隙間から向こう側の部屋の様子を窺うと、人の気配はしない。

だが、俺は油断しない。

リーシャはスキルで完璧に気配を絶つ事が出来るし、他の皆もスキルが無くても気配をある程度隠す事が出来る。

細心の注意を払わないといけないな、もし屋敷に来ているのがバレたらどんな目に合うか分からない…。

俺はそう思いつつ、扉を更に開いて屋敷に侵入する。

扉の部屋には誰もいない事を確認すると、更にその部屋の扉を開けて廊下を覗き込むが誰もいない。

流石に見張り役を廊下に立たせておくなんてあり得ないか。

俺はそう思い、コソコソと廊下を歩く。

曲がり角などの際にはゆっくりと廊下を確認し、大丈夫なら廊下は足音を出さないで静かに歩く。

そうして屋敷の廊下を歩いていると、食堂と厨房の近くまで辿り着く事が出来た。

すると、


「なぁルリィ、これはどんくらい入れれば良いんだ?」

「これで2杯ですよアル様」


そんな2人の声が耳に入る。

それと同時に、他の皆の声も聞こえてくる。

どうやら、何かを作っている様なのだ。

それにしても、皆が一緒に料理は珍しく感じるな。

いつもだったら、3人くらいで料理を作ったりしている。

それが今日は10人以上が厨房に集まって何かを作っている、本当に珍しい。

いつもだったら、料理する時は監視されていなければいけないリーシャも、今のところは監視されている様にも見えない。

俺がそう思っていると、


「そう言えば、最近シュウがテスト?で良い点を取ったって喜んでいたわよ」

「当たり前よ。柊ちゃんは元々頭が良かったんだもの。少し躓いてしまって遅れがちになったモノをしっかりと把握させてあげれば、問題はないわ。…ハァ、柊ちゃん食べたい…」

「いきなり欲望吐露して驚いたんだが…。レイカやアイサは将来どうするんだ?シュウ達は進級するから今の学び舎に留まるって聞いたが、2人は他の所に行ったりするのか?」

「そうね。私は一応このまま進学しつつ、起業しようと思っているわ。出来るだけ早く柊ちゃんを養わないと、柊ちゃんが進学した後に就職なんかしてしまったら、どんな悪い虫に言い寄られるか…」

「…私も進学。…怜華ほどではないけど就きたい職があるから、それに向かって勉強する」

「あれ?お姉ちゃん将来の事、そんなに考えてたの?」

「私も初めて聞きました。私は実家の病院に勤める事は決定事項みたいなモノですから話題にあまり出さなかったですけど」

「…1人で考えて出した結果だから、まだ誰にも話していなかったの。…柊に勉強を教えていた時に、分かりやすいって、説明が上手だって言われて、その…女教師になりたいと思った」

「…そこで普通に教師って言わない辺りが、簡単に想像できる私はそれほどアイサと仲が良いと思った方が良いのかしら?…少し複雑な気持ちなのだけれど…」

「秋沙の事だから、アダルトゲームからなってみたいとか思ってそうよね。…確か最近のお気に入り、牝教師なんとかって題名だったはずだわ」

「…ッ!?何で知ってるの怜華?」

「アダルトゲエム?アイサ様、何ですかそれ?」

「…ルネリアはまだ知らなくて良い物」


何だか皆、作業に集中しつつもそんな会話をしている。

俺がいるとこんな会話をしていないから、ある意味本音で話しているって事なんだろう。

異性の俺がいるから話せない、これがいわゆる女子トークという奴なのか?

俺がそう思っている間にも、


「むぅ。何で私にはまだ早いんですか?これでも成人してるんですよ!」

「あはは…。成人って言っても私たちの世界では18歳以上がアダルトゲームが出来るから、ルネリアちゃんはまだ知らなくて良い事なんですよ。特に秋沙先輩のは、刺激が強いですからね…」

「と言う事は、私は知っていても良い事なんだ?どういう物なの?」

「まさかヨハナさんがそっちに興味を示すとは思わなかったわ…」

「あら、私もどういう物か知りたいわ」

「母上、皆様の話を聞く感じでだいたい察しが付くと思うんですが?」

「…エルフは牝教師レベルの人気ジャンル。負けない」

「アイサさんが闘志を漲らせているんですが…」

「そう言うティア、貴女確か王女で騎士でもあるわよね?ほら秋沙、最大の敵よ」

「…女騎士でくっ殺、王女でくっ殺、難敵」

「ちょっとなんか私まで敵視されてるわ!…ぺろ…」

「コレット様、話に少し混ざりつつ味見に集中しないで下さい」

「い、良いじゃない材料は沢山あるんだし…」

「はぁ、コレット様のつまみ食いもいい加減にどうにかしないといけませんね」

「…エルミールさん、この葉を朝食でお茶として飲ませて下さい。少しですけど食欲が抑えられますから」

「ありがとうございますアウレーテさん。今度良い茶葉のお店を見つけたので、一緒に行きましょう」


どんどん話が進んでいく。

俺は皆がどういう感じで話しているのか気になってしまい、ばれない様に厨房を覗き込んでみる。

すると、コレットさんを除いた皆がそれぞれ各自で何か担当して手を動かしたり、棚に置いてある調味料を取りに行ったりしている。

コレットさんは、色々な所に歩いて行っては味見なのか一口貰っている。

それにしても、会話しながらも無駄の動きが無い様に感じる。

皆凄いな…。

俺が改めて皆の事を凄いと思っていると、


「少し話が変わるけどよ、屋敷から説明も無しに出て貰ったシュウの反応見たか?」


アルが何かを炒めながら話を切り出す。

さっきの俺の話?

俺がそう思っていると、


「えぇ、見たわよ」

「柊ちゃん、あの反応は絶対に気づいてないわ…」


リーシャと怜華さんが少し拗ねた様子でそう言うと、他の皆も頬を膨らませたリ口を尖らせたりしている。

そ、そんなに皆が不満に感じる事をしてしまったのか?

俺がそう思っていると、


「今日が何の日か、何で覚えてないのかな?」

「…柊にも色々あるから、そこまで考えられなかったとか?」


春乃と秋沙がそう言ったのを聞いて、俺は今日が2月14日のバレンタインだという事に気がついた。

と言う事は、今皆は厨房でチョコ作ってるのかな?

でも、甘い匂いと同時にスパイスの匂いもするんだけど?


「仕方ないですよ。ここ最近はシュウさんにも城の事務仕事を手伝って貰ったりしていたので、疲れていると思います」

「私も庭のお手入れを手伝って貰ったり、肥料を運んでもらったりしてとても助かっています」


俺がそう思っていると、ティアとアウレーテさんが少し前に手伝った事を言う。

事務仕事は確かに大変だったけど、ティアに比べたら全然だろう。

アウレーテさんの手伝いも、俺には力仕事くらいしか出来る事が無かったからな。

俺はそう思いつつ、これ以上盗み聞きをするのも失礼だと思って家に戻る事にする。

そうして部屋に戻って来た俺は、来月のホワイトデーのお返しを考え始める。

色々と考えている間に時間が経過したらしく、


「だ、誰だ??」


突然の訪問者に、目を塞がれて声を掛けられた。

バレンタインは忘れていた俺だが、流石に人の声や手の感触を忘れる事は無い。


「声はヨハナさんですけど、目を塞いでいるのはルネリア」


俺がそう答えると、目を覆っていた手が離れる。

手が離れたのを確認してから後ろを向くと、何故かルネリアとヨハナさんが驚いた様子で俺の事を見てくる。


「どうしたの2人共?そんなに驚いた顔して?」


俺がそう聞くと、


「な、何でルネリアの手だって分かったの?」


ヨハナさんが俺にそう聞いてくる。

俺はその言葉に、


「いやだって、ヨハナさんの手だったらもう少し硬いからね。剣を握ってるから、手の平が少し硬いんだよ。ルネリアも杖を握ってるけど、剣に比べたら握り締めないから柔らかいんだよ」


そう答えると、ルネリアとヨハナさんは自分達の手と互いの手の平を見て唸り出してしまう。

俺はその光景に笑いながら、


「それで、どうしたの?もう屋敷に戻って良いの?」


未だに自分の手を見て首を捻っている2人にそう聞くと、ルネリアとヨハナさんは思い出した!という様な顔をして、


「そう!そうだったわ!」

「はい!準備が出来たんです!」


そう言うと、俺の手と服を摘んで引っ張り始めた。

ルネリアとヨハナさんに連れられて部屋の扉から屋敷へと戻ってくると、何やらチョコレートとは関係無さそうな香ばしい良い匂いがする。

皆でチョコのお菓子を作っていた訳では無いのかな?

俺はそう思いながら2人に引っ張られて歩き始め、そして数時間前に覗いていた厨房も通り過ぎて食堂に案内される。

するとそこには、量は違うがいつもと同じ夕食の光景が広がっていた。

完全に今日はチョコレート塗れの夕飯だと思っていたのだが、いつもより種類と量が多いだけで変化はない。

俺がそう思っていると、


「シュウ、こっちよ」


リーシャが俺に向かって手招きをしている。


「う、うん」


俺がそう言って返事をすると、ルネリアとヨハナさんが俺から離れて自分達の席へと戻っていく。

俺もリーシャの隣へと座ると、


「さぁ、シュウ。食べて食べて」


リーシャが俺に取り皿を渡してきながらそう言ってくる。

俺はリーシャにお礼を言いながら皿を受け取ると、目の前に並んでいる料理を見る。

メインであるビーフシチュー、焼いた骨付き肉、肉が多めの炒め物、サラダ、色が少し茶色のエビ…マヨ?、何故かたこ焼き。

いつもより洋風とか和風に統一されていない。

俺はそう思いつつ、


「いただきます」


目の前に置かれている骨付き肉を1つ取り、齧り付く。

見た目は硬そうだったけど、見た目に反してとても柔らかい。

少し甘めの味付けもその柔らかさに合っていて、とても美味しい。


「凄く美味しいよ」


俺がそう言うと、皆がとても嬉しそうな顔をする。

だが、何故か皆は俺の様子を見ていて食べようとしない。


「皆は食べないの?冷めちゃうよ?」


俺がそう言うと、


「柊ちゃんが全種類食べたら、私達も食べるわ。さぁ柊ちゃん、もっともっと食べてね。あ~んして」


怜華さんがそう言ってエビマヨを俺の口元に差し出してくる。

俺はそれを食べると怜華さんは嬉しそうな顔をして、他の皆は少し頬を膨らませて拗ねた様子だ。

エビマヨも、エビがプリプリでとても食感が良く味付けは少し甘いがとても美味しい。

俺は皆のその様子を見て、少し急いで全ての料理を食べる。

ビーフシチューはいつもより味が深いというか、コクがあるような気がする。

肉の炒め物も、甘い味付けにピリッとする唐辛子の様な物が合っていて、ご飯が欲しくなる。

そしてサラダが他の料理の濃い味付けが飽きない様に、ドレッシングもサッパリしていて美味しい。

……最後に、何故ここにあるのか少し分からないたこ焼きを食べる。


「ッ!?!?」


瞬間、俺はたこ焼きの中身がタコじゃない事を察した。

噛んだ瞬間、たこ焼きの生地から出てくる甘いドロッとしたモノに驚くが、味が偶に食べるモノだと分かってとりあえず飲み込む。

そして俺は、


「これ、たこ焼きの中にチョコ入ってる?美味しいけど、なんか食後に食べる甘味みたいな気が…」


皆に向かってそう聞くと、


「先輩、それだけですか?」


真海ちゃんが俺に向かってニヤニヤ笑いながらそう聞いてくる。

その顔を見て、俺は他の料理にもチョコが混ぜられていたのかと疑ってしまう。

だが、どれもチョコレートの甘さとか感じなかったし食感も無かった。

俺がそう思って並べられている料理をキョロキョロ見ていると、


「…一応たこ焼きもおかず?みたいなモノ。食後はちゃんと別の物を用意してあるよ」


秋沙が俺にそう言ってくる。

な、なるほど。

それで俺の質問に誰か答えてくれないかな?

俺がそう思っていると、


「実はこのサラダ以外、全部にチョコ入れましたご主人様」


ルリィが俺にそう教えてくれる。

その言葉を聞いた俺は、


「あ、ありがとう皆」


お礼の言葉を口にする。


「今日は好きな人にチョコを入れる日なんでしょ?皆で色々と頑張ったんだから、しっかりと味わって食べてよね」


ヨハナさんが少し怒っている様な何とも言えない表情でそう言うと、骨付き肉を手に取って齧り付く。


「もうヨハナ…。行儀が悪いわよ…」


アウレーテさんがそう言って苦笑する。


「どうお兄ちゃん?バレンタインだからチョコを上げようと思ったんだけど、いつもとは違った感じにしたかったからチョコに合う料理を作ったんだけど、良かった?」


春乃が俺にそう質問をしてきて、その言葉に皆が俺の答えを気にし始める。

俺はそんな皆を見ながら笑って、


「凄く嬉しかったし、とても美味しかったよ。皆、ありがとうございます」


そう言って挨拶をすると、皆が笑顔を向けてくれた。

すると、


「じゃあ今度は、普通のチョコレートケーキを持ってきますね!」


ルリィがそう言って秋沙と一緒に厨房に向かうと、


「待ってました!」


コレットさんが嬉しそうな声を出し、そんなコレットさんに注意をするティアとエルミール。

今年のバレンタインは、襲われずに済みそうだな。

俺は安心と少し寂しさを感じながら、皆と一緒に笑う。




「……チョコ、塗らないと」


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