番外編 ヴェロニア編 今後
ヴェロニアさんを護ってみせると伝えてから、ヴェロニアさんは満足そうに笑ってから気になる露店に行っては魔導具の説明を聞いたり、使い方を教えて貰ったりしていた。
その頃になると、流石に周りの男性もヴェロニアさんの事を気にしなくなったのか、嫌な視線を感じる事は無くなり安心して彼女と職人さんの話を聞いたりした。
そうしていると、
「ん?あれは?」
ヴェロニアさんがそう呟いて俺の後ろに隠れてしまう。
ヴェロニアさんは何を見て俺の後ろに隠れたのだろう?
俺はそう思って今さっきヴェロニアさんの見ていた方向を見るが、人が多い所為でヴェロニアさんが何を見て隠れたのかは分からない。
そうして少し立ち止まっていると、ヴェロニアさんが俺の肩から顔を少し出して視線をキョロキョロと周りに移す。
ヴェロニアさんがそんな行動して少し時間が経つと、
「どうやら行った様だ」
ヴェロニアさんがそう言って、元の俺の隣に戻る。
「知り合いでもいたんですか?」
俺がそう聞いてみると、
「そう。前に一緒に魔導具を作った人がね」
ヴェロニアさんがそう言って歩き出す。
俺は彼女から離れないように隣を歩きながら、
「その話、聞いてもいいですか?」
そう聞くと、ヴェロニアさんは俺の事をチラッと一瞥してから、
「面白い話ではないよ?」
そう言ってくる。
俺はその言葉に、
「構いませんよ。こう思うと、俺とヴェロニアさんってあまり会う事がないから色々と話してみたいです」
そう答える。
すると、
「少年は物好きなんだね」
ヴェロニアさんは苦笑いをする。
そして、
「うちがこの帝都に来る前、とある王国で魔導具の製作を依頼されたんだ。バルナルド・ヴィリヴァの子孫ではなく、ヴェロニア・ヴィリヴァとして評価されたと嬉しかった。そこで数人の職人達と一緒に、魔導具の設計を始めたんだ。それから数か月で、依頼されていた魔導具は完成した」
ヴェロニアさんはそう言うと、少し間を作ってから、
「だが、一緒に作っていた職人の1人が魔導具の設計図を盗んで王国から逃げ出したんだ。逃げた先でその魔導具を売り込んだ職人は、とても稼いだらしい」
そう言った。
そこまで聞いても、俺はまだ俺の後ろに隠れた理由が分からない。
俺がそう思っていると、
「だが、問題が発生したんだ。誰もが設計図を見て作らないと作れない魔導具を、それよりも高性能に進化させて作った者がいたんだ。設計図を盗んだ職人は、その事に怒り今でも当時の職人達を探している」
ヴェロニアさんがそう言った。
「という事は、その職人の人がさっきいたって事ですか?」
俺がそう聞くと、ヴェロニアさんは頷いて、
「全員が魔導具を作る一級の職人達だ。今回の祭りにも参加していると思って探しに来たのだろう」
そう答えた。
それにしても最悪な人がいたものだ。
そんな身勝手な人の所為で、ヴェロニアさんは周囲を警戒しているのか。
俺がそう思うと、
「少年、うちの心配はいらないよ。もし見つかっても、うちの魔導具で逃げる事もできる」
彼女がそう言って笑う。
ヴェロニアさんは笑ってそう言うが、俺は心配で気になってしまう。
「本当に大丈夫なんですか?もしかしたら殺される可能性だってあるんじゃないですか?」
俺がそう言うと、ヴェロニアさんはキョトンとした顔をした後、
「くっ…ふふ…あっはっは…」
静かに笑い出した?
俺の言葉、そんなに変な事を言ったのだろうか?
俺がそう思っていると、
「奴にそんな度胸は無いよ。せいぜい嫌がらせでうちの魔導具を破壊しようとするか、研究している資料をまた盗み出そうとするかのどちらかだろうね」
ヴェロニアさんが鼻で笑いながらそう言った。
今の言葉を聞く感じだと、盗まれた設計図より良い魔導具を作ったのはヴェロニアさんだと考えてしまう。
そして、ヴェロニアさん達を探している人はあまり好戦的ではないという事だ。
この世界の人にしては、珍しい気がするのは失礼なのだろうか?
それとも、今まで出会ってきた人達が特別好戦的だったのかな?
俺がそう思っていると、
「少年達の世界は、様々な道具で溢れていたね」
ヴェロニアさんが俺にそう声を掛けてくる。
「そうですね。様々な人達が色々な物を発明しましたから」
俺がヴェロニアさんの言葉にそう返すと、彼女は少し空を見るように上を向いて、
「うち達の世界も、もっと長い年月を経ればああなるのかな?」
まるで自嘲するかのように笑ってそう聞いてきた。
俺はヴェロニアさんのその言葉に、
「どうでしょうか?俺達の世界とこっちの世界は、根本的な部分は全く違いますからね。俺達の世界は魔法が無い分、科学という技術力を発展させてきました。逆にリーシャ達の世界は、魔法の技術が発展して魔導具などの技術力は発展していません。その中間に、ヴェロニアさん達の世界があると思うんですよね。魔法の力は失いつつありますが、魔導具を作る技術は今も進化し続けています。ただ…」
そう自分の考えを言葉にすると、ヴェロニアさんが俺の方を向いて、
「そうだ、この世界はこれから進化していくのか、退化していくのかの瀬戸際だと言っても過言では無い」
俺の言葉を遮って、ヴェロニアさんが俺が言おうとした言葉をハッキリと俺に言ってくる。
この世界は魔法使いが数人しかいない。
それを考えると、魔導具の技術を向上させたとしても魔石が足りなくなる。
最悪、魔法を使える力が無くなってしまう可能性だってあるのだ。
そう考えてしまうと、魔導具の技術力を上げる他にも色々な事を考えないといけない。
ただ、タイミングも重要だ。
魔法使いが消えてしまうのだとしたら、それまでの間は魔導具を作る人達がいないと困る。
しかし、いずれ無くなってしまう仕事を続けようとする人は少ないだろう。
生活が厳しくなる前に、他の仕事を探し始めてしまう可能性だって十分にある。
…本当に難しい問題過ぎて、頭がおかしくなってしまいそうだ。
俺がそう思っていると、
「少年は、自分達の世界でもないこの世界の未来を考えてくれるんだね」
ヴェロニアさんが安心した様な、優しくゆったりした声でそう言ってくる。
その瞬間、
「見つけましたわよ!ヴェロニア・ヴィリヴァッ!!貴女の所為で!わたくしの魔導具が売れなくなってしまいましたわ!責任を取って貰いますわよッ!」
俺とヴェロニアさんの前に、少しやつれている金髪のお嬢様みたいな人がヴェロニアさんの事を指差して大きな声を出した。
…言葉使いはお嬢様なのだが、本当にお嬢様なのかは分からない。
何故なら、元々は豪華そうであった服が破けていたりしていて、恰好がお嬢様からかけ離れている。
俺がそう思っていると、
「……油断してた…」
隣からヴェロニアさんの呟きが聞こえた。
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