番外編 カーヤ編 好き
カーヤさんが落ち着くと、何故か俺はまたベッドに座らせられた。
そして、隣にカーヤさんも座っている。
俺の腕とカーヤさんの腕が、どちらかが少し動くと当たる。
カーヤさんがここまで近くにいると、緊張するな。
催淫の効果はそんなに強くは無いが、単純にカーヤさんが美人だからだろうか?
俺がそう思っていると、
「シュウさん、何故貴方が催淫されないのか今考えていたのですが、もしかして夜の営みが多すぎる所為なのかもしれませんね」
カーヤさんがそんな事を突然言ってきた。
唐突なカーヤさんの発言に一瞬思考が停止したが、可能性はあると思ってしまい、
「あ、あはは…。……あり得そうですね…」
俺は顔を引き攣らせながらそう返事をする。
すると、
「つまり、性欲が低下時は催淫の効果が薄いと…。その反対に性欲を昂らせると催淫の効果が普通、もしくはより効果が発揮されるという事なんでしょうか?」
カーヤさんはそう言って何故か俺の体にピタッと腕を当ててくる…。
まさか、今言った事を実践するつもりではないだろうか?
俺はそう思いつつ、
「いやぁ…。そんな事は無いんじゃないですか?どんなモノにもあまり反応する人と過剰に反応する人がいるじゃないですか。俺は催淫には少し耐性があるんですよ」
カーヤさんにそう伝える。
マズい、腕がくっ付いている所為でドキドキしてきた!
落ち着け、ここでカーヤさんに催淫の効果が効いていると察せられてしまえば、更にくっ付いてくるかもしれない。
俺が一人で心の中で慌てていると、
「確かに、ここまで普通に対応されていると貴方はとても催淫に対して耐性を持っている人なんでしょう」
カーヤさんがそう言って更に腕に自身の腕を絡ませてくる!?
「…えっとカーヤさん?何で納得している様な事を言いつつ、更に密着してくるんでしょう?」
俺がそう言うと、
「特に理由はありませんよ」
カーヤさんがそう言って服のボタンを1つ外す!?
こんなに密着しているのだ、上からカーヤさんの胸が少し見えてしまう!
マ、マズい!
これ以上このままだったら襲ってしまうかもしれない!
俺はそう思い、
「そ、そうだカーヤさん!ルリィが甘い物を作ると言っていましたよ!カーヤさん、甘い物好きでしたよね?」
強制的に話題を変えて、2人っきりの空間から脱出しようと試みる。
だが、
「…まぁ甘い物は好きですが、ルリィさんの事です。残しておいてくれると思うので今すぐに行かなくても大丈夫だと思います」
カーヤさんは腕を放してはくれず、むしろ更に抱きしめてくる…。
あぁ、カーヤさんの甘い匂いが…。
……………ハッ!!
いけないいけない、一瞬意識が持って行かれそうになった…。
落ち着け俺、ここでカーヤさんを押し倒してみろ。
後に待っているのは、死だ。
俺はそう思いつつ、何か意識を逸らせられる物は無いかとキョロキョロと視線を移動させると、俺はある所に気がついた。
それは、淡々とした表情で俺の腕を抱いているカーヤさんの少し尖った耳が、僅かに赤くなっている。
…もしかして、カーヤさんも恥ずかしがっているのか?
俺はそう思うと、
「カーヤさんって、お付き合いをしていた人とかいたんですか?」
カーヤさんにそう質問してみた。
すると、
「いえ、私は淫魔ですがお付き合いをしたことはないです。勿論、男女の営みすら経験はございません」
カーヤさんが俺の事を見てそう言ってきた。
淫魔とかは関係はないが、カーヤさんの様な美人で家事ができる女性なら、告白とかされていてもおかしくはない。
俺がそう思っていると、
「正直、あの時は明日を生きる事が最も重要でしたので、お付き合いなどを考えた事は無かったですね」
カーヤさんがそう言って俺から離れる。
すると、
「ですが、今は生活が安定してきました。ですので、交際をするのも考えています」
カーヤさんが少し微笑みながらそう言った。
おぉ、そう思える程安心した生活を送ってくれて良かった。
俺はカーヤさんの言葉に喜んでいると、
「ですが、私の身近には男性は1人しかいません」
カーヤさんがそう言って、また俺の事を見てくる。
…俺の事…だよな。
俺がそう思うと、
「ですので、必然的にその人との仲を深めるべきだと思うのですが、貴方はその事をどう考えますか?」
カーヤさんが俺に聞いてきた…。
また凄く答えにくい事を質問してきたな…。
カーヤさんの仲を深めるという言葉は、先程の話から恋人になる事を前提としているはずだ。
俺がそう思っているとカーヤさんは更に、
「ちなみに、私はその人と親しい関係になる事が良い事だと思っています。私の事を差別しないで、周りの女性と同じように接して下さり、接する事を許して下さっています。今まで淫魔と言うだけで言い寄られたり、悪事に加担する様に言って来たリする人が大勢いました。実際、私は違法ではありませんが、自分でも駄目な事をしていた自覚はあります。でも、その事を知っていても変わらず接して下さる事に、私はとても感謝をしています」
そう続けた。
…これもう、半分告白と一緒なのではないだろうか?
俺はそう思い、
「えっと、カーヤさんはその人が好き…なんですか?」
そう聞いてみる。
するとカーヤさんは俺の腕から自身の腕を放して、指をモジモジと弄りながら、
「す、好き…という感情は…分かりません。しかし、貴方が他の女性と親密そうに話していたりすると、羨ましいという気持ちになったり、時間は掛かっても同じくらい親密になりたいと、思ったりはします。…こ、これがす、好きという感情なのでしょうか?」
そう言った。
俺はその言葉を聞いて、
「多分、好きという感情なんだと思いますが、俺もはっきりとは言えませんね。好きって、人それぞれ色々な意味や理由があると思うんです。だから、今のカーヤさんのその感情が好きなんだとは、俺からは言えません。でも、これからカーヤさんがもっとその感情に向き合って出した結論を、俺は聞いて向き合いたいと思っています。だから、今は焦らずにゆっくりと互いを理解して、話していきたいと俺は思っています。カーヤさん、ありがとうございます」
俺はカーヤさんにそう伝えて頭を下げる。
すると、
「そ、それはつまり、前向きに考えても良いと言う事ですよね?後から、ごめんなさいなど許しませんからね?」
カーヤさんは少し恥ずかしそうにしながらも、そう言って赤く染まった顔で微笑んでくれた。
…このドキドキはおそらく、催淫ではないな。
カーヤさんの事を見ながら俺はそう思い、言いませんよとカーヤさんに言った。
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