番外編 アウレーテ編 自分が出来る事
アウレーテさんの言葉を聞いた俺は、最初はワクワクというか初めての味を味わう楽しみでお茶を飲もうとした。
だが、今は少し緊張している。
何故ならそれは、
「……………」
俺がお茶が入ったカップを手に取った瞬間、アウレーテさんが俺の動きをジッと見つめて監視をしてくるのだ。
まぁ、本人は監視と言うよりも緊張して俺の動きが気になっているだけなのだと思うのだが、それでもここまで見つめられていると少し飲みにくい…。
俺はそう思いつつ、お茶が入ったカップに口を付けようとすると、おそらくアウレーテさんが育てたハーブの爽やかな香りが分かる。
嫌な爽やかさでは無いな。
俺はそう思って、カップに入ったお茶を口に含む。
香りと同じように爽やかなお茶だが、何か甘い香りもする。
…砂糖とかでは無い感じだが、俺はそこまで味覚に自身が無いからな。
俺は少しそんな事を考えて、カップから口を離して、
「美味しいですね。運動した後とかに飲むと良い感じがします。…あと、微かに甘い香りがしたんですが、何が入っているんですか?」
お茶の感想をアウレーテさんにして、甘い香りの正体を聞いてみる。
すると、緊張して少し顔が強張っていたアウレーテさんの表情が和らいで、
「良かったです。…ふふ、乾燥させた果実を合わせているんです」
俺の質問にそう答えてくれる。
なるほど、果物の香りだったのか。
俺がそう思ってお茶を眺めていると、アウレーテさんも優雅な動作でお茶を飲む。
俺はお茶を楽しんでいるアウレーテさんを見て、
「アウレーテさんはこっちに来てからお茶を始めたんですか?」
そう聞いてみた。
アウレーテさん達の世界では、こうやってハーブなどのお茶を簡単に出せないと思う。
俺がそう思っていると、
「そうですね。元々ハーブ自体は様々な効能があると思って育てて試したりしていたんですが、茶葉として使うとは思っていませんでした。元々お肉の匂い消しに使っていたりしていたので、食べたりしても問題は無いと思っていたのですが、そのまま食べる機会は無かったので…。そんな時にレイカさんが、お家から持って来たハーブティーを飲んで、もっと詳しく知りたいと思ったんです」
アウレーテさんが俺の質問に答えてくれる。
怜華さんの持って来たハーブティーが、アウレーテさんの興味を更に引いたのか。
俺がそう思っていると、
「ルネリアとは、最近どうですか?」
今度は、アウレーテさんが俺に質問をしてきた。
「ルネリアと…ですか?…う~ん、特に変わった事は無いと言いますか、いつも通りたまに魔法の練習に付き合ったり、一緒に本を読んだりしているくらいですね」
俺は、ルネリアとの最近の生活を思い出しながらアウレーテさんの質問に答える。
すると、
「ルネリアさん、シュウさんと一緒に魔法の練習をするのを楽しみにしていますよ。約束した前日なんか、皆さんよりも早くお風呂に入って寝る準備をしているんですよ。楽しみで寝付けないのと、寝不足ではシュウさんに心配させてしまうから…と」
アウレーテさんが微笑みながら俺にルネリアの事を教えてくれる。
「あぁ、だからいつもならヨハナさんに促されてお風呂とかに行くルネリアが、たまにヨハナさんに声を掛けてお風呂に行ったりしてるんですね」
たまにあるそういう珍しい光景を覚えていた俺は、その謎が解けてすっきりした気分になる。
単純にルネリアかヨハナさんに聞いても良かったとは思うのだが、正直わざわざ聞く事でも無いかもしれないと思って聞かなかったのだ。
「可愛いでしょう?」
俺がそう思っていると、アウレーテさんが笑顔で俺にそう聞いてくる。
「そうですね。そんなに楽しみにしてくれるなら、俺ももっと期待に応えられるように頑張らないと!」
俺がアウレーテさんの言葉にそう返事をする。
すると、
「じゃあ、ヨハナとは最近どうですか?」
今度はヨハナさんとの事を聞いてくるアウレーテさん。
2人の事が心配なのだろうか?
俺はそう思いつつ、
「ヨハナさんとは…少しだけ前より仲良くなった気がします。前まではルネリアの付き添いの様な感じで対応していた感じだったんですけど、今はルネリアがいなくても俺の部屋に遊びに来たりしています」
最近のヨハナさんとの事をアウレーテさんに伝える。
俺の言葉を聞くと、アウレーテさんは少し驚いた様子で、
「ヨハナが、1人でシュウさんのお部屋に遊びに行ったということですか?」
そう聞いてきた。
確かに、前までは俺とルネリアが仲良くしてると警戒したりしてきたから、ヨハナさん自身が俺と2人になる事を避けると思っていた。
それはアウレーテさんも同じ様に思っていたと思うから、今のヨハナさんの行動に凄く驚くのは無理もないだろう。
俺はそう思いつつ、お茶を口に含む。
すると、
「お口に合って良かったです」
アウレーテさんが安心した様にそう言ってきた。
「美味しいですよ。それにしても、アウレーテさんは何でハーブティーに興味があったんですか?」
俺がアウレーテさんにそう聞くと、彼女は少し寂しそうな表情をして、
「シュウさんもご存知の通り、私達の世界は色々と厳しい環境でした。怪我をしても酷くならない様に洗って放置が多かったり、病気を治す薬も買えない程お金に困っていました。その時、森で採ったハーブが怪我に良い事を知って、上手く活用できないか調べようと思って育て始めたのが理由ですかね。私はあまり戦力にはならないので、勇騎士団に入ってからも基本的には事務や手入れなどの後方の事しかしていませんでしたから。だから、ハーブの栽培と使い方を学ぶ事が、過去と今の私に出来る事なんだと思っています」
俺の質問に答えてくれる。
俺がアウレーテさんの言葉に返事をしようと口を開くと、
「でも今は村の環境が変わって、私のやるべき事は意味が無いのか…と少し考えてしまいます」
アウレーテさんが続けてそう言ってきた。
俺はその言葉に、
「そんな事はありません。アウレーテさんの村の人達の事を想って始めた事が、無意味なんてありえません!」
全力で否定の言葉を放った。
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