番外編 アウレーテ編 庭
俺は今、屋敷の部屋で勉強をしている。
今日は皆でサンレアン王国の大通りで行われている祭りの様なモノに行っているのだ。
つまり、屋敷はいつもよりも静かで集中しやすい。
最初は皆に一緒に行こうと誘われたのだが、どうしても今やっている勉強を理解したいとお願いして、先に行ってもらっている。
俺も勉強が一区切り出来たら、皆の元に行くつもりだ。
遠くから聞こえるサンレアン王国の賑わっている声に、俺は更に目の前の勉強を集中する事が出来る。
全く静かよりも、少し周りに音がした方が俺は集中出来る。
逆に音楽を聴きながら勉強は、何故か集中出来ない…。
俺がそう思いつつ参考書を開いて勉強を続けていると、何やら近くで音が聞こえる。
…何の音だろう?
俺はそう思いながら特に気にしないで勉強を続けようとしたが、聞こえてくる音が思った以上に近い事に気づいて、一応少し見て回るかと思い席を立つ。
席を立って窓から外を見ると、特に誰かいる訳でもなさそうだ。
俺はそう思いながらも、
「でも、こっちから音が聞こえたよな」
独り言を呟く。
俺がそう呟いた瞬間、
「あら?シュウさん?どうしたんですか?」
「うわっ!…アウレーテさん?」
突然アウレーテさんが草木の間から現れる。
突然声を掛けられて、失礼な驚き方をしてしまった。
俺はそう思いながら、アウレーテさんの事を見る。
髪の毛の色が緑色だったから、パッと見て気づかなかった。
それに着ている服も、作業用の服を着ている所為か保護色みたいになっていた様だ。
俺はそう思いながら、
「どうしたんですかアウレーテさん?皆と街に行ったんじゃないんですか?」
そう聞いてみると、アウレーテさんは土が付いている手袋を取って、
「い、いえ。今日は日差しが良いので、新しい苗を植えているんです」
そう言いながら、何故か恥ずかしそうな表情をしている。
どうしたんだろうか?
俺がそう思っていると、
「す、すみません、こんな恰好をお見せしてしまって…」
アウレーテさんがそう言ってくる。
なるほど、普段見せない格好だから恥ずかしいのだろう。
「いえ、大丈夫ですよ。それにしても、庭の手入れはルリィとエルミールが主にしていたと思っていたんですが、アウレーテさんもしていたんですね」
俺がそう言うと、
「私はお庭の一部をお貸ししてもらって、ハーブなどを育てているんです。その代わりに、お手入れのお手伝いをさせてもらっています」
アウレーテさんがそう答える。
ハーブ、そう言えば最近屋敷の中がミント系というかサッパリとした香りがしていたな。
「屋敷の香りも、アウレーテさんのハーブですか?」
俺がそう聞くと、
「はい。と言っても、特に何か特別な事をしている訳では無いですよ。屋敷のお部屋自体が大きいので、ハーブやお花を活けたりしています」
アウレーテさんが俺の質問に答えてくれる。
すると、アウレーテさんが恥ずかしそうな顔で、
「あの、顔とかに土が付いていたりしてないですか?さっき土が付いている手で汗を拭ったりしていたので…」
そう聞いてきた。
俺は、俺に対して恥ずかしそうにしているアウレーテさんの顔を見つめ、よく観察した後に、
「大丈夫そうですよ。土が付いている様には見えないです」
そう答える。
それにしても、アウレーテさんと話すといつものんびりとした会話になるな。
アウレーテさんがのんびりとしている訳では無く、この人の穏やかな会話の仕方と雰囲気がそうさせているのかもしれないな。
怒った時は静かにだが、とても怖いのだが…。
俺も少し経験はあるし、ヨハナさんが俺に対して少し怒った様子で言葉を放ってくる時に、アウレーテさんが静かにヨハナさんを静かにしているのを見ている。
俺はそう思いながら、
「何か手伝う事とかありますか?…と言っても、力仕事くらいしか出来そうにないですけど…」
アウレーテさんにそう聞いてみると、アウレーテさんは笑顔で、
「いえいえ、シュウさんも何かやるべき事があるんですよね?そちらを優先してください」
そう言ってきた。
正直、勉強はアウレーテさんの手伝いをしたらすぐに再開できると思っていたが、彼女にここまで言われてしまったら、無理に手伝おうとするのは良くないな。
俺はそう考えて、
「分かりました。でも、無理はしないでくださいね。何かあったら遠慮なく声を掛けて下さい」
アウレーテさんにそう言うと、
「はい。その時はお声をかけますね」
アウレーテさんはそう答えて、庭の奥の方へと歩いて行ってしまった。
俺はその後姿を見送りつつ、勉強を再開するために机へと戻る。
「よし、じゃあアウレーテさんも頑張ってるんだ。俺も頑張らないとな」
俺はそう呟いて、勉強を再開した。
その後、俺は数時間机に噛り付いて勉強をして少し集中力を落ちてきて、少し休憩をしようと動こうとした時、
コンコンコン
部屋の扉がノックされた。
すると、
「シュウさん、お茶を淹れてきたので少しよろしいですか?」
扉の向こうからアウレーテさんの声が聞こえた。
「は、はい!今開けます!」
俺は突然の事に少し驚きながらもアウレーテさんにそう返事をして、部屋の扉に駆け寄って開ける。
扉を開けると、目の前には少し前にあった時とは違って、私服を着ているアウレーテさんが立っていた。
「わざわざありがとうございます。どうぞ」
俺がそう言うと、
「いえそんな!そろそろおやつ?でしたか?その時間だったので…」
アウレーテさんが微笑みながらそう言ってくれて、部屋の中へと入ってくる。
あれ?こう思うと、アウレーテさんが俺の部屋の中に入ってくるって、相当珍しいんじゃないか?
俺がそう思っていると、
「あの、少し机の上を片付けて貰ってもいいですか?お盆が置けないので…」
アウレーテさんが、申し訳なさそうに俺にそう言ってくる。
「すみません!そうですよね!」
俺はアウレーテさんの言葉に、自分が机の上に広げている参考書やノートに気づいて慌てて片付ける。
机の上を片し終えると、アウレーテさんがお盆を置く。
そこには、紅茶でも緑茶でも無いお茶が入ったカップが置かれている。
俺がそう思っていると、
「その、私が作ったハーブのお茶なんですが…味見をお願いしても良いですか?」
アウレーテさんが、少し恥ずかしそうにそう言ってきた。
読んで下さった皆様、ありがとうございます!
ブックマークして下さった方、ありがとうございます!
評価や感想、ブックマークをして下さると嬉しいです。
誤字脱字がありましたら、感想などで報告して下さると嬉しいです。
よろしくお願いします。




