刻下 お正月 新年の挨拶
皆様すみません…。
クリスマスの執筆に力を入れ過ぎてしまい、お正月の執筆があまり出来ませんでした。
初詣、年が明けてから初めて神社などを参拝する事。
その際に昨年の安全を感謝したり、新年の無事や平安を願ったりする。
俺達はそんな初詣を朝起きてから、身支度を済ませてすぐに出発をして神社へ行き参拝をした。
人もそれなりに多く、それに加えて俺の周りの皆が美人だから周りの人達も気になってしまったのだろう。
凄く視線が様々な場所に刺さった。
神社に行ってからは、おみくじを引いたり暖かい甘酒を飲んだりした。
そうして参拝を済ませた俺達はいつもの様に屋敷へと帰ったのだが、そこでアルが一言、
「シュウ達の世界の神に挨拶しに行ったんだから、こっちの神にも挨拶しに行った方が良いんじゃねえか?」
そう言ったのだ。
その言葉を聞いたリーシャが、
「そう言えば最近は全然顔を見せていないわね。あの子も1人ぼっちで寂しがってそうだし、会いに行くのは良い提案だわ。あんなんでも、この世界の神だものね」
アルの言葉にそう返すと、何故か今まで話していた周りの皆が口を閉じて静かになる。
俺はその事に気が付いて、
「どうしたのティア?」
近くにいて怜華さんと話していたティアにそう声を掛けると、
「シ、シュウさん?今リーシャ様とアル様は神レクシシュ様に挨拶に行く……そう言っていた様に感じたのですが、私の聞き間違いでしょうか?」
ティアが震える声で、俺にそう聞いてきた。
俺はそんなティアの様子を見て、ティアも含めてレクシシュ様に会った事があるのは誰もいない事に気づく。
いつもはリーシャやアルと一緒にレクシシュ様に会っていたから気が付かなかったが、ティア達は誰もレクシシュ様に会った事が無いのだ。
流石に神様に会うのは緊張してしまうだろう。
俺がそう思っていると、
「大丈夫よティア。レクシシュに尊大な神の姿を想像したら、幻滅する事になるわ」
リーシャがティアに向かってそう言う。
…レクシシュ様は凄い人なんだろうけど、あのお菓子好きと面倒くさがり屋な所を見たら、少し緊張も解れるかな?
俺がレクシシュ様の言動を思い浮かべてそう考えていると、
「コレットとは話が合いそうだよな。2人共好きな物がお菓子とか甘いモノだからな」
アルがコレットさんを見てそう言うと、コレットさんは自分の事を指差して、
「そんなに似ているの?」
アルにそう問い返す。
その言葉に、
「そうね。レクシシュは一応神ではあるのだけれど、お酒は嫌いだしむしろ甘いお菓子とかを持って行った方が喜ぶわね」
リーシャが同意をすると、手をパンパンと叩いて注目を集める。
そして、
「これから一応この世界の神であるレクシシュに会いに行くのだけれど、一緒に行きたい人はいるかしら?ちなみにレクシシュにあって、想像や神話などとは全然違っても、文句は言わないでね」
そう言うと、周りに視線を移す。
すると、
「あ、あの…私は行っても大丈夫なんでしょうか?こちらの世界とはまた別の世界の住人ですので、レクシシュ様も困ってしまうんじゃないかと…」
ルネリアが申し訳なさそうに手を挙げて質問をする。
すると、ルネリアの質問を聞いたアルとリーシャは顔を見合わせて、
「「大丈夫、レクシシュだし」」
同じ言葉を同じタイミングで言った。
2人にそう言われるレクシシュ様…。
俺がレクシシュ様に何とも言えない悲しい気持ちを抱いていると、
「シュウ様はレクシシュ様にお会いした事があるんですよね?」
ルリィが俺にそう聞いてくる。
すると、
「ちょっと待って下さい。神レクシシュ様は女神だったはずです」
ルリィの言葉を聞いたエルミールが、俺の事を見つめながらそう言ってくる。
エルミールの言葉を聞いたリーシャとアル以外の周りの皆が、俺の事を目を細めて見つめてくる…。
俺がやましい事は何もないと言おうと口を開こうとすると、
「大丈夫よ。あれは外見も中身も子供みたいなモノだし」
「だな!男よりもお菓子を愛してるもんな!」
リーシャとアルが俺の事を庇ってくれる。
すると、
「私と話が合いそうね」
コレットさんが何故か胸を張ってそう言う。
すると、コレットさんが言葉を発した瞬間、
「コレット様はもう少し、お菓子などの甘味を控えないといけないと思います」
エルミールがコレットさんにそうツッコミを入れた。
その言葉にコレットさんが少し拗ねた顔をして、皆がそんなコレットさんの様子に笑う。
そうして、リーシャとアルの提案で皆は俺に手を添えてリーシャの魔法を待つ。
それにしてもティア達の世界の神様に会うからか、ティア達は先程の笑っていた様子とは異なって、少し緊張している様子だ。
コレットさんもブツブツと、
「お会いになれて…光栄…。…?」
丁寧な言葉を発しては、納得が出来ないのか首を傾げたりして言い直したりしている。
一方、ルネリア達も緊張している様子ではあるのだが、顔は楽しそうなワクワクしている感じだ。
俺がそう思っていると、
「ただいま~…」
廊下からヴェロニアさんが、眠そうな顔をしてそう挨拶をしてきた。
するとヴェロニアさんは、広い食堂に集まって更に俺にくっ付いている様子を疑問に思ったのか、キョトンとした顔で俺達の事を見てくる。
そして、
「…何してるんだい?」
今のこの状況がどう考えても理解できなかったのか、それとも疲れている所為でこれ以上考えたくないのか、すぐにヴェロニアさんは俺達にそう聞いてきた。
そんなヴェロニアさんにアルが、
「これからこっちの世界の神に会うんだが、ヴェロニアも一緒に行くか?」
そう質問をすると、ヴェロニアさんは少し考えた後、
「今日は止めておくよ。旅の道中に面倒事に巻き込まれてね…。くたくたなんだ~…」
そう言ってヴェロニアさんは、ふらふらと廊下へと消えていった。
最近ヴェロニアさん、帰ってくると疲れてるな。
一体何をしているんだろう?
俺がそう思っている内にリーシャが魔法の準備を終わらせて、皆も俺の体に手を添えている。
そして、
「行くわよ、転移!」
リーシャの魔法により、俺達は屋敷から一瞬で移動した。
そうして俺達はレクシシュ様に会いに来たのだが…。
「………」
リーシャの転移魔法でレクシシュ様がいる空間にきた俺達の目に映ったのは、目は虚ろになっていて口は半開きのままの、抜け殻になっているレクシシュ様だった…。
「何やってるのよレクシシュ?」
リーシャがそう言ってレクシシュ様に近寄る姿を見て、初めて見るレクシシュ様に驚く周りの皆。
だが、
「お、思ったよりも神様っぽくないですね…」
ルネリアのそんな一言に、皆も気まずそうに頷く。
レクシシュ様、神様に見えないとか言われてしまってますよ…。
俺がそう思っていると、
「どうせ、色々溜まっている仕事がまだあり過ぎて意識を手放しただけだろ」
アルがそう言いつつ、レクシシュ様の前に置かれている大きな机の上を見る。
そして、
「ほらな、半分も終わってねぇ」
アルが苦笑いをしながら机の上から1枚の書類を手に取る。
「レクシシュ?ほら、しっかりしなさい」
アルが書類を手に取って読み始めると、リーシャがレクシシュ様の肩を叩いたり、揺らしたりしながら声を掛ける。
だが、
「シゴト…ヤダ…。ワシ…ネル…。オコスナ…」
リーシャの言葉にレクシシュ様は少し単語を発した後、首をガクッと傾ける…。
レクシシュ様のそんな様子に、
「…アル、レクシシュの仕事の方はどんな感じなの?」
リーシャは少し息を吐いてから、未だ書類を読んでいるアルにそう問いかける。
すると、
「ん?内容はオレ達が今までやって来た事と大差ねえな。これから手伝ってやれるぞ」
アルがそう言うと、リーシャは申し訳なさそうに俺達を見て、
「皆、少し悪いのだけれど手伝って貰えるかしら?折角の新年なのに、仕事を手伝わせるのは心苦しいのだけれど…」
そう言ってきたのだ。
俺はそんなリーシャを見て、
「大丈夫だよリーシャ。それに、レクシシュ様だって一応毎日お仕事頑張ってるから、新年くらい休ませてあげないと罰が当たりそうだもんね」
俺はそう返事をすると、
「わ、私にもお手伝い出来る事がありましたら、何でもお手伝いします!」
「そうね。神様に恩を売っておくのは後々良い事だわ」
ティアと怜華さんがそう返事をすると、他の皆も仕事の内容を教えて欲しいとリーシャに言う。
そんな皆の言葉に、
「じゃあ、さっさと始めましょう。……こんな状況でも目を覚まさないって事は、本当に疲れていたのね」
リーシャはそう言いながら机の上から書類を何枚か選び始める。
俺はそんなリーシャの言葉を聞いて、確かに普段のレクシシュ様ならここで元気に、
「いやったのじゃぁ~ッ!」
そう言って飛び上がりそうなのだが、未だに燃え尽きている様子。
本当に頑張ったのだろうな。
「ほれティア、この書類達に判子を押してくれ。屋敷でやっている仕事とさほど変わらないから、ドンドン押しちまっていいからな」
「ルネリアとヨハナ、アウレーテはこの書類の山をティアに任せるモノとそうでないモノを分別して欲しいわ。このすでに2つ判子が押されているのがティアに任せるモノよ」
俺がそう思っていると、アルとリーシャが次々と皆に指示を出していく。
「シュウは今は必要じゃない書類を、出来るだけ綺麗に並べて積んでおいてくれ。…以外に重労働だからな!」
アルの指示を聞いて、俺も移動を開始する。
その後、俺達は各自それぞれの分担された仕事を行い、二時間後に全てが片付いた。
その間に、
「これ…地形の構築とか書いてあるのですが…。簡単に判子押しても良いんでしょうか?」
「この文字、何の文字か分からないのだけれど…」
「神だけが使う文字だから、読めねえのは仕方ないぞ。オレはスキルで理解できるが、あのリーシャでさえ読むのに苦労しているくらいだからな」
「何年読もうとしても、全く理解できないのよね。まずその日その日で形が変わるのがいけないと思うわ」
リーシャやティア達が、少し文字を理解するのとか仕事の規模の大きさに苦戦していた。
そうしてレクシシュ様の仕事を皆で終わらせると、
「ほらレクシシュ。仕事は皆が頑張ってくれたおかげで終わったわよ。起きなさい」
リーシャが未だ眠っているレクシシュ様に声を掛ける。
すると、
「…わしは…一体…ハッ!仕事!」
レクシシュ様が慌てた様子で意識を覚醒すると、キョロキョロと周りを見て手を変な感じに動かす。
どうやら、仕事をしようと勝手に動いている様だ。
俺がそう思っていると、
「ん?おや?どうしてリーシャがおるんじゃ?」
レクシシュ様がリーシャの姿を確認して、そう呟いた。
その呟きを聞いたリーシャは、
「レクシシュに新年の挨拶に来たのよ。そうしたらあんたが仕事の量に負けて気絶したから、皆で分担して終わらせたわよ」
簡単にレクシシュ様に説明をしてくれる。
すると、
「おぉ!そうだったのか!それは悪い事をしたのぉ!ありがとう皆の者!おかげで当分食っちゃ寝の生活が出来るわ!」
レクシシュ様が本当に手伝っても良かったのだろうか?
と、疑問に思ってしまう事を言いながら嬉しそうにお礼を言ってくる…。
そして、
「新年の挨拶なら、宴会でもするかの!」
レクシシュ様のその一言で、今まで仕事をしていた空間に一瞬で豪華な…お菓子とケーキが出てきた…。
ま、まさかレクシシュ様って、主食がお菓子などの甘いモノなのだろうか?
俺がそう思って愕然としていると、
「何これ天国!ここは天国なのッ!?」
いっぱいに並べられたお菓子の山を見て、コレットさんが少しキャラ崩壊をしながら嬉しそうな声を出す。
その後、お菓子食べて元気になったレクシシュ様に改めて新年の挨拶をして、最初は緊張していたティア達もお菓子を食べているレクシシュ様に慣れたのか、時間が経つにつれて話が出来る様になっていった。
そして仕事を手伝った皆に、
「大変助かったのじゃ!今年はお前達にとって良い年になる!わしが保証するからのぅ!」
レクシシュ様はそう言って、手のひらに出現させた淡い光を俺達に向かって投げると、淡い光が俺達の体を覆い光は消えていく。
その様子を見ていると、
「これで、今年も安心して過ごせるぞ!もしかしたら、もっといい事があるかものぅ~。しっしっし」
レクシシュ様がそう言って俺の事を見ながら笑う。
な、何で俺の事を見て笑うんだろう?
俺がそう思っていると、
「何でシュウを見て笑ってるのよレクシシュ?」
リーシャがレクシシュ様にそう聞くと、
「子供、できるかもしれないのぅ」
レクシシュ様がそう言った。
その瞬間、今まで和気藹々としていた雰囲気が吹き飛んで寒気が襲ってくる…。
恐る恐る周りの皆を見ると、獰猛な獣の様な空気を纏って笑っている皆が見える。
そして、
「それは良い年になりそうね。……ね?シュウ」
リーシャの微笑みに、俺はただ頷く事しか出来なかった。
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