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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
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番外編 ヨハナ編 責め?

俺は未だに頭を下げているヨハナさんを見て、


「…ヨハナさんが罪悪感とかで、皆の手伝いをしていた事は分かりました。頭を上げて下さい」


そう言うと、ヨハナさんが顔を上げる。

その表情は、少し悲し気である。

彼女のその表情に、俺はもう気にしないで大丈夫ですからと伝えたくなるが、それではヨハナさんの罪悪感を消し去る事は出来ないだろう。

俺はそう思い、


「…改めてこう思うと、あの時結構冷たい対応をされましたよね」


ヨハナさんにそう言う。

すると、ヨハナさんが体をビクッと震わせて表情を暗くする。

…今すぐにでも撤回したいのだが、ここは我慢だ。

俺は自分の気持ちを出さない様に、


「今でこそ気にしないでと言えますが、あの時は悲しかったです」


そう短く言う。

…長く話したら俺が途中で…でも大丈夫だから、全然気にしないでね!

と言ってしまいそうだ…。

俺はそう思いながら、


「ヨハナさんは、今の俺の気持ちを聞いてどう思います?」


暗い表情をしているヨハナさんにそう聞く。

…心を鬼にしろ!

………最低だ俺、ずっと俺に対して後ろめたい感情を持っていたヨハナさんに、そんな質問をするなんて…。

俺が自分の心と戦っていると、


「…謝る事しか出来ないわ。あの時の私は、ただ盲目的にあの男に憧れていたの。しっかりと、貴方の言葉に耳を傾けていたらと思うと、後悔しかないわ。……本当にごめんなさい」


俺に質問をされたヨハナさんが、そう話してくれる。

本当ならもう少し冷たい事を言った方が良いのかもしれないが、それはこれ以上ヨハナさんを追い詰めたくない気持ちと俺の罪悪感でこれ以上は言いたくない!

俺はそう思い、


「じゃあこれからは贖罪の意味も兼ねて、ここで俺の事を信用できるか見ていて下さいね」


そう言う。

すると、ヨハナさんが少しキョトンとした後、


「えっと、それはどういう意味なの?」


俺にそう聞いてきた。

まぁ、俺もあまりにもヨハナさんが悲しげな表情をするからすぐに話を変えたのは悪いと思う。

もう少しゆっくりと話したい気持ちもあったが、俺の心が罪悪感で一杯になる。


「そのままの意味です。これからは俺の事を信用出来る様に、近くで見ていて下さい。ヨハナさんの信頼を勝ち取ってみせますから」


俺はヨハナさんの質問にそう答えて、一度お茶を口に含む。

流石に温くなって来てるな。

俺がそう思っていると、


「まだ、私に猶予をくれるの?」


ヨハナさんがそう聞いてくる。

猶予とか、そんな堅苦しいモノとは考えて欲しくない。


「猶予とかじゃないですよ。元々ヨハナさんの事を責めるつもりは無いです。むしろ、さっきは責める様な事を言ってすみません」


俺がそう謝罪をして、ヨハナさんに頭を下げる。

すると、


「あ、頭を上げて!シュウが私に謝る事なんてないんだもの!」


ヨハナさんが慌てた声で俺に声を掛けてくる。

それと同時に、ヨハナさんが俺の元に駆け寄って来て何やらアワアワしだすのが分かる。

何て言うか、ここまでヨハナさんが狼狽えているのも珍しい。

たまにルネリアと一緒にいて、ルネリアの爆弾発言とかそういう系の話の時に狼狽えているのはよく見るのだが、今は俺と2人。

何だろう、いつものヨハナさんよりこちらの方が本音で話している様だ。

俺がそう思っていると、


「ね?頭を上げてシュウ!」


ヨハナさんが俺の顔に両手を添えて動かそうとしてくる。

…ヨハナさんが俺に触れてくるなんて、本当に今日は珍しい。

俺はそう思いつつ、ヨハナさんの手の動きに合わせて頭を上げると、目の前にヨハナさんのお腹が目の前に!

俺は驚いたと同時に冷静に判断をして視線をヨハナさんのお腹で止める。

ここでヨハナさんの顔を見ようとしたら、顔を見る前に胸を見る格好になってしまう。

このほんわかとした空気を維持したい俺は、ここでヨハナさんを恥ずかしがらせる事や怒らせる様な事はしたくない。

俺はヨハナさんのお腹をガン見しながらそう考えながら、この後どうするかを考える。

すると、俺の頬に添えられていた手が移動して頭に移動をすると、


「そ、その…撫でても良い?」


ヨハナさんが俺にそう聞いてくる。


「は、はい。全然…どうぞどうぞ」


俺がヨハナさんの質問に困惑しながらそう答えると、頭に置かれていた手が俺の頭を撫で始める。

…いつもは俺が誰かを撫でる事が多いから、少し新鮮だな。

俺がそう思って、


「なんか、ヨハナさんとこんなにゆっくりとした時間を過ごすの、初めてなんじゃないですか?」


ヨハナさんにそう聞くと、


「…そうね。何かと誰かが一緒にいたり、騒がしい時だったりしていたから…。シュウと一緒にここまで静かな時間は、初めてかもしれないわね」


ヨハナさんも、俺と同じ意見の様だ。

俺は頭を撫でられる感触を堪能しつつ、


「これからは、こんな時間を一緒に過ごせたらいいですね」


ヨハナさんにそう声を掛ける。

すると、俺の頭を撫でていた手が一瞬止まり、少ししてからまた動き始める。

だが、先程よりも少しぎこちない動きをしている。

何かマズい事を言ってしまっただろうか?

俺がそう思って先程の言葉を思い出していると、


「…えぇ。でも、シュウはなかなか私と2人の時間を作ってくれないんだもの。今のままじゃ、これが最初で最後かもしれないわ」


ヨハナさんが俺にそんな事を言ってくる。

少しだけ、いつものヨハナさんに戻っている。

いや、前のヨハナさんよりも雰囲気と言葉遣いが優しい。

俺はそう思いながら、


「それは少し寂しいですね。…これからはヨハナさんとの時間を作れるように頑張りますよ。…そしたら、一緒に話したり、こうやってゆっくりとした時間を過ごしましょう」


ヨハナさんにそう言う。


「……楽しみにしてるわ」


少し間があってから、俺の言葉にヨハナさんがそう答えてくれた。

その後、ヨハナさんは俺の頭から手を離して俺の部屋のベッドに座ると、気が抜けたのか少ししてから寝てしまった。

俺は寝ているヨハナさんを起こさない様に掛け布団を掛けた後、俺は彼女に背を向けて参考書を開く。

…ヨハナさんとの時間を作るために、さっさと公式を頭に刻み込む。


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