刻下 クリスマス 素直な夜
皆様メリークリスマス!
思った以上に書いてしまった…。
読みにくいかもしれません、ごめんなさい。
今日はクリスマス、皆でケーキを食べたりして幸せな時間を過ごす日なのだ。
………そう思っていたのだが…。
「リーシャさん?いい加減その場所から離れる気はないんですか?」
「あらレイカ?ここは私の場所よ?」
俺の右隣にいて俺の二の腕に抱き付いているリーシャと、その場所と自分の場所を交換しようとリーシャと話をしている怜華さんが、互いに視線をぶつけ合っている。
「えっとリーシャ?何で今日はそこまで頑なに俺の腕に抱き着いているの?」
俺はリーシャにそう聞く。
実はリーシャ、今日の朝起きた時からずっと俺の腕から離れないのだ。
どこに行くにもリーシャと一緒なのは問題ないのがほとんどなのだが、周りの視線がとても厳しい。
俺が皆の事をチラッと見ていると、
「今日はくりすますなのよ。この間シュウの家のてれびで、くりすますは愛している人とずっと寄り添っていたい日だと言っている人がいたわ」
リーシャが珍しく、俺にそう言ってぷくぅと頬を膨らませる!?
可愛すぎてにやけそうな顔に力を入れつつ、俺はここまで感情の抑制が出来ていない理由を探す。
いつもなら、リーシャがここまで甘えてくることは少ない。
甘えたいと思っている時などは、それとなく俺の左手の小指を弄ってくるくらいだ。
それが、今日は大胆な行動をしている。
俺がそう思った瞬間、
「んぁ?どうしたんだ?」
廊下から食堂に入って来たアルが俺達を見てそう声を掛けてきた。
俺がそんなアルに目を向けると、そこには両手に大きめの瓶が握られている…。
俺の目が正しいのなら、ワインなどの瓶の様な気がする。
俺がそう思っていると、
「あ、アル様!?どれだけお飲みになったんですか!お酒の匂いが酷いですよ!」
アルの元に小走りで駆け寄ったルリィが、アルにそう声を掛けながら両手に握られている瓶を取ろうとする。
すると、
「待て待てルリィ!まだ残ってるんだよぉ」
ルリィの手を避けつつアルがそう言い、食堂に置かれている椅子に座って瓶をテーブルの上にドンッと置く。
い、勢いで割れないかな?
俺がアルの様子を見てそう思っていると、
「もしかして、魔法酒ですかこれ?」
ティアがテーブルの上に置かれた瓶を見て、アルにそう質問をする。
すると、
「流石だなティア!王族だけあって魔法酒を知ってたか!」
アルが嬉しそうな顔でティアにそう言う。
「魔法酒?」
俺は知らない単語を聞いてティアの事を見ながら、
「魔法酒って何?」
そう聞く。
ティアは俺の言葉を聞いて、
「魔法酒って言うのは、果実酒などを作る際に魔法を付与して完成させるお酒よ。主に精神に干渉する魔法を付与します。作れる人が少ないので貴重でして、お値段も凄いと思います」
そう教えてくれる。
すると、
「こらシュウ~。ティアとばっかり話していないで、私にも構って欲しいわ」
リーシャが俺の頬を指で突っつきながらそう言ってくる。
俺はそんないつもとは全然違うリーシャの様子を見て、
「まさか、朝からアルとお酒を飲んだの?」
リーシャにそう聞く。
すると、俺の質問を聞いてリーシャが口を開く前に、
「朝寒かったからな。それに今日は特別の日だろ?一石二鳥で良いじゃねえか!」
アルが俺にそう言ってきた。
まぁ、毎日している訳では無いから俺も特には何も言わないが…。
俺はそう思いながら、
「ねぇシュウ~?アルと話してないで私にも構って欲しいわ~」
俺の体に自身の体を押し付けてくるリーシャを見て、ある事に気がつく。
「あれ?確かリーシャってどんな魔法でも完全に防ぐスキルがあったよね?あの効果は?」
俺が気づいた事にそう言うと、
「むぅ…。たまには私だってシュウに甘えたくてわざとスキルを解除したのよ。だからもっと甘やかせて~」
リーシャが更に体を押し付けてくる!
リーシャの良い匂いと、体の柔らかさが凄く感じます!
俺がリーシャの密着具合にドキドキしていると、
「それでアル様?その魔法酒は一体どんな魔法を付与してあるのですか?」
俺とリーシャの様子を見ていたティアが、少し顔を赤らめながらアルにそう質問する。
ティアに質問されたアルは魔法酒の瓶を大事そうに撫でながら、
「素直になれる…いや、普段思ってる事とかしてみたい行動を自発的にしちまう魔法が付与してあるんだよ。だから、素直になれると言うよりも素直にしちまうって感じだな」
そう言う。
すると、何故か周りの空気が一瞬張り詰めたのを感じた。
な、何だ?
俺がそう思っていると、
「あ、アル様はもうお飲みになられました?」
ティアがアルにジリジリと近寄りながら質問をすると、
「オレはまだ飲んでないぞ。まだ残ってた酒があったから、それを飲んでからにしようと思っていたんだ」
アルがティアの質問にそう答える。
すると、
「では、残りのお酒は残しておきましょう。ティアリス様、アル様に魔法酒を飲んで貰いましょう。後、コップを人数分持って来ますッ!!」
いつの間にかアルの隣に移動していたルリィがそう言うと、また普段は使わない様な瞬発力で移動してアルの持っていた瓶を片方を厨房に持って行ってしまう。
俺がルリィの一連の行動を見ていると、
「よろしくお願いします。さぁ、アル様?その魔法酒の瓶をお貸し下さい。注がせて頂きます」
ティアがルリィの言葉を聞いて、すぐに行動を開始した。
え?
凄く息が合っているんですけど?
俺がそう思ってティアを見ていると、
「王女様に注いで貰えるなんて、嬉しいなぁ~!」
アルが陽気そうに笑いながらそう言う。
なんか、今日はアルの行動がおじさんっぽい気がする。
あと皆は何でとても真剣な表情で順番待ちをするかのように席に座っているの?
俺がそう思って周りを見ていると、ルリィが凄い勢いでお盆にコップを乗せてやって来た。
よく落とさなかったな…。
俺がそう思っている内に、ルリィが皆の前にコップを置いて魔法酒を注いで回る!
やっぱり飲む気なのか!
リーシャ1人でも甘えたがりになっているのに、皆が飲んだら更に酷い状態になるんじゃないだろうか?
俺がそう思っていると、なんと俺の前にも魔法酒の注がれたコップが置かれる!
え、俺も飲むの?
俺がそう思ってルリィや周りの皆に問おうとした瞬間、すでに皆は魔法酒に口を付けていた。
あまりの躊躇いの無さと良い飲みっぷりに、俺は何も言えずにただ次々と空になっていくコップを見ているだけになってしまった。
皆が飲んでしまったんだ、俺だけは飲まないでしっかりとしないといけないな。
俺は自分の前に置かれている魔法酒が注がれているコップを見て、そう決心をする。
瞬間、
「柊ちゃん?何で私には甘えて来ないの?リーシャさんには凄く甘えるのに、何で私には甘えて来ないのよ~?」
「れ、怜華さん?」
怜華さんが普段なら絶対に見せないであろう瞳を潤ませて、少し拗ねている様な表情をして俺にそう聞いてくる。
あまりにも珍しい光景に、俺はすぐに反応する事が出来なかった。
あのどんな状況にも表情を崩さないで冷静な怜華さんが、ここまで素の表情を出すのはマズい。
怜華さんは年上だが、凄く可愛いと思ってしまった。
それにしてもこの魔法酒、効果が凄いな。
俺がそう思っていると、
「お兄ちゃ~んッ!」
「うわっ!春乃!」
突然後ろから春乃が抱き付いてきた!
それにしても、結構無理がある様な気がするな。
椅子の背もたれがあって、春乃も結構大変そうに見える。
俺がそう思っていると、
「…春乃、ズルい……。…いつも柊に抱き付いて、甘やかせて貰って」
俺に抱き付いている春乃を、羨ましそうに見つめてもじもじとしている秋沙。
いつもなら、すぐに服を脱ごうとしてきたりするのだが…。
俺がそう思っていると、
「…お、おにい様」
秋沙がそう呟いて俺の元にやって来る。
なんだこれ?
秋沙がしおらしくて魅力的に見えまくる。
普段とのギャップが、ここまで見え方を変えるなんて…。
俺が秋沙の様子に見惚れていると、
「あ~ッ!!またお兄ちゃんがお姉ちゃんのおっぱいガン見してる!私のも見ろ~ッ!小さいけど、綺麗なんだからねッ!!」
春乃が俺の横から体を乗り出して服を捲ろうとする!
「し、知ってるよ!春乃は凄く綺麗だよね!」
どことは言わないが、とりあえず春乃は落ち着いてくれないとマズい気がする。
俺が慌てて春乃にそう言った結果、春乃は嬉しそうな顔でえへへ~と笑いながら両手で自身の頬を触る。
とりあえず、暴走はしなそうだな。
俺が春乃の様子を見て安堵すると、
「シュウ様!私も綺麗ですか?」
今度はティアが緊張した顔で俺にそう聞いてくる。
「も、もちろんだよ」
俺がそう答えると、
「ありがとうございます!大好きですシュウ様!」
ティアはそう言ってピョンピョンと少し跳ねて喜びを表している。
なんか、少し子供っぽくなった様に見えるな。
俺がそんなティアを微笑ましく見ていると、
「ちょっとシュウ!何でお姉様ばかり褒めるのよ!私にも何か嬉しくなる事を言いなさい!好きだとか愛してるとか添い遂げたいとか!」
コレットさんが怒った様に俺に言葉を掛けてくるが、何故か話の内容はいつもよりも素直な感じだ。
俺がコレットさんのそんな様子に少し戸惑っていると、
「シュウさんも早くお飲みになった方がよろしいですよ。とても美味しいですから」
エルミールが俺の所に置いてあった魔法酒が入ったコップを俺に差し出してくるのだが、ここで俺が飲んだら色々と大惨事になりそうだ。
それはなるべく回避したい。
俺はそう思い、
「あ、ありがとうエルミール。だけど、今俺が飲んじゃったら後始末とか大変だと思うから、今は止めとくよ」
エルミールにそう伝えると、
「わ、私…シュウさんと…一緒に飲みたいです」
エルミールが微笑んだ表情から泣き出しそうな、瞳に涙を溜めて肩を震わせてしまう。
俺はそんな普段のエルミールからは想像できない様子に、
「エルミール!ごめんね!別にエルミールがくれた魔法酒を飲みたくない訳では無いんだよ!」
慌ててそう言ってエルミールが傷つかない様にする。
すると俺の言葉を聞いたエルミールが、
「……ん」
もう一度俺にコップを差し出してくる…。
「あ、ありがとうエルミール」
俺がそう言って彼女からエルミールからコップを受け取る。
受け取ったは良いが、やはりこれを飲んでしまったら……。
「……………」
俺がコップを見ながら悩んでいると、エルミールが瞳をうるうるさせて期待している様な眼差しを向けてくる…。
これはもう、飲むしかない。
確かに色々と心配な事はあるが、これ以上エルミールを悲しませる訳にはいかないな。
俺はコップを見ながらそう決心をし、口に含んで喉を通過させる。
果汁100%濃い葡萄ジュースの様な味がする。
俺がそう思っていると、意識が少しぼやけ始める。
酔った訳では無いだろうが、もしかしてこれが付与されている魔法の効果なのか?
俺がそう思った瞬間、体がそわそわし始める。
落ち着かない気分だ。
俺がそう思うと、
「シュウさん?美味しいですか?」
エルミールが俺に嬉しそうな顔をしてそう聞いてくる。
その言葉に俺は、
「ありがとうエルミール。凄く美味しいよ。ところで、今度一緒お風呂に入ろう」
そんな言葉をエルミールに言い放った!
美味しい事を伝えたかっただけなのに、エルミールの事を見て話した瞬間に自然と言葉を続けてしまった。
これが魔法酒の効果だというのなら、俺は今すぐこの場から去りたい。
でないと、俺は何を皆に言ってしまうのか分からなくて怖い。
俺がそう思っていると、
「よ、よろしくお願いします」
エルミールがそう言って顔を赤く染めて後ろに下がってしまう。
そんなエルミールを見た俺は、
「エルミールの肌、ゆっくり見せてね」
そんな言葉を言ってから、今度はコレットさんの方を向き、
「コレットさんは今度、通販で欲しがっていたお菓子を注文しましょうね」
そう約束をする。
…エルミールさんの時に比べれば、恥ずかしくはない。
元の世界の俺の財布が大ダメージを受ける程度だ。
俺がそう考えると、
「わ、私はエルミールと違ってお菓子なの!私もお風呂に誘え~!」
コレットさんが怒っているのか判断できない声を挙げる。
怒っていると言うよりも、拗ねているのかな?
俺がそう思っていると、
「わ、私は子供が欲しいです!」
ティアが挙手をしながらそう発言をする。
すると、ティアの言葉に続いて、
「私だってシュウの子供欲しいわよッ!私が一番にお母さんになるわッ!」
「柊ちゃんの子供を孕むのは私が最初よリーシャさん?」
リーシャと怜華さんがそう言ってまた睨み合ってしまう。
俺が2人を止めようとすると、
「私もシュウ君との子供は欲しいけど、順番は気にしないから大丈夫よ?それよりシュウ君、今度いっぱい頭撫でて欲しいわ。私も撫でてあげるから。…ね?」
リザベルトさんが俺にそう言って頭を撫でてくる。
「はい。今度1日空けますので、その時はリザベルトさんをいっぱい撫でさせて欲しいです」
俺がリザベルトさんに撫でられながらそう言うと、
「旦那様、私も可愛がって下さい。母上ばっかり甘やかせないで下さい」
エルネットがリザベルトさんを押し出す様に体をゆっくりとぶつけて俺の元に立つ。
「リザベルトさんだけを甘やかせてた訳じゃないんだけどね。エルネット、おいで」
俺がエルネットにそう言うと、彼女は俺の足元に座って俺の膝に顔を乗せてくる。
俺はそのエルネットの頬から顎を撫でて、たまにエルネットの耳に強めに触れる。
すると耳に触れられてくすぐったかったのか、エルネットは顔を赤く染めながら少し身じろぎをする。
「ねえエルネットとリザベルトさん?」
恥ずかしそうにしながら俺に撫でられているエルネットと、そんなエルネットを羨ましそうに見ているリザベルトさんを見て、俺は2人に声を掛ける。
俺に声を掛けられた2人は、何だろうと言いたげな表情をした後、
「今度、2人の耳を揉んでみたいんだ。親子でも耳の柔らかさとか違うから、揉み比べしてみたい」
俺がそう続けると、2人は互いの顔を赤く染まった顔で見た後、
「お願いします旦那様」
「お願いねシュウ君」
俺の方を向いて赤く染まった顔で微笑んでくれた。
楽しみだな~。
俺がそう思っていると、
「ご主人様!ルリィの耳と尻尾も撫でて欲しいです!あ、後腰の尻尾の付け根もトントンって叩いて欲しいです」
ルリィが少しだけ手を挙げて俺にそう言ってくる。
ルリィがここまでしっかりと自分のして欲しい事を言ってくるなんて、とても珍しいな。
俺はそう思い、
「良いよ、毛も梳いてあげるよ」
ルリィの願いを承諾するのと同時に、更に追加をしてあげる。
すると俺の言葉を聞いたルリィがとても嬉しそうな顔で、
「ありがとうございます!楽しみにしています」
そう言ってきた。
…一気に予定が埋まったな、後でカレンダーを確認しないといけない。
俺がそう思っていると、
「皆さんズルいです!私もシュウ様の子供欲しいです!もっとシュウ様と色々な事したいです!」
俺達の様子を頬を思いっきり膨らませていたルネリアが、我慢の限界だったのかいつもよりも大きな声でそう言ってきた。
その言葉を聞いたリーシャが、
「そう言えば、何でシュウはルネリア達とはキスとかしないの?」
今聞かれるとマズい事を俺に質問してきた。
だが、もう遅い。
リーシャの言葉を聞いたルネリアも、
「その通りです!」
と言って、俺に詰め寄ってくる。
そして、俺の視界の隅に映っているヨハナさんやアウレーテさん、カーヤさんも少し頷いて俺の言葉を待っている様だ。
そして俺は、
「それは、ルネリア達とそこまで関係が深い訳では無いからだよ。流石の俺も、ちゃんと恋人関係になった人としかキスとかしないよ」
正直にリーシャの問いに答える。
すると、
「シュウ様!私はシュウ様の事をお慕いしています!どうかこの気持ちを受け取って下さい!我慢が限界に達してしまいます!このままだと私、レイカ様に教えて貰いましたシュウ様束縛方法を試してしまいそうです」
ルネリアが俺にそう言って抱き付いてくる。
いつの間に怜華さんから、そんなルネリアからは程遠いモノを学んだんだ…。
俺はそう思いつつ、
「ルネリアの気持ちはすごく嬉しいよ。…でもその気持ちはこれからゆっくりと育んでいきたいと、俺は思っているよ。なんて言うか…今すぐに俺がルネリアに手を出したら、ルネリアの事をちゃんと見ていないと言うか、体が目的みたいに思えて俺が嫌なんだ。自己中心的な考えかもしれないけど、ルネリアにはもう少し待って欲しいと、俺は思っているよ。勿論、それはヨハナさんやアウレーテさん、カーヤさん達にも言える事だけどね」
正直に、自分が素直に思っていた事を伝える。
すると、俺の言葉を聞いたヨハナさんが、
「正直、そんな事を申し訳なさそうに言われたら待っているしかないじゃない。…ほらルネリア、将来的には確実に恋人になれるみたいなんだから、今はこの人の好きにさせてあげましょう」
我儘な子供に仕方がないなと思っている様な、慈愛が満ちている微笑みをしながらルネリアにそう言う。
ヨハナさんがそう言うと、
「魔法酒を飲んでシュウさんがこう言うって事は、本当に心の中でそう思っていたという事ですから未来は明るいですよ」
ティアも微笑みながらルネリアにそう言う。
ヨハナさんとティアにそう言われたルネリアは、
「分かりました。でも私も我儘なので、我慢が出来ない方なんです。それを考慮してもらえると嬉しいです」
俺から離れてそう言ってくる。
「分かったよ」
俺がルネリアの言葉にそう言うと、
「そこまで考えてくれているのなら、私達にも何かしらの誓いとか欲しいですね。……て、手の甲にキスとかはどうでしょう?」
話を聞いていたアウレーテさんが、顔を真っ赤に染めながらそう提案してくる。
アウレーテさんがそんな提案をするなんて、魔法酒とは恐ろしいモノだ…。
俺が魔法酒の恐ろしさを再認識をしていると、
「では、その際に相手の外見と内面の好きな所を言って頂くと言うのはどうでしょうか?」
アウレーテさんの提案に、更にカーヤさんが上乗せで提案をしてきた。
待って、そんな事を言ったら…。
「それはオレも言われたいぞ!今のシュウなら、外見とか夜の好きな事とか聞いたら素直に吐くだろうしな!」
アルが俺の今起きて欲しくない事を、的確に指摘してきた。
アルのその言葉を皆が聞いた瞬間、皆の目がギラッと怪しく光った様に見えた。
もう駄目だ、今の俺では恥ずかしいからあまり言えないような事も素直に言ってしまうだろう。
俺がそう考えていると、
「じゃあ平等に手の甲にキスと言う事で良いかしら?その際に相手の内面と外見のどちらかを選んで好きな所を1つ答える、と言う事で」
リーシャがそう言いながら、俺の体に手を回して立ち上がらせてくる。
俺はリーシャの動きに抵抗しないで椅子から立ち上がると、リーシャが俺の前に改めて立って、
「まずは私からね。私はシュウの全てが好きよ」
俺にそう言ってくる。
…あれ?
「ありがとうリーシャ。俺もリーシャの全てが好きだよ」
俺が少し疑問に思いながらリーシャの言葉にそう答えると、
「全てを好きと言って貰えるのは嬉しいけど、今はもっと詳しい好きな事を言って欲しいわ。私は特に指定は無いから、どこでも良いわよ」
リーシャが優しく笑いながらそう言ってくれる。
やはり、全てが好きでも今回はそう言っても許してはくれないか。
それと、リーシャのこの笑顔はこの後にリーシャの後ろに並んでいる人達の事を考えて俺に大変だけ頑張ってね、と考えての笑顔だろう。
俺がそう思いつつ、
「リーシャの俺が無茶な事を言っても受け入れてくれる所が、俺は好きだよ。…迷惑を掛けているとは、自覚しているんだけどね…。つい甘えちゃう」
リーシャの好きな所を1つ挙げる。
俺の言葉を聞いたリーシャは、満足そうな顔をした後俺に手を差し出してくる。
俺はリーシャの手の甲にキスをすると、リーシャは嬉しそうに笑って俺の前から自分の座っていた席に戻る。
その際、リーシャがややスキップをしていた。
俺がそう思っていると、
「柊ちゃん、次は私よ」
リーシャの後ろに並んでいた怜華さんが、目を細めて俺の事を見てくる…。
お、怒っているように見えるが、雰囲気はそこまで怒っていない感じがするな。
俺が怜華さんを見ながらそう考えていると、
「ごめんなさい、私の力が及ばない所為で柊ちゃんの愛している所を簡単にまとめる事なんか出来ないわ。本当なら三日三晩語り続けたいのだけれど、後ろの人達が待ってるから今度2人っきりの時に話しましょう。…柊ちゃん、愛してるわ。何があっても柊ちゃんを愛し続けるわ。何があっても、貴方の傍に寄り添いたいの。例え…」
「落ち着きなさいレイカ…。貴女の我慢できない気持ちは私も同じだけれど、今は自重しなさい」
怜華さんが俺への想いを伝えてくれるのだが、まだ話そうとしている怜華さんにリーシャがツッコミを入れて怜華さんを落ち着かせてくれる。
怜華さんもまだ言い足りないのか少し不満そうではあるが、
「じゃぁ、お願い柊ちゃん」
手を俺ん差し出してくる。
俺は怜華さんの手に触れて、
「ありがとうございます怜華さん。俺も怜華さんの傍にいたいです。怜華さんの一度決めた事は何があってもやり遂げる強い心が、俺は昔から憧れていて好きな所でした。だから、これからもよろしくお願いします」
俺はそう言ってから怜華さんの手の甲にキスをする。
俺の言葉を聞いた怜華さんは、珍しく驚いた表情で顔を赤く染めながら手を大事そうに胸に抱きながら移動をした。
すると次に俺の前にやって来たのは、
「ご、ご主人様」
耳を少し下げて、緊張しているような表情をしているルリィだった。
自身の胸の前で指をもじもじさせながら、
「私はこれからもご主人様のお傍に仕えたいと思います!これからも私の事を、可愛がって下さいますか?」
そう聞いてきた。
俺はその言葉に、
「勿論、これからずっとそのつもりだよ。ルリィは頭を撫でると顔が嬉しそうに蕩けるから、撫でてても飽きないよ」
そう返してルリィの頭に手を乗せて撫でると、
「ありがとうございますごしゅじんさまぁ」
ルリィが嬉しそうに笑う。
俺はルリィの頭から手の放してそのままルリィの手を取ってキスをすると、ルリィは尻尾をブンブン振りながら俺の前から移動した。
ルリィの次は誰かな?
俺がそう思っていると、
「お・に・い・ちゃ・ん♪」
俺の前にやってきたのはニコニコと笑っている春乃だった。
どうしてこんなにご機嫌なのかな?
俺がそう思っていると、
「私は、お兄ちゃんの優しい所が好き!お兄ちゃんは、私の胸は好き?」
春乃は俺にそう質問をすると、俺の手を握って自身の胸に当ててきた!
俺は驚くのと同時に、
「勿論、春乃の胸は好きだよ。春乃は気にしすぎだと思うけど、触れば分かるけどしっかりと膨らみはあるし柔らかいよ」
そう言いつつ、春乃の胸に当たっている手を動かして春乃の胸の感触を確かめる。
素直になると、行動にも表れるのか…。
「ひゃんっ!…もうお兄ちゃん、くすぐったいよ。そういうのは、今日の夜にね?」
俺が自分の行動に畏怖していると、春乃は凄く嬉しそうな顔で笑った後一瞬で艶やかな女性の表情をして俺にそう言ってきた。
俺はそんな春乃に、
「楽しみにしてるよ」
そう言って春乃の手の甲にキスをする。
春乃は嬉しそう両頬に手を当てながら俺の前から移動すると、
「じゃあ、私の胸も好きかしらシュウ君?」
まるで挑発でもしているかの様な態度で、リザベルトさんが俺の前にやって来た。
俺がリザベルトさんの言葉に返そうと口を開くと、
「娘にも負けるこの平らに近い胸を、シュウ君は不満を持っていないのかしら?」
リザベルトさんが更にそう言ってくる。
どうやら好きかどうかを聞きたいかよりも、不満があるがどうかが気になっていたんだな。
俺はそう思い、
「不満なんかないですよ。俺はリザベルトさんを胸だけで判断する事なんかしません。胸が小さくても、リザベルトさんはリザベルトさんなんですから」
俺がそう言うと、リザベルトさんはまだ不満そうな顔をしている。
俺はそんなリザベルトさんの耳元に顔を近づけて、
「それに、小さいながらも俺に奉仕しようと頑張っているリザベルトさんを見るのが、俺は結構好きなんです」
そう言って顔を離してリザベルトさんの顔を見ると、彼女の顔が真っ赤に染まっていた。
普段の俺なら絶対に言わないであろう言葉に、俺も顔が赤くなりそうだ。
俺はそう思いながら、
「だから、これからはあまり気にしないで下さいね」
顔を赤く染めたまま固まってしまっているリザベルトさんの手を取って甲にキスをすると、彼女はフラフラと俺の前から離れて行く。
だ、大丈夫かな?
俺がリザベルトさんの後姿を見ながら心配していると、
「旦那様、母上にだけズルいです」
エルネットが不機嫌そうな様子で俺の元に来ると、そう言って何故かしゃがんでしまう。
「どうしたのエルネット?」
俺がそう聞くと、
「私は旦那様の1番を常に狙っています。故に今回は、先にして頂いた皆様がまだしていない事をしたいです。…旦那様、今だけ私を犬の様に愛でて下さい」
エルネットがそう言って俺の脚に顔を擦り付けてきた。
…エルネットの1番を目指す気持ち、凄すぎる気がするんだが…。
俺はそう思いつつも、俺の脚に構ってくれと顔を押し付けてくるエルネットの頬や頭を撫でていくと、
「は、恥ずかしいですが、これはこれでとても素晴らしいです。…癖になりそうですね」
エルネットがそう言って俺の手に自信を委ねてくる。
俺はエルネットの顔を撫でたり、耳を揉んだりしながら、
「エルネット、これからもよろしくね。エルネットはどんな時でも冷静で、皆が遠慮して言えない事も言ってくれるから凄く感謝してるよ。俺はそういう真っ直ぐなエルネットが好きなんだ」
そう言うと、
「私は旦那様にとって何が良い事なのかを最優先しているだけです。…ですが、好きと言われると嬉しいです。ありがとうございます旦那様」
エルネットは俺の言葉にそう返して、まるでお手をする様に俺の前に手を差し出す。
俺も少ししゃがんでエルネットの手の甲にキスをすると、エルネットは何故かうさぎ跳びをして俺から離れていった。
俺がそんなエルネットを見ていると、
「シュウさん、その…魔法酒の効果を使わないと言えない事をお許しください」
ティアが、少し申し訳なさそうに俺にそう言ってくる。
何か、そんなに言い難い事なのだろうか?
「うん。大丈夫だよ」
俺は少し怖気づきながらも、ティアに続きの言葉を促す。
すると、ティアの表情が仕事で決心をした時の様な表情に変わり、
「も、もっと私に甘えて下さい!私だってシュウさんの頭を撫でたり、膝枕をしたいです!お風呂だって背中を流してみたいです!王女だからって気を遣わないで下さい!私だってシュウさんを愛してるんです!」
俺にそう言ってきた。
…ティアが、そういう事を考えていたとは思ってもいなかった。
俺はティアの言葉を聞いて、
「ご、ごめんティア。別に気を遣っていた訳じゃないんだよ。ただ、ティアは王族としての仕事とか毎日忙しいだろうって考えて…」
「忙しくないと言えば嘘になりますが、私はシュウさんと夫婦らしい生活を送るために余力を残して仕事を終わらせます。その為にコレットとエルミールと協力しているんです」
そう返そう言葉を発したのだが、途中でティアの言葉に遮られてしまった。
すると、
「姉様!その事は内緒と決めたじゃないですか!」
コレットさんが恥ずかしそうな顔でティアにそう言う。
だが今のティアには聞こえていないのか、ティアは俺の事をジッと見つめてくる。
俺は俺の事を見つめてくるティアに、
「ティアがそこまで俺の事を考えてくれていたなんて思ってなかったよ。ありがとうティア。これからはティアにも甘えても良いかな?」
そう聞くと、ティアは俺の事を見つめたまま頷いた。
すると、ティアが俺に手を差し出してくる。
俺はその手をそっと掴むと、
「俺はいつも国民の事を考えて仕事をしているティアや、素直に想いをぶつけてくるティアが好きだよ」
そう言って俺は膝を折り、まるで騎士がお姫様の手の甲にキスをする体勢でティアの手にキスをする。
すると、俺の手からスルッとティアの手が抜かれてそのまま俺の頭を少し撫でた後、ティアは俺に立つ様に促してくれる。
俺が立ち上がると、ティアは嬉しそうな顔をしながら移動してコレットさんの隣に行くと、コレットさんの背中を叩いてコレットさんを俺の前まで押し出した。
すると、俺の前に立っているコレットさんが顔を赤くしながら、
「…シュウ。今の私の事は好き?」
俺にそう聞いてきた。
俺はコレットさんの問いに、
「勿論好きですよ」
そう答えると、コレットさんが俺の手を掴んで服の中に入れる!
何をしているのかと思ったら、
「こ、こんなお腹になっても?」
コレットさんが更に顔を赤く染めてそう聞いてくる。
俺はその言葉を聞いて少しだけ手を動かしてみると、柔らかい感触が当たったのが分かる。
ただ、コレットさんは別に太り過ぎている訳では無い。
少し柔らかさが増えただけだ。
そこまで気にしなくても良いんじゃないかなと、そう言葉を発しようとした瞬間、
『少し間食を控える様にお願いします』
コレットさんには見えない様に、コレットさんの背後からそんな事が書かれた紙が広げられる。
準備が速いねエルミール…。
俺はそう思いながら、
「別に、そこまで気にする事では無いと思います。でも、もし気になっているならお菓子の量を減らしてみたりするのはどうですか?」
コレットさんにそう言うと、コレットさんは真剣な表情で、
「そうよね。ありがとうシュウ。少しお菓子の量と運動をしてみるわ。やっぱりシュウには私の1番良い姿を見せていたいもの」
そう言ってきた。
俺はその言葉を聞いて、
「あまり無理はし過ぎないで下さいね。今のコレットさんも俺は好きですし、魅力的ですから」
コレットさんにそう言うと、彼女は真剣な表情で、
「ありがとうシュウ。つまり、これで体型を整わせる事が出来たら、シュウは更に私の事が好きになるのよね?なら、絶対に痩せるわ!」
そう言い切った。
そこまでやる気なら、もう俺が言う事は無い。
俺がそう思っていると、
「だから、手にキスをするのは私が痩せてシュウが更に私を好きになった時にして」
コレットさんが俺にそう提案して来た。
俺はその提案に、
「分かりました」
そう答えると、コレットさんは笑ってティアの元に走って行き、何やら訓練の相談を始めた。
その様子を見ていると、
「シュウさんはコレット様を甘やかし過ぎています」
俺の元にやって来たエルミールが、俺の事を少し不機嫌そうな表情で見つめてくる。
「別に甘やかしてる訳じゃないですけどね…」
俺が苦笑いをしながらそう返すと、
「優しいのは理解していますが、たまには厳しく接しないといけない時もあります。それが優しさの時もありますよ」
エルミールが俺にそう言ってきた。
厳しい事も、優しさか。
俺がそう思っていると、
「ですが、やはりシュウさんの優しい所が皆様を引き付ける魅力なのでしょう。私も、シュウさんの優しさに救われて、自分を捧げたいと思ったのですから」
エルミールが俺にそう言ってくれる。
そこまで言われる程なのだろうか?
俺はそう思いつつ、
「俺もエルミールの優しい所が好きだな。メイドだからなのか、周りの皆の事をよく見て何を求めているのか察する事が多いよね。俺もエルミールには何回も助けて貰っているから、凄く助かってるよ。ありがとうエルミール」
エルミールにお礼を言って頭を下げる。
すると、
「そんな事はありませんよ。私の方こそ、いつも私の事を気に掛けて下さってありがとうございます」
エルミールも俺にそう言って、俺よりも深く頭を下げた。
とりあえず今日はこれくらいにしないと、ずっと互いに頭を下げ続けてしまうな。
俺は簡単に予想できる光景を思い浮かべて、
「これからもよろしくね、エルミール」
俺はそう言って未だに頭を下げているエルミールの頬に手を当てると、彼女はゆっくりと頭を上げて頬に触れている俺の手を取って、手の甲にキスをしてきた。
「私から、シュウさんに捧げさせて下さい。愛してますシュウさん」
俺はその言葉を聞いて、
「俺も愛してるよ、エルミール」
そう答えると、エルミールは満足そうな顔で静かに移動をする。
さて、次は誰だろうと思った瞬間、背後から誰かが抱き付いてきた!
そして、
「せんぱ~い?私は先輩の匂いが好きなんですよ~」
背中に抱き付いてきた真海ちゃんが、俺の体に顔を押しつけて深呼吸をする!
流石に匂いを嗅がれるのは凄く恥ずかしい!
俺はそう思いつつ、下手に動いて真海ちゃんが転ばないか心配で微妙に動きつつ、
「ま、真海ちゃんが俺に抱き付いた時に顔を押し付けてくるのって、匂いを嗅いでたからなの?」
そう質問をすると、真海ちゃんは俺の体から離れて一歩後ろに下がると、
「そうですよ~!先輩の匂いならどこの匂いも好きですよ~。…先輩は私のどこが好きですか?外見でも内面でも、匂いでも良いですよ~?」
俺にそう言ってきた。
俺は真海ちゃんの質問を聞いて、
「俺も真海ちゃんの匂いは好きだよ。甘い香りがするんだけど、その匂いが優しい匂いって言うのかな?強すぎない匂いだから心が落ち着く感じがするんだ」
そう答えると、真海ちゃんはえへへ~と笑って腕を広げ、
「先輩、お互いに抱き付きましょう!」
さあ来いと言わんばかりに、俺の事を待ってくれる。
俺はそんな真海ちゃんの様子を見て、真海ちゃんにゆっくりと近づいて抱きしめる。
すると、俺がさっき言った様な真海ちゃんの匂いがする。
甘い匂いなんだが、強い匂いでは無いから甘ったるい訳では無い。
俺がそう思っていると、
「ハァァ~…。先輩の匂いも落ち着きますね。これの為に先輩の服をお借りする事があるくらいです。依存してしまいそうです」
真海ちゃんがそう言って俺の体に顔を押しつけて深呼吸をする。
それから少しの間真海ちゃんは体にくっ付いた後、満足した様子で俺から離れて、
「じゃあ先輩。手にキスして下さい!私もしてもらいたいです!」
そう言い、俺に手を伸ばしてきた。
俺はその手に自分の手を添えて持ち上げると、真海ちゃんの手の甲にキスをした。
すると、
「ありがとうございます先輩!次はルネリアちゃんですよ!」
真海ちゃんはそう言って俺から離れていくと、真海ちゃんの言った通りルネリアが俺の前にやってくる。
そして、
「シュウ様、私はシュウ様の背中が好きです。シュウ様の背中を見ると、とても安心します」
顔を赤く染めてそう言ってきた。
俺はその言葉を聞いて、
「ありがとうルネリア。俺はルネリアのその素直な所と頑張り屋な所が好きだよ。これからも、一緒に無理をしないように魔法の練習しようね」
そう返すと、
「はいッ!」
ルネリアは嬉しそうな顔で笑って返事をし、俺に手を伸ばす。
俺はルネリアのその手を握ってキスをする。
すると、ルネリアの手が俺の頬に添えられて、
「シュウ様も、無理をなさらないで下さいね」
そう言ってくれた。
ルネリアの顔を見ると、優しい微笑みを俺に向けてくれている。
俺が静かに頷くと、ルネリアは俺の前から後ろへと移動をした。
どうしたのかな?
それにしても、ルネリアがお母さんみたいなモノを感じたな。
俺がそう思っていると、
「ルネリアだけに構ってないで、私の良い所を言って欲しいのだけれど?」
ヨハナさんが腕を組んで俺の前に堂々と立つ。
な、なんかいつもより気丈に振る舞っている様に見える。
俺がそう思っていると、
「…何ジッと私の事見てるの?もしかして、ジッと見つめないと分からないほど私には魅力がないって事ッ!?」
ヨハナさんは1人でそう思ってしまった様で、ショックを受けた様な絶望した表情になる。
俺は慌てて、
「そ、そんな事はないですよ!ヨハナさんの魅力は十分に理解してます!」
そう言うと、ヨハナさんは俺の事をジトッとした目で見つめて、
「どこ?」
そう聞いてきた。
いつものヨハナさんなら、こういう態度はしないような気がする。
自分の魅力はどこなんて、ヨハナさんの口から聞くとは思わなかった。
俺はそう思いつつ、
「ヨハナさんの魅力は、なんだかんだ言いつつ世話好きの優しい所だと思っています。俺が何かをお願いすると、もっとちゃんとしなさいと言いつつ聞いてくれますからね。ルネリアも、おそらくそう思っていると思いますよ。ね、ルネリア?」
ヨハナさんの質問にそう答えて、後ろにいるルネリアにそう聞いてみると、
「はい!ヨハナさんは凄く優しいです!いつも私の事を気遣って下さいますし、大変な事とかあったら自分に言ってと言われます!」
ルネリアが俺の質問にそう答えてくれる。
すると、
「じゃ、じゃあ私が抱きついても拒絶しない?」
何故かヨハナさんが俺の事をチラチラと見ながらそう聞いてくる。
俺はその言葉に、
「当り前じゃないですか。そんな事しません…よッ!?」
俺がそう答えた瞬間、ヨハナさん俺に抱きついてきた。
す、素直なヨハナさんは、抱きついたりしたかったのかな?
俺はそう思いつつも、何も言わないでヨハナさんの背中に手を回す。
こんな事をしたら、普段だったら怒られるんだけどな。
俺はそう思いつつ、視線を下げてヨハナさんを見ると、
「………」
ヨハナさんは顔を真っ赤に染めて固まっていた。
その後、ヨハナさんは回復することはなくルネリアに引っ張られて自分達の席に移動していった。
俺がそれを見ていると、
「ヨハナも少し頑張りすぎたようですね」
アウレーテさんがルネリアに介抱されているヨハナさんを見ながら俺の元に歩いてきた。
「あそこで背中に手を回すのはマズかったですかね?」
俺がアウレーテさんにそう聞くと、
「そんな事ないですよ。後で嬉しくて魔導剣を振り回すと思いますけどね」
アウレーテさんが苦笑しながら俺にそう言ってくる。
そ、それは後で止めないといけないな。
俺がそう思っていると、
「私はヨハナよりかはシュウさんに対して素直に接しているので、あまり普段とは変わらないかもしれませんね」
アウレーテさんはそう言ってフフッと笑う。
そして、
「いつも気に掛けて下さって、本当にありがとうございます。それと、毎回庭のお手入れの手伝いをして下さってありがとうございます」
俺にそう言ってアウレーテさんは頭を下げる。
俺はそんなアウレーテさんを見て、
「そんな!頭を上げて下さいアウレーテさん!俺は当たり前の事をしているだけなんですから!」
慌ててアウレーテさんに頭を上げて貰える様にそう言うと、アウレーテさんはゆっくりと頭を上げて、
「それでも、私は助かりましたしありがたかったです。……シュウさんのその優しさが、私は好きですよ」
そう言ってくれた。
俺はアウレーテさんの言葉を聞いて、
「特別に何かした訳でも無いんですが、アウレーテさんにそう言って貰えて嬉しいです。俺もアウレーテさんの努力していく姿や、草木を愛おしそうに見ているアウレーテさんの横顔が好きです」
アウレーテさんにそう返すと、アウレーテさんはポカンとした表情をした後にカアッと顔を赤く染めて、
「あ、ありがとうございます!し、失礼します!」
ささっと走って廊下の方に出て行ってしまった。
何か気に障る事を言ってしまっただろうか?
俺がそう思って、アウレーテさんとの会話を思い出していると、
「お酒の飲むと体が火照りませんか?」
カーヤさんがやや服を着崩して俺に寄りかかって来た!?
今心の中で思っている事を素直に言ってしまう状態の時にそんな事されたら!
「カーヤさんの体、凄く綺麗ですよね。淫魔とかは関係無しに、女性としての魅力に溢れてると思います。俺はこの、尖った耳から首筋、鎖骨から肩の見え方が1番好きです。甘噛みしたくなる事があったりしますよ」
俺はカーヤさんの尖った耳を指差して、前々から思っていた事を話してしまう…。
すると、俺の言葉を聞いたカーヤさんが、
「…してみますか?」
まるで首元を差し出してくるかの様に、頭を傾けて首元が俺から見えやすい様な体勢になってくれる。
俺はその光景を見て、
「嬉しい話ですが、今は止めておきます。周りの視線も厳しいですしね」
カーヤさんにそう伝えると、カーヤさんも俺が断ると察していたのかすぐに体勢を元に戻す。
そして、
「催淫の効果が少しでもあった事が分かっただけでも良い収穫でした。…私は貴方のしっかりとした所、好ましく思っていますよ。淫魔の催淫を受けても、紳士的でいようとする貴方は、少し可愛いと思ってしまいます」
カーヤさんはそう言うと、クスクスと笑った後手を振りながら俺に背を向けて行ってしまう。
と、とりあえずカーヤさんの催淫の効果が消えてくれないとマズい。
俺がそう思った瞬間、
「…柊」
今あったら色々とマズい人、秋沙が俺の前に現れた。
「な、何秋沙?」
俺は慌てている事を隠して秋沙に声を掛ける。
今カーヤさんの催淫に心が穏やかじゃないとばれたら、秋沙は絶対に何かを仕掛けてくる。
俺がそう思っていると、
「…柊好き。大好き。愛してる」
秋沙は俺に対して、いつものMな発言ではない愛情の言葉を伝えてくる。
俺はその言葉に、
「ありがとう秋沙。俺も秋沙の事大好きだよ。愛してる」
そう返事をすると、秋沙は首を振って、
「…大好き柊。愛してる柊」
俺に更にそう言ってくる。
俺はその秋沙の言葉に、
「ありがとう秋沙。俺も秋沙の事を愛してるよ」
そう答えて秋沙の事を力一杯抱きしめる。
すると、秋沙の口は俺への愛を伝えるのを止める。
止まったと同時に秋沙が抱きしめ返してくるのを感じ、
「大丈夫だよ秋沙。秋沙の気持ちはちゃんと伝わってる。不安にならないで」
そう言うと、
「…うん」
秋沙は俺の言葉に短く返事をして、更に力を入れて俺に抱き付いてくる。
少しの間互いに抱きしめ合っていると、
「…感情表現が苦手でごめんね柊。これからはもう少し、行動じゃなくて言葉で愛を示していく」
秋沙が俺にそう言ってくる。
俺はその言葉に、
「今のままでも十分に秋沙の愛は伝わっているよ。……むしろ、行動をもう少し自重した方が良いと…」
「嫌」
行動の方を慎んで欲しいとお願いしようとしたが、言葉の途中で嫌がられてしまった。
まぁ嫌なら仕方がない。
俺がそう思って苦笑していると、秋沙が俺から離れて、
「…これからもよろしく。柊」
俺にそう言うと、小走りでアルの元に行くと何やら話した後今度は怜華さん達の元に行くのを視線で追う。
すると、
「さて、最後はオレだな」
アルが俺の前に来て胸を張ってそう言ってきた。
アルはあまり魔法酒を飲んでも変わらないと言うか、普段から思っている事を言っている気がするから違いが分からないな。
俺がそう思っていると、
「シュウ、オレもお前の事愛してるからな!だからオレの事も愛してくれよ?」
アルが笑って俺にそう言ってくる。
俺はアルの言葉に、
「アルのそんなサッパリしているって言うか、ハッキリしている所が俺は好きだよ。勿論これからも一生、アルの事を愛し続けるに決まってる」
そう返すと、アルは嬉しそうな笑顔をこちらに向けて、
「今日は夜、全員相手にするんだろ?その時は最初にしてくれよな!」
そんな事を言って、周りで俺とアルの会話を聞いていた皆に、
「よし!じゃんじゃん飲むぞ~!」
そう言ってお酒を注いだり継いで貰ったりしていく。
…周りの皆が、恥ずかしそうに顔を赤らめながら俺の事をチラチラと見てくるのを感じ、俺も勢いに任せて身近にあったコップを手に取り呷った。
その後、夜は本当に色々とあった。
いつもより素直になった皆が、簡単に俺を解放してくれるはずも無く夜を楽しみ、その結果寝る時には外が明るくなってきていた。
皆疲れて寝る時は、いつもよりもくっ付いて眠ったのからか人肌が暖かく安眠する事が出来た。
…しかしその後の起床時、全員が魔法酒の効果が切れてしまった所為で互いに恥ずかしくなり、少しだけギクシャクしたのは仕方がないだろう。
ちなみにだが、今日もヴェロニアさんはどこかへ出かけて帰ってこなかった。
一昨日出発したから、帰ってこれないとは思っていたがやはり屋敷にいなかった。
帰ってきたのは、それから二日後だった…。
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