番外編 ルネリア編 昔話
ルネリアの期待に答えて、俺は彼女の隣で昔の事を思い出しながら口を開く。
俺の小さい頃の話は、ルネリアが聞いていた話とは少し違うと言われてしまった。
何故ならそれは、怜華さんや秋沙の脚色で良い物語の様に変換されていたのだ…。
まさか、俺の知らない所でそんな事が起きているとは思わなかった。
後で3人には、しっかりと本当の事を言う様に注意しないといけない。
いったい俺がいつ、
「怜華お姉ちゃん、大きくなったら結婚して僕の子供を産んで欲しいな」
そんな事を怜華さんに言ったんだ…。
いったい俺がいつ、
「秋沙姉は僕の物なんだから、僕の命令には絶対に忠実じゃないといけないんだよ」
秋沙にそんな大きな態度でそう言ったんだ…。
他にも色々とツッコみたい事が沢山あるが、それはまたいつかにしよう。
俺はそう思い、更に異世界に転移した後の事を話し始める。
リーシャとの出会いに、アルやルリィとの出会い。
他にも皆との出会いを思い出しながらルネリアに伝えていく。
流石はリーシャ達だ。
怜華さんや秋沙とは違って、偽りなくしっかりとルネリアに出会った時の事を教えてくれている。
俺はそう思いつつ、皆との出会いとそれと同時に起こった出来事をルネリアに教えていった。
途中、ルネリアもワクワクした目でこちらを見てきたかと思えば、心配そうな表情をしてきたりと、俺達の今までを聞いてルネリアは凄く色々な表情をしていた。
そして、最後に話したのは大魔王ガレスとの闘いだ。
その事を話すと、ルネリアが俺の右腕の二の腕に手を添えてきた。
「どうしたの?」
俺が心配そうにそう聞くと、
「シュウ様、これからは死を選ぶような事はしないで下さい。どうか、お願いします…」
ルネリアが泣きそうな声でそう言ってくる。
俺はその言葉を聞いて、
「大丈夫。俺だってそう簡単に死のうとなんて考えないよ。それに、リーシャの魔法で死なない体らしいから、今は逆にそう簡単に死ねないんだよ」
ルネリアに優しく話す。
今の俺は、そう簡単に死ぬ事なんて出来ない。
俺の命が俺だけのモノなら、いくらでも捧げる決心はしていただろう。
でも今は、リーシャやルリィ、怜華さん達が心配で簡単には死ねない。
何故か皆、俺が死んだら自分も…、と言うくらいだ。
それだけ愛されているのは素直に嬉しいが、逆に俺が死んでしまったら皆も後を追ってくる…。
ただ、ティアとコレットさん、エルミールはサンレアン王国のために、後を追う可能性は低い。
あの自国を愛しているティアとコレットさんが、そう簡単にサンレアン王国を見捨てたりはしない。
それと同時に、2人の王女を大切に想っているエルミールも2人の傍に付き添うだろう。
俺がそう思っていると、
「私も、もうシュウ様がいないと生きていけません。村の人達も大切ですが、それ以上にシュウ様が大切です」
ルネリアが俺にそう言ってくる。
…ここで優劣をつけるのは良くないよと言いたい気持ちはある。
村の人達よりも俺なんて、言うべきでは無いと。
だが、ルネリア達の世界ではこれが普通なのだ。
何が大切で、何を犠牲にするのか。
そんな優劣をハッキリさせているのが、ルネリア達の世界で生きていきたヨハナさん達なのだ。
おそらく、生きていた環境の違いなのだろう。
常に何かを犠牲にする事を覚悟している。
そんな世界で生きてきたルネリア達。
だから俺はそんなルネリアに、
「ありがとうルネリア。だけど、それは村の人達にも言える事だよ。彼らにとって、ルネリアがいなければ生きてはいけないだろう。すぐに他の魔法使い達の領土に飲み込まれる。そうなったら彼らは、おそらく辛い思いをする。だから、ルネリアはしっかりと、生きていかないといけない」
そう伝える。
彼女達の世界は常に死と横暴が潜んでいる。
油断してはいけない。
俺がそう思っていると、
「…はい。…自信はありませんが、頑張ってみます」
ルネリアがそう呟いた。
…ルネリアは真面目だから、今本当にしっかりと村の事を考えているのだろう。
俺はそんなルネリアを見て、
「そんなに思い詰めないでルネリア。それは俺が死んじゃった時に考えれば良い事だから。今は俺や皆がいる。だから、1人で考え込まなくても大丈夫だよ。俺も協力するし、皆だって手を貸してくれるさ」
そう話す。
すると、俺のその言葉を聞いたルネリアが恥ずかしそうに、
「は、はい!すみません…、また思い詰めてしまいました」
そう言う。
それからルネリアは、また魔法の練習を再開した。
その後は、ルネリアが無理をしない程度で練習を終わらせて俺達は屋敷の中に入った。
屋敷に入ると、
「ルネリア、汗かいたでしょ?一緒にお風呂に入らない?」
ヨハナさんがまるでルネリアを待っていたかの様に出迎えてくれて、ルネリアにそう声を掛ける。
すると、
「…シュウは駄目よ」
ヨハナさんがジトッとした目を俺に向けてそう言ってくる。
「分かってま‥」
俺がヨハナさんの言葉に分かっていると言おうとした瞬間、
「え?シュウ様もご一緒じゃないのですか?」
ルネリアがキョトンとした顔で俺とヨハナさんの顔を見ながらそう言ってきた…。
止めてヨハナさん、俺はルネリアに何も言っていないよ…。
そんなに睨まないで…。
俺がそう思っていると、
「ルネリア、シュウと一緒にお風呂には入らないの。男とお風呂なんて……特別な相手にしかしちゃ駄目なんだから」
ヨハナさんが顔を真っ赤に染めてルネリアにそう説明をする。
すると、ヨハナさんの説明を聞いたルネリアが、
「シュウ様は特別な相手ですよ。ヨハナさんだってそうなんじゃないですか?」
ヨハナさんにそんな事を言い放った!?
何だろう、ルネリアのこの純粋な目と言葉でそう言われると、凄く後ろめたい気持ちになってくる。
俺がそんな事を思っていると、
「ななな、な‥な…あに言ってるのルネリアッ!?!?」
ヨハナさんがルネリアの言葉を聞いて、顔が真っ赤を通り越して紅蓮に染まっている…。
大丈夫なのだろうか?
俺がヨハナさんの心配をしていると、
「??」
ヨハナさんに爆弾を放り投げたルネリア本人は、自分がとんでもない事を言った事に気づいておらず、首を傾げていた…。
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