番外編 エルネット編 第一印象
俺は知らない所で話し合いが行われた事を知って、とりあえずエルネットに、
「エルネット、とりあえず一旦冷静にお話をしましょう」
そう言った。
俺のその言葉にエルネットは首を傾げていたが、今はとりあえず自分が今日これからエルネットと話すのに必要な冷静さを取り戻すために深呼吸を行う。
それにしても、エルネットも随分と雰囲気が変わったな。
俺は深呼吸をしながら、エルネットを見てそう思う。
初めて会った時はとても気難しいと言うか、人を信用していなかった所為で言葉も少し荒かったもんな。
それが今じゃ、俺を旦那様って呼んでいる。
嬉しいが、少し無理をしているんじゃないかと心配している。
何て言うか、エルネットの強い口調は元々の様な気がするのだ。
そんな彼女に、無理に丁寧に話してもらうのも悪い気がする。
もっと自由に、自分らしく生活してもらいたいな。
俺がそう思っていると、
「…旦那様、何か変な事を考えていませんか?」
俺の事を見ていたエルネットが、ジトッとした目で俺の事を見てきた…。
そうそう、エルネットは少し不機嫌そうな感じをしている方が様になっている。
…失礼な事を言っているのは自覚しているが、エルネットはそういう雰囲気がとても似合っている。
何だろう、リザベルトさんと違ってエルネットはエルフの気品さと綺麗な容姿に、年頃の可愛らしさもあるからそう見えるのだろうか。
俺はそう思い、
「エルネットと初めて出会った時の事を思い出していたんだよ」
エルネットにそう伝えると、彼女の顔が赤くなった後に青ざめてしまう!?
「ど、どうしたのエルネット!?」
俺が慌てて声を掛けると、エルネットは首を振って、
「い、いえ問題ないです。少し過去の自分の失態を思い出してしまっただけですので…」
そう言ってきた。
失態って、人に捕まってしまった時の事か。
…余計な事を言ってエルネットに嫌な事を思い出させてしまった。
「ごめんエルネット、嫌な事を思い出させて」
俺はそう言って彼女の体を抱き寄せる。
すると、エルネットは俺にされるがまま俺に体を預けてくる。
俺がエルネットの体に手を回すと、
「旦那様、あの時の事は忘れて下さい。あの時は私もまだ旦那様の魅力に気づいていなく、最悪の態度を取ったのは自覚しています」
エルネットがそう言い始めた。
「人も魔族も全部が敵だと認識していた所為で、旦那様に対して殺すなどの発言をしてしまい、申し訳ありません。あの時は本心でそう言っていましたが、今は全くそんな気持ちは無いです。どうか、捨てないで下さい」
エルネットはそう言うと、まるでしがみ付く様に俺の体に抱き付いてくる。
「大丈夫だよ、あの時は周りの全てが敵に見えていたんだもん。そんな態度を取ってしまうのは当たり前だよ。だから、あまり昔の事を気にしすぎたりしないで」
俺がそう言った瞬間、
「旦那様にあんな態度を取った私の罪、罰を与えて貰わないと気が済みません。今まで生きてきた人生で、最強最悪の自分の失態です」
エルネットがそう言ってきたのだが…。
あれ?
もしかしてエルネットが言っている失態って、奴隷にされていた時の事じゃないのか?
今の口ぶりからすると、俺にあまり良い態度を取っていなかったのが失態みたいに聞こえたのだが…。
俺がそう思って、
「もしかしてエルネット、俺と会ってから少しの間だけ良い態度で対応していなかった事を失態って言ってる?」
エルネットにそう聞いてみる。
すると、
「それ以外に何かありますか?…まさか私が自覚していないだけで、旦那様の不快に思う時が…」
エルネットがそう言って更に震え出してしまう!
「違う違う!そんな事ないよ!」
俺は慌てて、エルネットにそう言う。
それにしても、あの時の事を後悔しているとは思わなかった。
ふむ、どうしたものか…。
ここはエルネットの要求に答えても良いとは思うのだが、その気持ちとは反対にエルネットを奴隷にするのは良い気がしない。
他の立場で、俺の1番を名乗って欲しいとは思う。
俺がそう思っていると、
「旦那様?」
エルネットが俺の事を心配そうな眼で見てくる…。
俺はそんな不安そうな彼女に、
「エルネット、俺は貴女と会った時まだリーシャの力を借りて強く見せていた。それってつまり、エルネットは俺の弱かった時を知っている1人だ。そんな俺を知っていても、俺の事を想い続けてくれたエルネットはすでに俺の中では1番と言っても過言じゃないんだ。真実を知っても、俺に仕えてくれてありがとう。…そんなエルネットを、俺は奴隷として扱う事は出来ない。俺はエルネットと対等な関係を築いて生きたい」
そう話す。
少しでも、エルネットが奴隷という立場になりたいと言わない様に。
彼女の発言は、秋沙と違って真剣な意味しかない。
秋沙みたいに、性的な満足感を満たしたい訳では無いのだ。
俺がそう思っていると、
「つまり、私は旦那様が弱かった時を知っていても仕えたいと申し出たという事?しかも、それは私が最初?」
エルネットが確認する様にそう聞いてきた。
「そうだよ。だから、俺はエルネットに感謝してる。だから、俺はエルネットを奴隷に戻したくない」
俺がそう言うと、エルネットが少し口元を緩める。
「ある意味、私は旦那様の1番だったという事ですね」
俺はエルネットのその言葉に、
「俺は皆の事を1番大切に想っているよ。ルリィも1番大事だし、エルネットも1番大事だ」
そう返す。
その後エルネットは、
「私が1番大事…。…1番」
そう呟きながら、嬉しそうに微笑む。
俺はそんなエルネットを見て、たまにはこんなに感情を表せているエルネットが見れて嬉しく思う。
普段エルネットは、淡々とした様子で家事や様々な事を行う。
そんな所を見てきたから、どうしても彼女が今の環境に満足しているのか分からなかった。
もしかしたら、エルフの森の方が過ごしやすいのではないのだろうか?
とか、彼女を見ているとそう思っていた時もあったが、
「旦那様の1番、ルリィに自慢しないと」
ウキウキしている彼女を見て、俺は今の環境でも大丈夫だろうと思う。
その後、エルネットがルリィに1番を自慢した故に、今度はルリィが1番にこだわって突撃して来たり、秋沙が最初の牝豚とか謎の自己紹介をしながら覆い被さってきたのが大変だった…。
その時に、リーシャと怜華さんが俺の正妻を掛けて割と本気に戦おうとしたのを止めるのも、凄く大変だった…。
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