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初代勇者を腕に  作者: 雪羅
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番外編 エルネット編 1番

その後も家事をしているルリィとエルネットを見ていると、2人は互いの役立つ知識を披露すると自分が1番だと主張していた。

どうやら、互いに引かないし認めないから余計に相手を納得させようと頑張っている様子だ。

いや、互いを認めてはいるのだが変に認め合いすぎて空回りをしている。

…そう考えていると、エルネットが俺が2人に視線を送っている事に気づいたのか、俺の方に目を向けてくる。

バッチリと目が合ってしまい、エルネットは俺に微笑みを向けて、


「ルリィ、少し用事が出来た。任せても?」


ルリィにそう聞く。

すると、


「任せて下さい!ここは私におまかせを!」


ルリィは尻尾を揺らしながらエルネットの言葉にそう返す。


「よろしくお願い」


そんなルリィにエルネットはそう言うと、少し早歩きで俺の元に歩いて来て、


「旦那様、こちらへ」


俺の服の端を摘んで引っ張ってくる。


「わ、わかった」


俺がそう言うと、エルネットがドンドン歩き出して廊下を進んでいく。

どうしたのだろうか?

俺がそう思っていると、辿り着いたのは屋敷での俺の部屋。

すると、


「旦那様、中で待っていて下さい。少し持ってくる物がありますので」


エルネットがそう言って駆け足でエルネットの部屋の方に行ってしまった。

仕方がないので、俺は自分の部屋に入ってエルネットが来ても良いように軽く片付けをする。

特に散らかってはいないのだが、勉強をするために持って来ていた教科書と参考書とノートはとりあえず科目ごとに整理して積んでおこう。

あとは…。

俺はそう思って部屋を見回すと、何やら水色の布がベッドの布団の間から少しだけ見えた。

何だあれ?

俺がそう思って、近づいてそれを掴んで持ち上げると、女性用の下着だった…。

…誰だここにパンツ脱いで放置した人はッ!?

これからエルネットが来るから、とりあえずこれはどこかに隠しておかないと…。

俺はそう思って周りを見るが、俺の部屋は基本的に物があまりない。

机と椅子に、装備を置いておくための台があるだけ。

それとベッドと机の上に置いてある本達。

…さて、どうするか。

もういっそこのままベッドの布団の中に押し込んでしまおうか…。

俺はそう考えて、ベッドに視線を移す。

他の場所に隠しても、隠し通せる自信は無いし逆に目立ってしまう。

それなら、ベッドの布団の中に隠しておいた方がまだ言い訳が信用される。

俺がそう思った瞬間、


コンコン


扉がノックされて、


「旦那様、入ってもよろしいでしょうか?」


エルネットが声を掛けてきた!

俺は一瞬で左手に握っているパンツをベッドの奥深くへ隠して自然に動かされた布団の形を作り、


「だ、大丈夫だよ」


震えそうになる声で、扉の向こうにいるエルネットに声を掛ける。

俺がそう言うと、扉がゆっくりと開いてエルネットが部屋に入って来る。

その手には、少し膨れた鞄が握られている。

何が入っているのだろう?

俺がそう思っていると、エルネットの視線が何故かベッドの方に移動する!?

何でそっちに視線が行くんだ!?

俺が緊張しながらそう思っていると、


「旦那様、今日のベッドの様子が違う様なのですが」


エルネットがそう言ってくる。

…まさか、毎日俺のベッドの布団の捲られている場所とかを覚えているんじゃないだろうな…。

俺がそう思っていると、


「…まぁ、良いでしょう。私が離れてる間に旦那様が動かした可能性もありますし」


エルネットがそう言ってベッドの元に行くと、ベッドの上に持って来た荷物を置いた。

何が入っているんだろう?

俺がそう思っていると、


「旦那様、今日はお願いがあります」


エルネットがそう言って片膝を床に付けて頭を下げてくる。

それはまるで、王に仕える騎士の様に。


「ど、どうしたのエルネット?そんなに畏まらなくても良いんだよ?」


俺がそう言うと、


「大切な事なので」


エルネットが真剣な声でそう言う。

俺はその声に緊張しながら、


「分かった。それで、お願いって?」


エルネットにそう聞く。

すると、エルネットが顔を上げて俺の事を真っすぐに見て、


「もう一度、奴隷にして下さい」


そう言ってきた。

…相手が秋沙なら、冷たく対応したりして秋沙が喜んでくれて、俺もやりたくない事をしなくて良かったのだが、今のエルネットにはその対応は出来ない。

何故なら、俺の事を見てくるエルネットの表情が、とても真剣なのだ。

秋沙の様に、冗談と本気の半々な気持ちで言っている訳では無いのだろう。


「どうして、エルネットは奴隷にもう一度なりたいって思ったの?」


俺がそう聞くと、エルネットが暗い表情で、


「旦那様の1番に、なりたいからです。皆、旦那様の1番になっているのに、私だけはあやふやなまま…。旦那様の奴隷を名乗っているのが、私とルリィの2人いる。…私が旦那様の奴隷になる、そうすれば私が旦那様の1番の奴隷。ルリィは1番のメイド」


そう言った。

…個人的に皆に順番とか付けた事はあまり無いのだが、エルネットは気にしているのだろう。

ただ、だからと言って奴隷になるのはどうなんだろう…。

エルフの中でもリーダー的な存在をハイエルフだ。

そんな彼女が俺の1番の奴隷になりたいと言ってきたのは、嬉しい気持ちよりも心配な気持ちの方が遥かに強い。

俺はそう思い、


「エルネット、俺にとってエルネットは他に替えなんていない1番の存在なんだよ」


エルネットの視線に合わせる様に俺も床に膝を付けてそう言う。

すると、


「ありがとうございます。それでも、立場をしっかりとしたいです」


エルネットがそう言ってくる。

…ここで名前を使うのはアレなんだが、


「秋沙は俺の奴隷を自分で名乗っているけど、それは違うの?」


俺は秋沙の名前を出してそう確認する。

一応、秋沙も俺の奴隷を名乗っている時がある。

その時点で1番は無理なんではないだろうか?

俺がそう思っていると、


「アイサは、旦那様の1番の牝豚で決定した。話し合いはしてあります」


エルネットがそんな事を言う…。

秋沙の牝豚も、俺は許可なんてしていないのだが…。

自称じゃないか…。

俺はそう思いながら、引き攣りそうな顔を何とか堪える。


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